尾崎南「絶愛/BRONZE」あらすじと最終回 | 泉選手を熱烈応援

尾崎南「絶愛/BRONZE」あらすじと最終回

「尾崎南(おざき みなみ)」先生の代表作「絶愛(ぜつあい)・BRONZE(ブロンズ)」は
一世を風靡した大人気作です。

まだ読んでいない方、途中まで読んだけど忘れてしまった方のために、読み方ガイドと簡単なあらすじを

ご紹介します。



 ◆読む前に◆


「絶愛/BRONZE」は、男性が男性を激しく愛する、いわゆる「BLマンガ」のはしりといえる作品のひとつです。
ジャンルとしては、前半は「学園もの」、後半は「日常系」に分類できると思います。
「BL」の中ではわりとハードめ、アダルト向きな内容です。ほのぼのハッピーBLではありません。
具体的な描写はぼかしてありますが、一応「BL」が根本的に嫌い、という人はご注意ください。
ちなみに、BL漫画ではよくあることですが、同性同士の性的行為についてはファンタジーです。



 ◆読み方ガイド◆


「絶愛」「BAD BLOOD」「華冤断章(小説)」「BRONZE」「BRONZE最終章」は、タイトルが違いますがすべて同じ世界のお話です。
(微妙に細かい設定が違っている点もあり、パラレルワールドだとする説もありますが、一応ひと続きの

お話と考えてOKです。)



読む順番は、
絶愛全巻→BRONZE全巻 でOKです。電子書籍でも購入できます。


時系列で、だいたいお話がつながるように丁寧に読みたかったら
絶愛全巻→BRONZE1~2巻→BAD BLOOD→BRONZE3~7巻→華冤断章全巻→BRONZE8~14巻→最終章 でしょうかね。

時系列がかぶっていたり、どの時系列にも属さないお話もあるので、多少前後しても大丈夫です。




なお、尾崎南先生は体調がお悪く、頻繁に連載を長期休載することで有名です。
主要キャラクターが死んだと思わせる展開の直後に休載になり、そこから2年間不安なまま待たされるなどの事件がたびたび発生していました。


当然、連載再会の時には「待望のの再スタート!」みたいなアオリがつきますから、ストーリーもわざとインパクトのある流れになりがちです。

もし余裕がありましたら、コミックスをただバーッと流し読むのではなく、奥付をご覧いただき「え?この巻とこの巻の間って3年もかかっているの?」というところまで思いをはせてみると、一部ストーリーの唐突さや急展開、絵のタッチの急な変化の違和感が減ると思います。






もし、あなたがオトナで、男性同士の(肉体関係を含む)恋愛に抵抗がなければ、尾崎南先生の過去に発行された同人誌も抑えておくと、さらに作品への理解が深まります。
絶愛/BRONZEは、マーガレット誌(少女漫画雑誌)に掲載されていましたので、男性同士の肉体関係についてはかなりぼかした表現がされています。しかし、お話が進むにつれてかなりハードな肉体関係になっていること、それに伴いお互いの感情に変化が生じている事が同人誌のほうで赤裸々に描かれていきます。

同人誌のほうを見ていないとストーリーの途中で「あれ?なんか唐突にラブラブになってる?」という違

和感を感じるかもしれません。
しかし、尾崎先生の過去の同人誌は入手困難なものも多いのが残念ですね。総集編だけでも再発行してほしいです。






 ◆あらすじ◆



絶愛1~5巻


人気ミュージシャンである「南條晃司」は、ある日酔って道で倒れていたところを「泉拓人」に助けられ

る。
泉は、身寄りがなくバイトを掛け持ちしながら高校に通っている苦労人だが、サッカーが好きで才能もあ

る。

晃司は幼いころ、サッカーをしている激しい目をした少女に恋をした思い出があり、同じ目をしている泉

が男性であるとわかっていながら気になってしまう。



やがて、その「初恋の少女」は、幼いころの泉本人であったことが判明するが、自分の勘違いに気づいた

時にはすでに、晃司が泉を「好きだ」という気持ちは自分でも否定できないレベルになっていた。


晃司は泉の通っている学校に転校。学校のすぐ隣のマンションに引っ越して、泉を追いかける生活を始め

る。

泉がそれまで住んでいた安アパートを強制退去させられ、晃司と一緒に拾った愛犬が事故で亡くなってし

まったのをきっかけに、晃司は泉を自分のマンションへ招き入れる。泉は晃司の部屋の炊事洗濯全般を引き受けるのを条件に無料で住む場所ができ、バイトを減らしてサッカーに打ち込めるようになる。



