平成から令和に託す方舟のジャイアントキリング~リデット体制プロレスリング・ノアの取捨選択~ | ジャスト日本のプロレス考察日誌

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【はじめに】

こちらの記事は2019年 4月7日に書いた記事を一部修正したものです。当時親会社がリデット・エンターテイメントとなり、大きな期待を込めて書かせていただきました。2020年に巨大企業サイバーエージェント入りを果たしたノアは見事に復活しました。ノアの躍進の足掛かりを作ったのはリデット体制にあると私は考えております。この記事はリデット体制時代の記事だということを踏まえてお読みいただければありがたいです。



先日、私は周りから見たら意味深なツイートをしてしまった。






この団体について思うことは色々とあるがやっぱり清算しなければいけないし、今この団体についてどう思っているのか述べないといけないと感じた。色々と言われるだろうし、揚げ足取りや便乗とか言われるだろうが、そこは「言いたいことは勝手に言ってくれ」という気持ちを抱いて、腹を括って書くことにした。

私が書いた2015年~2016年に行われたプロレスリング・ノアVS鈴木軍の全面戦争時代のブログ記事が賛否両論を呼んだ。評価もされたが、批判もされた。特にノアファンだと名乗る方から「やっぱりあなたは新日本側だったのですね。鈴木軍の鈴木みのるが出るならもうノアは見ません」というコメントを書かれたり、誹謗中傷もあった。

冒頭のツイートでいったこの団体とはプロレスリング・ノアのことである。





私はプロレス全体を見てノアVS鈴木軍という構図や考察をした。どちらに肩入れしたわけではない。あくまでも率直に感じたことをきちんと読ませる文章として書いたまで。それが賛否両論だったのだ。人の考えはそれぞれだからそれでいい。深追いはするつもりはなかったので、黙っていた。

ノアVS鈴木軍が強制的に最終回を迎え、ノアが新体制に移行したため、提携していた新日本は外れることになった。ここら辺りの経緯も非常に複雑だった。

私には一部かもしれないが、ノアファンというのは「プロレスはこうでなければいけない」「ノア以外はプロレスじゃない」といった思い込みや固定観念に囚われている印象を持っていた。それは長年見てきてそう感じた。そこについてはブログ記事の数々で言及している。

だがこれらの記事が原因だろうが、一部のノアファンからネチネチと色々とSNSで言われることになる。特にTwitterでね。

「お前はプロレスを見る楽しさとか自由とか謳っておいて、俺達には固定観念に囚われている。ふざけるな」
「ノアに何かあったときになったらしゃしゃり出てきて便乗する」

これだけではなくありとあらゆる角度から揚げ足取りやディスはされてきた。それに対しては見て見ぬふりをしてきたけど、三年近く言われてきて、今も続いている。こう書いている今も多分ディスられている。正直いい気分ではないが、それに関しては好きにすればいい。好き嫌いというものは存在するだろうから。でも、それを「バカ」「死ね」「クソ」「嫌い」「辞めろ」など端的に口をしたり文として書くと、それは時には人の心をえぐる鋭利な凶器になる。そこを分かっているのか。一部のノアファンによる言葉の揚げ足取りは結果的にノアという団体やノアファンのイメージを下げる行為。団体を愛しているのなら、そこは分かった方がいいのではないだろうか。一部だがそれが全部になってしまうことがあるのが、この世の中だ。

思えば私はブログの連載記事を書いてTwitterに告知するときに団体のハッシュタグをつけてツイートするのだが、それについてもクレームを言ってきたのはノアファンの方だった。団体のハッシュタグをつけてツイートすることは自由だし、団体から「辞めてください」と言われたわけじゃないし、迷惑な記事は書いていない。そもそもプロレスのために書いている。それなのにだ。新日本、全日本、DDT、ドラゲー、大日本のファンの方から一度も言われたことはない。そのノアファンの方だけある。

それもおかしいとは思ったが、反論せずにノアに関しては団体のハッシュタグ(#noah_ghc)をつけずにツイートしている。とにかくそういったことがあって、色々とめんどくさいという印象が強かったのであまりノアについて言及することは控えていた。

