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恨みわび 干さぬ袖だに あるものを

  恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ


20151208 倭塾・動画配信サービス2

恨む気力もなくなり、ただ泣き明かして袖が乾く間もありません。
恋のために身が朽ちてしまうのでは、名が惜しくありませんか。

***
下の句は「恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ」
です。
一般的な通釈で「恋に朽ちなむ」は、「相模が夫以外の男性に恋をしているけれど、思いどおりにならず、このままでは相模自身が燃え朽ちてしまう悔しさ、悲しさを詠んだもの」とされています。
歌のどこにも「別の男性との恋」とは書かれていないのに、そう決めつけて、相手との関係が上手くいかないことが世間の噂となり、それが悔しくて「名こそ惜しけれ」
、つまり自分の名前が惜しいと解釈しているものが多いようです。
しかし、どう考えてもその解釈には無理ごあります。
現実の問題として、夫の浮気に悩み苦しんで毎日泣き暮らしているという悲しい状態にある妻が、別の男性と浮気をして燃えるでしょうか。
そんな心のゆとりがあるのでしょうか。
誰がどう考えても、これは「おかしな解釈」としかいえないように思えます。
そうではなくて、「恋に朽ちなむ」は、「夫の名誉が恋(浮気)のために朽ちてしまう」なのです。


***
この歌は「夫の浮気に苦しみながらも、夫を思い、夫の職責を支え、夫婦相和して共に強く生きようとした気丈な一人の日本女性の歌」なのです。

***
結局、相模国の守護の任を解かれて都に戻った夫、大江公資と、相模は離婚しました。
そして、公資は再び中央を追われて地方に飛ばされてしまいましたが、相模は一条天皇の第一皇女である脩子内親王のもとへの出仕を命ぜられました。

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夫と別れたあと、相模は時代を代表する女流歌人としての名声を不動のものにしていくのです。



『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』
~31文字に込められたもうひとつの思い~
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