泉は、最初は「芸能人」である晃司につきまとわれたり、自分や自分の妹弟がスキャンダルに巻き込まれ

たりすることを本気で嫌がっていた。しかし、唯一の肉親である母親との再会と死別の際に晃司が自分を

精神的に支えてくれたり、晃司がいたおかげでサッカーを思いっきりできるようになったことで、少しず

つ心を開き始める。

泉は男性である故に自分の肉体にさほど頓着がないようで、晃司の「泉を抱きたい」という欲望を、愛情

ではなく「優しさ」や「哀れみ」に似た感情でで受け入れてしまう。





BRONZE1~6巻


泉は、晃司と暮らし始めてからサッカーに打ち込めるようになり、めきめき上達。
イタリアリーグへのサッカー留学を打診される。
悩む泉に学校側は、まずは短期間イタリアに行ってみて体験することを勧める。


泉はそのことを晃司に言いそびれたまま、イタリアへ行ってしまう。
晃司は泉を空港まで追いかけようとして交通事故にあい意識不明に。


泉が2週間のサッカー留学から帰ってくると、晃司は入院中。
共通の友人である「渋谷」が、二人の住んでいたマンションを引き払って、泉は眠り続ける晃司につきっき

りで看病する。



泉の必死の呼びかけにより、ようやく目覚めても、晃司は声が出なくなっており、芸能人としては致命的

な状態だった。


その頃、剣術の名家であった晃司の実家で相続問題が発生。晃司は後継者候補として実家に引き取られてしまう。・・・結果として泉ホームレス化。


泉はバーで住み込みのバイトを見つけてまた貧乏暮らしに。


晃司は泉を忘れようと実家で剣術の修行に打ち込むが、やはり泉が気になってしまい脱走、たまたま怪我をして路上にいた泉と再会、そのままちゃっかり泉の家で隠れ住むことになる。


二人でひっそりと暮らす中、晃司のことを探していた兄「広瀬」「秋人」により泉が狙われ
権力を使って、泉の妹弟の養父の会社を倒産させるなどの悪質な嫌がらせを受ける。
(この二人の兄が晃司にここまで執着する理由が、小説「華冤断章」に書かれている。)
それでも晃司をかくまおうとする泉。晃司は泉を探して兄の会社に乗り込み泉と合流。
「俺に何かいうことはねぇのか?」の呼びかけに、ようやく声が出るようになる。





声が出るようになったことで、晃司は歌手として芸能界に復帰。
泉を招待したライブで晃司は、「俺の歌は、俺の大切な人(=泉)のためだけにある、芸能界は引退する」

と表明。逆上したファンに切りつけられて怪我をしてしまい、二人は渋谷の持っていたマンションに身を隠し、二人で生活を始める。




広瀬は、泉の信頼していた部活の後輩と取引をして、泉を凌辱するよう仕向けるが、「晃司はただ俺を好きなだけだ」という泉の言葉に、身の覚えのある後輩は謝罪、退場。

泉は広瀬から、晃司と二人の兄との確執を聞き、そして、「愛し合って心中した」と信じていた自分の両親が、実は父親の浮気による無理心中だったことを教えられ、凌辱された以上の苦痛を受ける。




ようやく解放されても、泉に、そして広瀬のほうにも、心に虚しい傷だけがついてしまう。



晃司は帰ってこない泉を心配して探し、雪の中うずくまっていた泉を保護する。
ひどく傷ついて錯乱状態の泉を「俺の天使」と呼び、優しく愛して慰める。



心に落ち着きを取り戻し眠った泉。
晃司は一人実家へと出向き、確執を断ち切るために兄の前で、剣術に重要な自らの利き腕を日本刀で切り落とす。

片腕をなくす大怪我をして帰宅した晃司に、泉もまた、自分のトラウマの象徴である左腰の傷跡を包丁でバッサリと切り裂いて過去との決別を表明する。


・・・・・二人とも即刻病院送りであることは言うまでもない。




BRONZE7~9巻
(途中まで読んだけどその先どうなったの?って人は、BRONZE7~9巻と、10巻の後半だけ読むことをお勧めします。ラブラブハッピーと言えるのはここだけです。)