新日本との業務提携でノアは延命はできたが、その一方でやりたくないけどやらなければいけなかったことがあったとは思う。それを見せられたノアファンもフラストレーションが貯まっていたことも。新日本とノアの業務提携は大失敗ではないが、大成功とも言えない何とも消化不良なものだった。つまりはうまくはいなかったのだ。色々と新日本もノアのために策は投じるもなかなか振るわない。しまいには鈴木軍という劇薬を投入するも、観客動員には繋がったが、元々のノアファンからそっぽを向かれてしまった。

だが、当時はあれが最善の選択肢だった。新日本がノアを助けた理由として自分達が低迷していた時にノアに助けてもらったという恩義があったからだと聞く。親会社ブシロードからすると「なぜノアと組んでいるのか」と問われてもそこを突っぱねたのには新日本現場サイドの大義があったから。

でもその大義はどうやらノアには届いていなかったようだ。

2016年11月1日、株式会社プロレスリング・ノアがプロレス団体「プロレスリング・ノア」の運営、興行、関連事業をエストビー株式会社に譲渡して内田雅之が会長、田上が相談役に就任。株式会社プロレスリング・ノアは株式会社ピーアールエヌに商号変更、11月7日、エストビー株式会社が社名をノア・グローバル・エンターテインメントに変更となった。
【プロレスリング・ノア/wikipedia】

新日本現場サイドと親会社ブシロードからすると寝耳に水だったようだ。

ノアにとってはこれでようやく新日本の属国扱いもされないし、負債も会社を清算して、新たにオーナー企業が業務を継承することで、生き延びることができた。そして何よりも自分達が目指すやりたい方舟のプロレスができるということに意義を感じたのだろう。

そしてノアファンからすると新日本という不純物が取り除かれて、純度100%のノアを楽しめると思ったことだろう。

だがそれによって何が起こったのか。観客動員数の減少である。やっぱり集客面において新日本の力は大きかった。でも彼らは方舟の世界は楽しめている。

試合内容はいい。それは旗揚げ当初から変わらない。ノアは全日本プロレスの古きよきプロレスの流れを汲んだ保守本流である。だが残念ながらそれ以外で足を引っ張っている。集客面、興業のクオリティー、ストーリーライン、ファンサービス、SNSの活用といったものが他の団体より後手に回っている印象が強かった。

そして何より、理想原理主義というものが蔓延っているように思えた。理想通りに行かなければ気に入らない。ならば他を排除してしまう思考というものが特に一部だがノアファンにはあったのではないだろうか。他を排除してしまうから新規ファンもなかなか掴みにくい。

そして選手はそのファンの思考にどこか甘えていて、現状維持することが一番いいことなのだという蓄積があって、選手主体で動くのではなく、周りから提示されたものに対応する受動態になってしまったのではないかと思う。

多くのノア旗揚げメンバーが在籍していた全日本プロレス特有の受動態体質を継いだのはノアだと思っている。その現実を分かっていて、自然に変わってもらおうと感じたのが創設者の三沢光晴だった。だから団体のスローガンとして「自由と信念」を掲げた。そこには「レスラーとしてよほどのこと以外はなにやってもらっていいけど、きちんと責任は取ってやれよ。団体として俺が責任を取るから」という三沢自身の想いがあったのではないだろうか。

その想いを汲み、三沢急逝後にリーダーとして八面六臂の活躍をしてきたのが丸藤正道だった。だが丸藤は三沢の想いと同じく強制的に選手主体に動くことはさせなかった。そこは自然に身につけて、選手自らによって考えて動いてもらうことにしたのだ。

でも残念ながら選手達はあまり変われなかった。選手離脱もあったし、内部はゴタゴタ。そしてどんなにベテランをリストラして、選手が変わって体質は変わらない。そこは大きかった。それでも前に進むしかない。新日本との業務提携がうまくいかなくなって新体制となったものの、メジャー団体としてのスケールがあったノアが段々インディー団体と変わらないものになった。それでも順従するように理想は追うべきだと考えてしまった。本来なら現実を見るべきなのに…。

