あれは小学2年生の頃かな?



冬休みの宿題で絵を書かなきゃいけなくて。

なんでだったか忘れたけど、夜に親父が会社に行くのに一緒に連れて行ってもらったことがあってね。

父親の仕事場なんて行く機会がなかったからすごく心に残っていて、その時のことを思い出して親父の会社の絵を書いた。

平屋のそう大きくもない建物だから、四角い事務所を書いたらあとは夜空しかない。

その時の夜空の色は、僕には群青色に見えたんだ。
だから、僕は夜空を黒と青で塗りつぶした。



冬休みが終わって宿題を提出したあとの授業で、先生が僕の絵を掲げてこう言った。

「ゆーすけ君は夜の空がこんな風に見えるそうです。変ですよね?」

って。
クラスのみんなの前でそう言った。


なんで??

夜の空は真っ黒なんじゃない!
色んな色が交じり合ってるじゃないか!
僕の目はおかしいの?


当時から絵は得意じゃないなとどこかで思ってたけど、先生のあの一言で決定的に絵を書くことが嫌いになった。


大人の不用意な一言が、子供の可能性を潰す。


少なくとも「大人」と云われる立場の人は、子供に使う言葉は選びに選ぶべきだ。


二人の娘には幼い頃からその感性を否定する言葉だけは絶対に言わないと心に決めて、そうしてきた。

人と違うことは恥ずべきことじゃない。
むしろ素晴らしいことだ。

彼女たちにそれが伝わったかどうかは判らないけど。




僕には今でも、やっぱり夜の空は蒼く見える。