左腰に大怪我を負いながらも、泉はサッカーの高校選手権に出場。
例の後輩とのわだかまりもとけ、順調に勝ち進む。サッカー関係者からの評判も上々。


晃司との関係も良好で、それまでのように「抱かせてやる」のではなく、口にこそ出さないがお互いに求めあって慈しみ合うような描写になっていく。


残念ながら選手権は、決勝を目前にして泉は膝の靭帯を切る大怪我をしてしまい敗退。
しかし、実力を十分に発揮した泉はたくさんのオファーを受け、Jリーグにプロ入りを決める。




泉はプロのスポーツ選手としてチームの寮に入り、膝を治療しながらサッカー漬けの幸せな毎日を送る。
晃司はスタジオを併設した家を建て、ミュージシャンとしての活動を再開。



だんだん怪我から回復してサッカー選手として開花していく泉に、晃司は泉が遠い存在になってしまうのではないかと不安を募らせるが、泉のほうからキスしてくれたり、デートに誘ってくれたりと、どう見てもラブラブ。



Jリーガーとして本格デビューし、日本代表にも選ばれた泉は、寮を出て晃司の立てた家に引越し、いよいよ幸せな暮らしを始める。
二人の関係に理解ある友人やメンバーにもめぐまれ、暖かく穏やかな生活。



晃司の誕生日であるクリスマスイブ、ランニングの振りをして出かけた泉は、プレゼントとしてダイヤのペンダントを買う。
あまりにも自分らしくないプレゼントにはにかみながらも、晃司の喜ぶ顔を想像して微笑み、イルミネーションのともる街を、ペンダント片手に泉が走り抜けていく・・・・




 *HAPPY END*




注:絶愛・BRONZEおもしろかった!感動した!二人とも末永くお幸せに!という感想で終わりたい人はこれ以上読んじゃダメです。
9巻のラスト2ページは、開く前に両面テープで封印しておいて下さい。

続きが気になる人は、私のうちの新しいカーペット でもながめていればいいと思います。
10巻も、後半の「番外編」は読んでOKですが、前半の本編(最終章)は見なくていいです。
11巻以降は存在しないものとお考えください。




















・・・それでも最後まで読みたい人は自己責任でどうぞ。




BRONZE10~14巻(マーガレット最終巻)あらすじ



泉は、広瀬があまりに晃司に執着することに嫉妬した秋人によって、車で撥ねられて脊髄損傷の大怪我を負ってしまう。
それまでの膝の怪我などの時でさえ、サッカーができなくなるかもしれないという恐怖に、精神に不安定になっていた泉。
半身不随などというほぼ絶望的な状況に、気づかせることなく死なせてあげようと、晃司は泉を手にかけようとするが、どうしても殺しきれない。
渋谷の「可能性はゼロじゃない!」という励ましもあり、立ち向かうことを決意する。
目覚めた泉も、冷静な時間と混乱を繰り返しながらも、晃司と一緒にプロサッカー選手への復帰を目指すことに。



渋谷の勧めでアメリカに引越し、現地ドクター「ヒナ」の指導のもと、怪我から復帰するための新しい治療に挑戦することになる。
晃司もアメリカに移住、海外で音楽活動を続けながら泉をサポートする。




しかしそんな折、晃司は泉を撥ねたのが自分の兄秋人であり、その原因が自分であることに気づいてしまう。
自分がすべて悪かったのだと気づいた晃司は、これ以上泉を苦しめないために、泉からとことん嫌われて別れようと、泉にひどい乱暴をふるった上、暴言を吐いて泉を置き去りにする。



そうでなくても、リハビリが思うように進まず精神的に弱っていた泉は、いよいよ心のバランスを崩し、まるで自分の母が父と無理心中した時を再現するかのように自殺をはかる。




晃司は、実はクセモノだった男、ドクターヒナの手引きで、南條晃司の名前を捨て、髪型や容姿を偽装して別人になりすます。
泉は死んだ、とヒナに知らされた晃司は、偽名のまま日本に帰国、泉が本当に死んだかどうかを確信できないまま実家へと舞い戻る。