ただ団体や選手達の意向も分かる部分もある。大きな売上やファンを喪失したとき、新規ファン獲得より既存ファンの確保に執心してしまうケースが多い。多くの既存ファンのニーズが「変わらないノア」だったから、そこに向けてアプローチしたということではないだろうか。だが新規ファン獲得を疎かにするということは売上も観客動員数も下降線にたどりやすい。それでもいいとなると…アングラと呼ばれるものが陥る悪循環になってしまうのだ。「試合内容はいいので、とにかく見ればわかる」というのだろうが、それ以前に見てもらうための努力がノアには欠けていた。見てもらわなければわかってもらえない。興業とは自己満足ではない、一部ではなく多くの観客を満足させる娯楽である。

そんな時だった。

 マット界の“天才”こと丸藤正道(39)らが所属するプロレスリング・ノアが2月1日から新体制に移行することが28日、分かった。関係者によると、ノアを運営する「ノア・グローバルエンタテインメント社」(不破洋介社長)の筆頭株主となった「リデットエンターテインメント社」が団体の新オーナー企業になるという。ノアではそのまま不破社長が残り、内田雅之会長(56)は今月31日付で退任する。

 これに伴い東京・千代田区三崎町にあった事務所が、リデット社がある同区有楽町に移転する。長州力プロデュース興行や越中詩郎デビュー30周年興行(30日、東京・後楽園ホール)などを手がけるリデット社は長州が取締役会長を務め、プロレス大会の運営や宣伝に抜群のノウハウを持つ。
 内田氏は本紙の取材に「私としては(昨年9月の)丸藤の20周年興行を終えて、ひと区切りついた。若手選手が台頭してきたし、いい兆しが見えている。ノアは次のステージにいく段階と判断し、私が思いつかないアイデアを持つリデットさんにお任せしようと思った」と語った。

 長期的な観客動員の低迷などから業績が悪化したノアは2016年11月にIT企業「エストビー」(現ノア・グローバルエンタテインメント)に事業譲渡され、全日本プロレスの社長を務めた内田氏が中心となって団体再建に着手した。

 昨年12月には22歳の清宮海斗がGHCヘビー級王座を戴冠するなど、若手が成長。東京スポーツ新聞社制定「2018年度プロレス大賞」では丸藤が殊勲賞、清宮が敢闘賞を受賞した。

 なお、内田氏は2月1日からリデット社の特別顧問に就任する。今後のプロレス界とのかかわりについては「分からない。会長を辞めてまた顔を出したらおかしいし」とし、一線を引く方針。新生ノアの行方に注目が集まる。
【ノア・内田会長が退任し新体制に移行 新オーナー「リデット社」の手腕と評判・東京スボーツ 2019年1月29日】


 またもノアの体制が変わった。新オーナー企業となったリデット・エンターテインメントは新日本の広告を手掛け、元新日本の役員・武田有弘氏が幹部として参画する広告代理店。

そしてリデット・エンターテイメントは、ここで抜本的改革に踏み切ることになった。長年愛用してきたロゴを一新、リングマットのカラーも緑から白に移行。リング上の闘いは変わらないが、周辺を変えていくことと、何を打ち出すのかを精査して実行していこうとしている。


このブランド戦略に関してはこちらのツイートが一番参考になるかと思います。


週刊プロレスでの表紙で「脱・三沢」と謳っていたのでその辺は気になったのだが、3月10日横浜文化体育館大会を見ると創設者に最大のリスペクトを忘れずに、新しい時代に向けて動こうとしている意欲がよく伝わってきた。


これは新日本プロレスがかつてストロングスタイルという呪縛から解き放ち、まるでファミレスのようなあらゆる料理を提供していくスタイルに移行した過程によく似ている。つまりストロングスタイルも排除するのではなく、そのメニューのひとつとなったのである。これはノアにとっての「三沢イズム」がそれに当たる。

