筆武将の乱~俳優・伊藤俊彦のリベンジブログ

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筆無精から筆武将になると宣言したにも関わらず
再び筆無精に落ちぶれた
俳優・伊藤俊彦のリベンジダイアリー

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ミュージカル座

『ハートスートラ』2022

無事に全公演駆け抜けることができました。

そして


この「舎利子」という大役を
お任せいただけたことは
間違いなくあたくしの役者人生に
大きな意味が生まれました。

2ヶ月前
ポーランドでのダンス公演が
ウクライナ情勢とコロナ禍を鑑みての渡航中止勧告。
そんなときにハマナカ先生から
まるで運命に導かれるようにこのお話をいただき
膨大でレンジの広い楽曲たちをなんとかものにすべく
まずは覚えないことには練習にもならない!
と稽古開始前には全部覚えようと
そこからカラオケ通いでの練習の日々。

たくさん悩んで
うまくいかないジレンマに押しつぶされ
それでもなんとかがんばって
初めての歌稽古で意気揚々と歌いあげるも
高いキーは張らなければ歌えない
という概念にとらわれてる自分に
作曲の菜美ちゃんや歌唱指導のりりこからも 
「ここは抜いて歌ってほしい」
「ここは澄んだように抑揚がなく」
などのリクエストをもらううちに
断酒でもしてみようかとお酒をやめてみたところ
明らかに声の質が変わって来るのを実感。
身体もシャープにならないと仏の道の説得力もないと
食事制限もし
毎日がなんとかこの舎利子という役を完成させるべく
歌と役と作品と共演者と向き合った毎日でした。

運命の作品に出会いました。
そして素敵な共演者にも恵まれて
たくさんの刺激をいただきました。
そして歌うことに
すこしだけ自信を持つことができたようにも思えます。

歌って 悩んで
歌って 掴んで
歌って 落ち込んで
歌って 発見して
歌って 交流して
最後には
歌って 伝えることができたかな?

サイコーに充実した2ヶ月でした。

ご覧いただいた皆様
共演者、バンド、スタッフの皆様
20年来のミュージカル座のサイコーな戦友たち
そしてハマナカ先生
本当にありがとうございました。

せっかくなので
あたくしの勉強した仏教のお話をチラリと。

舎利子とは
舎利弗やシャーリプトラとも呼ばれる
仏陀の十大弟子の筆頭に当たり
「智慧第一」と言われとても頭がよく
仏陀に次ぐ存在と言われたそうです。

バラモン教の司祭階級の家柄に生まれ
後継ぎとして期待されていたのに
バラモン教の教えに疑問を抱き
真理を求めて家を飛び出します。

当時は
バラモン教に批判的な思想家が多く現れた頃で
舎利子も
「バラモン教と違うことを言ってる人の元で学びたい」
と200人以上の弟子を持つ
「サンジャヤ」
という人のところに弟子入りをし
みるみるうちに頭角を表しあっという間に
弟子の指導を任せられる立場になります。

サンジャヤは
「この世に真理などというものはなく
仮にあったとしても私達には理解できるものではない」
としてあらゆる真理とされるものを疑ってかかります。
しかしそれは
逆に何を問うても
曖昧な答えしか返ってこないことを意味し
例えば
「人間が死んだらその先はあるのか」
と舎利子が問うても
「そうとは思わない、だが、そうでないとも思わない」という始末。

自分が
人間として生まれた意味や希望というものの真理とは
そのように曖昧なものでしかないのだろうか

と舎利子はサンジャヤの元を離れ
新たなる師求めるようになります。

そこで舎利子は仏陀の弟子というものと出会い
仏陀という人の存在を知るのです。
そして
自分の求めている真理を
知ることができるかもしれないと
サンジャヤの弟子200人以上を説得し
引き連れて仏陀に弟子入りしたそうです。

釈迦の教えをなるべくそのまま実践しようとしたのが
「上座部仏教」と呼ばれるそうですが
釈迦の教えが
自分自身へむけての修行や救いであることに対して
世の中や周りを救いましょう
みんなで幸せになりましょうという思想が生まれ
仏教にもいくつかの宗派が生まれます。

その中の「大乗仏教」というのが
日本にも伝わり広まりました。

キリスト教の聖書や
イスラム教のコーランが
唯一絶対の経典であるのに対して
仏教はそうやって時代に合わせて
時代と共に変化し続けて
柔軟性を持って今に生き続けているのですね。

般若心経は三蔵法師として有名な
(実際、三蔵と呼ばれる僧侶はたくさんいる)
中国の玄奘(げんじょう)が決死の旅によって
インドから中国に持ち帰った
「大般若経」が原書とされています。
玄奘はサンスクリット語で書かれていた大般若心経を
漢語に訳し、600巻ほどにしたためました。
そして
その600巻のエッセンスを
わずか262字で表現しているのが般若心経。
般若心経には仏教の真髄となる教えが凝縮しています。

しかし般若心経は
玄奘によって漢語訳されたものも合わせて
8種類存在します。

玄奘訳のように
観音菩薩の説法に当たる本文だけからなる
「小本」と
本文の前後に
物語の基本的な設定に当たる序文やエピローグを含んだ「大本」の2つの系列があります。

お経には
必ず序文というものがあり
序文には
タイトルや内容紹介みたいのもののあとに
本文があります。
そして観自在菩薩のように
その宗派を代表する仏様が説法したあとに
最後に
瞑想を終えたお釈迦様が「その通りです」
とお釈迦様が認めた教えであることが記されます。