泉を轢いた犯人である秋人も、その原因となった広瀬も、そして晃司も、何もかもが狂い始めていた。

確執と混乱の本当の原因は、実は南條家の関係者だったヒナ。ってかそもそもだいたい全部こいつのせい。

秋人と晃司はともに日本刀を抜いて対峙するが、本来秋人より剣の実力が上であるはずの晃司は、一方的に秋人に斬られいたぶられる。

(ここで晃司の頬に大きな傷がつき、どんなに辛くても晃司の顔のかっこよさだけを心の支えにして読み続けてきた晃司ファンが何人も「もう無理、やっぱり9巻以降はなかったことにするわ…」と言い残して去っていかれました。だから、9巻の最後2ページと10巻の前半は両面テープで封印しておけとあれほど…。)


しかし結果として、秋人は晃司が一生、その罪で苦しむようにと、自分をわざと殺させる。



日本への密入国、そして兄を殺した容疑で逮捕される晃司。






しかし最後の瞬間、晃司は泉との再会を果たす。
本当に死にかけて、その後も精神的にすっかりまいっていた泉だが、晃司とはぐくんだ絆、そして何より自分の意思の力で再び前を向いて立ちあがることを決めたのである。


「俺たちにはまだ、これからがある」と前向きに微笑む泉を、本当に愛しいと感じながら、晃司は連行されていく。







泉と渋谷は、状況を整理するために南條家へと乗り込む。



そこへ「すべての原因」ことドクターヒナが、死んだと思われていた晃司たちの叔父を伴って現れる。

小説「華冤断章」を読んでいないとこのあたり意味不明になります。叔父さんが若いころ余計なことをしたせいで、叔父さんの兄(広瀬・晃司の父)にはある種の思いこみがあり、死後広瀬ではなく晃司を当主に、という滅茶苦茶な後継者指名がされる羽目になった。それが広瀬が狂った原因であり、巡り巡って泉の半身不随の原因。そして、最初に叔父さんにそれを唆したのがヒナ。


ついでにヒナは、逮捕拘留中のはずの晃司まで連れてくる。もうやりたい放題。





叔父さんは盲目で隻腕な上、年老いて体が不自由だが、隠されていた「本当の遺言」のありかを知っており、それを広瀬に教えてくれる。
広瀬を後継者に指名する遺言に涙する広瀬。最初っからこの遺言書があれば、誰も傷つかずに済んだのに。BRONZE2巻の段階でヒナと叔父さんが出てきてくれれば、その後のトラブルは全部なかったはずなのだ。



叔父さんは、この負の連鎖を断ち切るのが自分の生きてきた意味だと、隠されていた短刀でヒナを刺し、自分も首を切って絶命する。


息も絶え絶えのヒナは、広瀬に「傍に来てほしい」と懇願するが、それに応じた広瀬を殺さない程度に銃で撃って大怪我を負わせる。
広瀬の側近に応戦され、さらに大怪我をするヒナ。もうしっちゃかめっちゃか。





この混乱に乗じ、泉と渋谷は晃司を連れて逃げ出すことに成功する。
誰もがみんな満身創痍で、彼らはこれからどこに向かうのか・・・・





「・・・・・え?」という気持ちの読者を放置で強制終了。
これを最後に、尾崎先生の作品が「マーガレット」誌に載ることはなくなる。















BRONZE最終章(出版社を移動)あらすじ

「最終章」というのは、BRONZE10巻あたりからのストーリーをすべて含みますが、本のタイトルそのものに「最終章」とついているのが、創美社から出版されたこの本です。
ストーリーは「BRONZE14巻」の続きです。

本の大きさが変わってコレクションしにくいうえ、お値段も743円と大幅アップ!お高いのにカラーページ・カラーピンナップは付いていない節約設定。

書店にはまず置いていないし電子書籍もないので、持っていない人はアマゾンでポチってこい仕様です。





晃司と泉は、渋谷の手引きでホテルに身を隠す。
互いに互いの至らなさを謝罪し、抱き合って愛情を確かめあう。


この時泉ははじめて自分から晃司のことを「好きだ」と口に出して告白しており、晃司を感動させる。

(なお、この話のプロトタイプとなった同人誌「愛溺愛死」では「俺も好きだ」ではなく「俺も愛してる」と言っており、セリフの重さがだいぶ違っている。
泉の「愛してる」と、言った言わないの問題は過去にも起きており、「拓ちゃんが愛してるって言ってくれたらもう満足、BRONZEはそこで終わったことにするわ。」というファンが多いため、BRONZEを終わらせないために泉はずっと「愛している」と言わない設定なのではないかと思われる。)