ノアには「三沢イズム」を継ぐ丸藤や杉浦貴や潮崎豪、小川良成、そして新生ノアの顔となり、三沢と同じくエメラルドカラーを継ぐ清宮海斗がいる。そこに三沢を知らない世代である拳王やマサ北宮、さらに最近不気味な笑みと狂気を携えるようになった中嶋勝彦らが別基軸のプロレスを打ち出し、さまざまなフックを備えることで、より多くの観客を取り込もうとしているのかもしれない。そういう戦略が見栄隠れする。

新オーナーであるリデット・エンターテイメントの鈴木裕之氏は「新日本に次ぐ不動の業界第二位」を目標に方舟大改革を進めていくという。今はノアにとって必要なもの、不必要なもの、変えなければいけないもの、変えなくていいものを仕分けする取捨選択をしながら、改革実行中なのではないだろうか。時間はかかるかもしれないが、根気よくやってほしいものである。

そして新オーナーは選手達にも厳しい条件を突きつけた上でノアを業界第二位に押し上げることを明言し、ほとんどの選手は団体に残った。これがノアにとって最後の巻土重来。この期を逃すと後がない。

団体は新体制となり、運営サイドと現場サイドは生き延びるのではなく生き抜くための覚悟を決めている。そうなると残るは彼らを支えるファンの存在。ここが一番難題かもしれない。

ノアには団体を長年支えてきた素晴らしいファンがいる。しかし、その一方で少し厄介なファンもいた。その影響か新規ファンはなかなか入りづらかった。そこをまず変えなければいけない。確かにどの団体にも厄介なファンはいる。

新日本で例えると実はどのユニットのファンにも色々と癖のある人達はいても、何かマナーを逸脱している印象が強いのがロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(ロス・インゴ)。ロス・インゴのファンの多くはそうじゃないが、一部のファンがしでかしたことで、イメージとしてロス・インゴってマナーが悪いと思われてしまう。それが先入観というものだ。ノアも同様である。多くの素晴らしいファンがいるのに、一部の心ないファンが足を引っ張っている。その現状を少しは改善するべきではないだろうか。私に言われたくないだろうが、それでもこれはきちんと指摘しなければいけない課題である。

それと私も含めてノアに対して色々意見をいう人達がいる。それに対して、全部に悪意に取らないことである。中には貴重だったり真っ当な意見だってあるはずだ。排他的思想に陥ると、少しでも指摘すると指摘主は敵に見なすことが多い。少なくとも私はノアに対して悪意などない。プロレス界全体を見てもノアには頑張ってほしいし、復活してほしい。それが心からの願いだ。なので一部のファンに言いたいのは、団体を愛しているなら、意見や指摘をいちいち揚げ足取りや重箱の隅を突っつく暇があるなら、もっと団体を応援するエネルギーに注力してほしい。そんな行為からは何も生まれない。生まれるのは不快感だけである。なので団体を愛する気持ちはきちんと正しい方向に有効活用していくことが必要である。そもそも私みたいな人間をディスっても何の意味もない。これは長年心の中に溜め込んでいた想いである。ようやくこの機会に言わせていただくことにした。

ノアは2000年代の一時期は新日本プロレスを越え、業界最王手となったことがあったが、日本テレビの中継終了や徐々に訪れた観客動員数減少、興業のマンネリ化、創設者・三沢の急逝といった負の連鎖が襲いかかり、団体の勢いは低下した。さらに内部分裂を起こし、選手離脱を発生した。経費削減のためにベテラン選手へのリストラも敢行。

新日本との業務提携も結果的にうまくいかなかった。新日本が投じた切り札である鈴木軍との対抗戦もそのドラスティックな展開にノアファンが不満を抱き、ノアは復活を果たすためのジャイアントキリングを果たせずにいた。

そして新体制となり、ノアはいよいよ覚悟を決めて動き出した。取捨選択して復活に向けて進む方舟大改革。時は平成から令和(れいわ)に変わる。年号をまたぐことになったが、方舟による起死回生のジャイアントキリングは成就なるか?

今こそノアに追い風を。
そんなノアの復活を私が愛するヒーローである団体創設者三沢光晴だって願っているはずである。

頑張れ!プロレスリング・ノア!