この「お釈迦様が認めた」ということが
仏教では重要で
これがあるからお釈迦様以外の仏の教えも
お釈迦様のお墨付きということになるのです。

我々の
『ハートスートラ』でも
最初に般若心経を唱えますがこれは
「小本」と呼ばれるいわば凝縮版で
気軽に唱えることができます。
そしてこのミュージカルでは
玄奘訳にはないこの序文も描かれています。

それが主人公ゆうが舍利子に最初にいざなわれる
「度一切苦厄」というシーンです。

お釈迦様が弟子を連れて霊鷲山(りょうじゅせん)
という山に登るとお釈迦様は深い瞑想に入られます。
そこで弟子の舎利子がお釈迦様に尋ねます。

「もしも立派な若者が智慧の完成を目指すならどのように学べばよいでしょう?」

しかしお釈迦様は瞑想中です。

するとその時、観音様(観自在菩薩)は
こうおっしゃいます。

「私は深淵な智慧の完成を目指して、般若波羅蜜多の修行をしていた。人は私や私の魂というものが存在すると思っているけれど、実際に存在するのは五蘊(ごうん)という、肉体、感覚、イメージ、感情、認識という一連の知覚・反応を構成する5つの集合体であり、そのどれもが私ではないし、私に属するものでもないし、またそれらの他に私があるわけでもないのだから、結局どこにも私などというものは存在しないのだ。しかもそれら5つの要素も幻のように実体がないことだとわかった。そして、この智慧によって、すべての苦しみや災いから抜け出すことができたのです。」

こうして観音様が智慧の実践により悟られたことが
舍利子に語られていくのです。

ここで面白いのが
釈迦の時代から何百年も後に生まれた
観音様という大乗仏教の仏様が
釈迦と同じ場所で瞑想をし
原点であるお釈迦様の一番弟子である舎利子が
何百年の時を経て
観音様に教えてもらってるという構図。

そして観音様からすべてが語られたあとで
お釈迦様は瞑想を終えられて
「その通りです」と
喜んで観音様をお褒めになられました。
そして舎利子や観音様やその場にいた一同をはじめ
世界のすべての者達はお釈迦様の言葉に喜びました。

と結ばれることで
これがお釈迦様が認めた教えであることになるのです。

般若心経は大乗仏教のヒーローである観自在菩薩と
仏陀の一番弟子であり、いくつものお経に登場する
上座部仏教の人気者、舍利子のコラボなのです。

そんな観自在菩薩をパワフルに演じられた
光枝明彦さまはなんと御年84歳!
まさにあたくしにとってもヒーローであります。

あたくしも今回いろんなことを知ったおかげで
お寺巡りをしたくなりました。
そして仏像の世界にも興味シンシンです。

今回、舎利子としてシーンの中で
何度も座ることがあるのですが
実は何気に
あぐらや正座以外に階段などに座るときは
仏像のポーズをイメージして座ったり
時折重要なワードには
手印と呼ばれる手で結ばれるポーズを重ねたりと
あたくしなりの仏像オマージュを織り交ぜてました。

初めて仏教の言葉で興味を持ったのは
「中道(ちゅうどう)」
という言葉でした。
中道の中は
二つのものの中間ではなく
二つのものから離れて矛盾対立を超えることを意味し
道は実践・方法を指します。

あたくしの好きな言葉はバランスです。
バランスを取るというと
なんだか当たり障りのところを行くかのようですが
あたくし的には
バランスを取るということはかなり難しい作業と
感じています。
両極を知ることは大事で
知ると知らないとでは世界が違います。
両極を知らなければバランスは取れないし
両極は常に同じ質量で存在しているわけではないので
真ん中だからバランスが取れるとは限らない。
なんとなく当たり障りない真ん中を行くのではなく
どういうバランスでどう歩んで行くか。

これは中道の考え方に近いなと思い
それ以来これは自分にとって
人生のテーマになりました。

釈迦の説いた教えは時代に合わせてうつろい
今の自分にも届いています。

ありがとうございます!

これからも般若心経や仏教に触れていこうと思います。



さあ、来週からは唐十郎の世界へ!
2018年『腰巻お仙』
ドクター袋小路 撮影:横田敦史

2019年『少女都市からの呼び声』
ドクターフランケ醜態 撮影:横田敦史

流山児★事務所の小林七緒演出で
ほぼ同じ座組メンバーで、当時をリスペクトしつつも
現代の感性で読み解き立ち向かってきた唐十郎作品。
あたくし流特権的肉体論を駆使して
唐十郎という怪物と戦ってきました。
そして2021年のコロナ禍による延期の決断からの
リベンジ公演『ベンガルの虎』へ!



【劇場】
下北沢ザ・スズナリ
【スケジュール】
11/23(水・祝) 19時
11/24(木)   19時★
11/25(金)   14時/19時★
11/26(土)   14時
11/27(日)   14時/19時
11/28(月)   14時
★は平日夜割引4,500→4,200円
【チケット】
全席指定(税込)
一般4,500円
平日夜割引4,500→4,200円
学生、養成所生、U25(25歳以下)2,500円
高校生以下1,000円
【お申し込み】
予約フォーム(伊藤俊彦扱い)
https://www.quartet-online.net/ticket/bengal2023?m=0jifabh

刮目セヨ!