泉と晃司はホテルに隠れ住んだまま、ひたすらお互いの体を求めあう生活を続けるが
このままでは何の問題解決にもならないことに気づいており、泉の「たったひとつ」であるサッカーに復帰できない、という現実が二人を蝕んでいく。



同時に

ギリギリで命をつなぎとめた広瀬もまた、自分の「たったひとつ」であった父が、本当は自分のことを選んでいてくれたという新事実と、それなのにもうその父はいないという現実に、精神を病んで入院していた。




渋谷は、二人を自由にするために働きかけ、何とか広瀬の入院している病院を突き止める。
「たったひとつ」を失った広瀬は、「サッカー」を失った泉に似ていて、以前の姿とはだいぶ様子が違う。



広瀬を経由して、ヒナに連絡を取ることに成功する渋谷。
ヒナはあれほどの重傷を負ったはずなのに生きていた。


謎のコネと権力のあるヒナは、迷惑をかけたお詫びに、と、晃司の不起訴処分を約束してくれる。

しかしその頃、泉と晃司は、渋谷のとっていたホテルをすでにチェックアウトしていた。



二人はどこへ行って、これからどうするのだろう・・・・・?






  *謎を残したままFIN*








これが、今のところ絶愛・BRONZEの「最終回」「最終話」です。



最終ページに「死ぬ前に、死ぬほどヤル」と、冗談めかして笑いながら抱き合う晃司たちと


「よろしいのですか?12代目(父親)が貴方に遺した神道真陰流も、その遺志も」という側近の言葉に微笑む広瀬のシーンがあり



この後それぞれが死を選んでいたとしてもおかしくない終わり方になっていて、これだけを見れば「自殺END」と解釈するのが妥当かもしれません。







ただ、泉と晃司は、最終章の初期の段階で生きる道を選んでいますし、そもそも晃司は泉を殺すことができません。
広瀬も、不当な後継者であった晃司が、名実ともに自分の家から外れたことで、たとえ生きる理由がなくても、死ぬ理由もなくなっています。






個人的な解釈ですが、まるで「死んだ」かのような演出になっているのは、「再生」とか「やりなおし」を意味しているのではないかと思います。

色々な意味でリセットをかけ、それぞれ新しい人生を歩んでいるのだろうと。
幸い、やりほうだいな男ヒナによって、広瀬も晃司も無罪放免で、自由に生きられる下地ができています。
広瀬も泉も、「たったひとつ」だと思っていたものを失ってしまいましたが、泉を「唯一」とする晃司と、広瀬を「唯一」とする側近がそれぞれを支えています。





「たったひとつ」を完全に自分だけのものにするのは、もう難しいかもしれませんが、
泉さんも広瀬もたいせつな「たったひとつ」と関わって生きていくことはできると思います。
そもそも、どんなに好きだからって、自分だけのものにして独り占めするのは不可能ですから、誰だって何とか折り合いをつけて生きている。泉と広瀬は、人よりそれがちょっと難しいだけ。



例えば、泉は選手は無理でも、サッカーの監督やトレーナー、解説者としてかかわってくれたらいいな、と思います。



條統は、広瀬たちの妹である撫子が継承しましたが、撫子の剣は晃司や叔父さんと同じ「無の剣」です。
広瀬が誰かに伝承しないと、広瀬の「唯一」である父の剣「華の剣」が途絶えます。
広瀬にとってもう、家も條統もどうでもよくなっていたとしても、父の姿そのものである「華の剣」だけは捨てられるはずがありません。
幸い、広瀬には息子がいますから、きっと彼が「華の剣」を継いでくれると思います。
無心で息子を鍛えるうちに、いつか息子の姿に、もう会えないと思っていた父の姿を重ねられる日が来ると思います。