『しんしゃく源氏物語』の作者・榊原政常先生と演劇部の生徒たち | 谷口礼子オフィシャルブログ「じゃこのおもしろいこと」

稽古も残りわずかになってきて、来週には本番です。
今日ふと思ったことを、大事だと思ったので書いてみることにします。

『しんしゃく源氏物語』の作者は、榊原政常さんという方です。
明治生まれの榊原さんは、戦中から戦後にかけて高校の国語科の教員として勤務しながら、高校演劇部の顧問として多くの戯曲を書きました。
榊原先生と呼ばせていただきます。

榊原先生が『しんしゃく源氏物語』を初演したのは、1950年、昭和25年のこと。今からさかのぼること72年前です。
当時勤めていた高校の演劇部には女子だけ。女子生徒だけで上演できる脚本を、ということで源氏物語を底本にしたこの作品が生まれたそうです。

光源氏を待ち続ける、見た目は劣っていても心のきれいな末摘花というお姫様。そのお姫様を支えようとするお邸の人たち。
かなりドタバタするけど、まっすぐで一途で可愛らしくて、掛け値なしに優しい世界。
今でも、末摘花の一途さに、何度見ても涙が出てしまうシーンがあります。

今日、思ったことというのは、この本を初めて上演した女子高生たちと、榊原先生のことです。
終戦からたった5年の日本です。
生徒たちはみんな、戦争の時代に生まれ、勇ましいものや空元気に囲まれて育ってきたはずです。
その戦争の時代しか知らない彼女たちが、敗戦国の国民となり、いろいろなものが足りない中で一日一日青春時代を過ごしている。その姿を、榊原先生はどう見ていたのかなと思ったのです。
歌舞伎が大好きで、戯曲家として活動していたこともある榊原先生。文化芸術を愛する人にとって、戦争の時代ってどんなだったのでしょう。
そして、その戦争の時代しか知らずに育った彼女たちに、なにか、榊原先生が見せてあげたいと思った世界があるとすれば、この「しんしゃく源氏物語」の世界なのではないかと思ったのです。掛け値なしに優しくて、愛情というものは心であると言い切ることができる世界なんじゃないかな。

だから、全く違う時代を生きる私たちの心にも、そのまっすぐで一途な榊原先生の思いが伝わってきて、泣けちゃうんじゃないかな。

なんてことをふと思ったんです。

想いは時代を超える。
だとしたらすごいですよね。

この作品の世界に触れたら、ゼッタイに癒されてお帰りいただけると思います。
とてもおすすめです。

師走の忙しい時期ですが、ぜひご覧ください。

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ふでの会 プロデュース公演
『しんしゃく源氏物語 ―末摘花の巻―』
2022年12月7日(水)~11日(日)
中野・テアトルBONBON
[谷口礼子扱い 予約フォーム]
https://www.quartet-online.net/ticket/fudegenji?m=0efbejj
#しんしゃく源氏物語



 

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