猫ちゃんの歯肉口内炎はどうしたらよいの?①原因と症状 | 言葉を話せない動物たちからのSOS ~殺処分される命を救うために~

言葉を話せない動物たちからのSOS ~殺処分される命を救うために~

3本の脚を虐待できられてしまった育生(なるみ)ちゃんをきっかけに始まったブログででしたが、
チョコママの猫レスキューをしている日常の様子をご紹介してます。素敵なご縁探しもしています。

|歯肉口内炎ってどんな病気?

 

臼歯のところに歯肉炎がある(赤矢印)

 

歯の周囲や口の粘膜全体に赤く炎症を起こす病気で、軽度では赤みがある程度ですが、重症となると出血を伴って、とても痛い病気です。特に猫ちゃんたちは、お口がとても敏感なので、ほんの少し炎症があるだけでも食欲が落ちてしまったり、元気がなくなってしまうことがあります。

 

|原因は?発生率は?

 

2歳以上の猫ちゃんの約70%は、歯肉口内炎があると言われており、動物病院に外来で来院される猫ちゃんたちも、身体検査のときに口の中をのぞくと、程度の差はあっても、歯肉口内炎を持っていることがほとんどです。

 

猫ちゃんたちは、口の周りを触られるのを嫌がる子が多く、飼い主さまが猫ちゃんの口の中を見るのは、そう簡単ではないようです。そのため、飼い主さまの知らない間に歯肉口内炎が進行している場合もあります。

 

見た目は普通なレオくん
歯肉口内炎があります(赤矢印)

 

 

|原因は?

 

いままで多くの研究や調査が行われてきていますが、はっきりとした原因は分かっていません。ただ、原因として挙げられるものには大きく2つに分けることができます。

 

◯感染因子

ウイルス、細菌、歯石

 

◯非感染因子

歯科疾患、環境ストレス、過敏症

 

2019年の研究で、歯肉口内炎は、1頭飼育の世帯よりも多頭飼育の世帯の猫の方が発生率が高く、1匹増えるごとに発症率が70%以上上昇することが分かっています。

 

また、同時に行われた調査で、完全室内飼いと外に出てしまう猫で比較した結果では、歯肉口内炎の発生率に差はないとの結果でした(室内/室外の衛生環境は関係なさそう)。多頭飼育環境では、慢性的な生活ストレスを感じている可能性があることと、感染を猫間で周期的に繰り返していることが原因と考察されていました。

 

上記の原因から始まった炎症は慢性化し、炎症細胞の過剰な反応を繰り返すため、粘膜の増殖・肥厚と潰瘍を繰り返すこととなります。

 

58匹の歯肉口内炎の猫の調査ではその98%の猫で食道炎も併発していることがわかりました。食道炎を呈すると、猫は食欲不振や吐き気につながっていると考えられています。よく吐くことのある猫ちゃんは、歯肉口内炎のチェックが必要かもしれません。

 

 

|症状は?予後は?

 

歯肉口内炎の症状で最も多いものは、食欲の低下です。お腹は空くので食事を食べに行くけれど、少し食べただけで口が痛くなり、食べるのをやめてしまう。これを繰り返していると徐々に痩せていったり、飼い主さんにはわからないように痛みを我慢して寝ていることが多くなったりします。また、口の周りに黒いかさぶたがついていることがあります。これも歯肉口内炎のサインです。

 

ふたりとも口元に黒いかさぶたがついている

 

初期症状から進んでくると、食事を食べているときに急に飛び上がったり、「ギャッ」と鳴いたり、痛みを訴える症状が出てきます。おもちゃで遊んでいるときに、おもちゃに噛み付いたとき、おもちゃに血液がついたりすることも、歯肉口内炎が進行しているサインです。

 

重度の歯肉口内炎は、痛みとの戦いです。痛み止めを使ったり、流動性の高いものを与えたりしますが、対症療法となるため、慢性的にずっと口の痛みを患っていくこととなります。

 

 

動物病院での歯肉口内炎の診察は、主に視診です。ちょっとひげを軽くつまんで上に持ち上げると、犬歯の歯肉を確認することができます。ほっぺたをぐーっと後ろに引っ張ると上顎(うわあご)の臼歯を確認することができます。

 

歯肉口内炎(赤矢印)と口角の汚れ・かさぶた(青矢印)

 

直接口をグイッと開けるのではなく、唇やひげ、ほっぺたを少しずらすことで確認できるでの、ご自宅の猫ちゃんも是非見てみてください。

 

慢性化する前に早めに歯肉口内炎を見つけて、動物病院に相談しましょう。

 

次回は、歯肉口内炎の治療法について、解説いたします。

 

【参考文献】

・Da Bin Lee et al: An Update on Feline Chronic Gingivostomatitis. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2020 Sep; 50(5): 973–982.

・WSAVA Global Dental Guidelines 2020