鈴木秀樹 ギリギリを狙う絶品料理手法〜「捻くれ者の生き抜き方」おすすめポイント10コ〜 | ジャスト日本のプロレス考察日誌

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恒例企画「プロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コ」シリーズ28回目です。このシリーズはライターの池田園子さんが以前、「旅とプロレス 小倉でしてきた活動10コ」という記事を書かれていまして、池田さんがこの記事の書き方の参考にしたのがはあちゅうさんの「旅で私がした10のことシリーズ」という記事。つまり、このシリーズはサンプリングのサンプリング。私がおすすめプロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コをご紹介したいと思います。

今回ご紹介するプロレス本はこちらです。


内容紹介

「マット界一の面倒臭い」と呼ばれる男が、リングの上で実行し続けていること。常識という名の同調圧力と争うことで、唯一無二の自分の居場所を作り続ける考え方とはなにか。「プロレスを自分のためにやるのは難しい」と語る著者のプロレス論と人生論。面倒臭い時代を生き抜く知恵と勇気を求める人へ贈る。

出版社からのコメント

「マット界一の面倒臭い」と呼ばれる男が、リングの上で考えていること。常識という名の同調圧力から、自由になる方法。 (帯より)

著者について 

鈴木秀樹

1980年2月28日生まれ、北海道北広島市出身。生まれつき右目が見えないというハンディを抱えていたが、小学生時代は柔道を学ぶ。中学時代にテレビで見ていたプロレス中継で武藤敬司に魅了され、プロレスの虜になる。専門学校卒業後、上京。東京・中野北郵便局に勤務。2004年よりU.W.F.スネークピットジャパンに通うようになり、恩師ビル・ロビンソンに出会う。キャッチ アズ キャッチ キャンを学び、2008年11月24日、アントニオ猪木率いるIGF愛知県体育館大会、金原弘光戦でデビュー。2014年よりフリーに転向。ゼロワンやレッスルワン、大日本プロレス、ノアなどを中心に活躍。191センチ、115キロ。 著書『ビル・ロビンソン伝 キャッチ アズ キャッチ キャン入門』(日貿出版社)




2020年10月に日貿出版社さんから発売されました鈴木秀樹選手の著書「捻くれ者の生き抜き方」を今回はご紹介します。


鈴木選手といえば、過去に自身のバックボーンであるキャッチ・アズ・キャッチ・キャンの技術感系の本やDVDを出されています。
 


それで今回は鈴木選手のプロレス論をテーマにした書籍ということで、これはマストで買わなければいけないと思い買いました。そして、このレビュー企画で取り上げることになりました。

まず日貿出版社さんには感謝したいです。鈴木選手は今のプロレス界において論客です。インタビューとかもめちゃくちゃ面白い。そんな彼のプロレス論を一冊にまとめて発売にこぎつけたという段階で個人的には大仕事を成就してくださったとリスペクトを贈りたいですね!

鈴木選手については以前、俺達のプロレスラーDXで取り上げたことがあります。


また、鈴木選手には2018年に東京・新宿で私が運営に携わったイベントにゲストとして登壇していただき、その節は本当にお世話になりました。あの時は本当に鈴木選手がゲストとして出てくださった御恩は今でも忘れません。

そんな個人的にも思い入れが深い鈴木選手のこの本をなるべくネタバレ少なめにプレゼンさせていただきます!よろしくお願いします!


1.偏屈者、捻くれ者と呼ばれる二代目人間風車・鈴木秀樹選手とは?

鈴木選手は、人間風車と呼ばれたイギリスのレジェンドレスラーであるビル・ロビンソンさんの愛弟子であり、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンのスタイルをバックボーンにしている技巧派レスラーです。

そのクセの強いプロレスから偏屈者、捻くれ者と呼ばれ「マット界一の面倒くさい」と形容されています。

また、様々な媒体でのインタビューや記事から分かるように弁が立ち、かなりプロレスIQが高く、インテリジェンスさも備えているレスラーでもあります。

個人的には日本プロレス界の帝王としてさまざまな団体でトップを取ってきた高山善廣選手を彷彿とさせるフリーランスの大物感が漂っているなと思います。本人は謙遜されるかもしれませんが、鈴木選手は二代目帝王かもしれません。二人とも体格にも恵まれ、トークが得意でしかも強い。高山選手はUWFインターで鍛えられ、鈴木選手はビル・ロビンソンに鍛えられました。

そんな鈴木選手のプロレス論がテーマのこの本は、実に面白いです!

またこの本は、本人や編集者サイドが強調したい部分に関しては大文字にて目立つようになっています。

そこらあたりはどのように考えで作られたのかはわかりませんが、個人的にはプロレス本というよりは、広告やビジネス関係で仕事のポイントやアドバイス、格言とかまとめた本とかありますよね。あんな感じの世界観をプロレス本という枠で出しているような気がしました。テーマはプロレスなんですけどね(笑)


2.鈴木秀樹選手のプロレス論と人生論がわかる!

この本は大きく二つの章で構成されています。ひとつは「偏屈者のプロレス論」。もうひとつは「正直者の人生論」。

その二つの章のなかであらゆる事柄について、明確に「スパッと」刀をふるように語っているという印象を受けました。

本当に鈴木選手はよく考えて生きているなと思いましたね。彼の武器はキャッチ・アズ・キャッチ・キャンで培った技術と全方位にアンテナを張り、物事を見つめて思考できる頭脳なのです。その頭脳から弾き出す言葉の数々は、かなり記憶に残るんです。要はプロレスは人に見られる商売。注目されなければ、何の意味もないわけですよ。自分が好きなことをやっているだけでは、人の心をつかめない。だから鈴木選手は自分の色を出しながら、人の心にフックをかけてこっちを振り向かせる言動を心掛けていると思います。これ、恐らく偶然ではなく意図的ですよ。 

もし物事に何か詰まったり、閉塞感を感じたりしていて、突破できるヒントがほしいという人にはこの本を勧めたいですね。 もう、パンチラインだらけです、この本は(笑)まるでラッパーの呂布カルマさんばりのパンチライン大魔王ぶりでしたよ!


3.鈴木秀樹選手にとって師匠ビル・ロビンソンとは?

鈴木選手にとって、師匠ビル・ロビンソンさんという存在はあまりにも大きいです。彼はプロレスラーになる前の社会人時代に宮戸優光さんが主宰する「UWFスネークピット」に通い、そこでコーチとして出逢ったのがロビンソンさんでした。自らをロビンソンさんのコピーレスラーと評するほど、ロビンソンさんのスタイルをリングで表現しています。
 
なぜロビンソンさんのスタイルをやることになったのか。それは周囲から「ロビンソンの後継者」と言われたので、ならばロビンソンさんのスタイルをやろうと思ったからだと言います。好きだというより、自分という商品を提示する手段としてバックボーンを持ち出したに過ぎないというのです。自分のことをここまで冷静に見ているからこそ、この思考にたどり着くのです。
  
ちなみにプロレスラーとして自分がやりたいのは、武藤敬司選手、スタイナー兄弟が好きなので、彼らのスタイルが理想だったそうです。

この本で鈴木選手はロビンソンさんとのエピソードを語っています。 

そしてロビンソンさんが亡くなったことが、参戦していたIGFから離れてさまざまな団体に視野を広げたフリーランスになるきっかけになったそうです。

ビル・ロビンソンのスタイルをもっと伝えていくため…。

そう考えるとロビンソンさんはものすごい財産を鈴木選手に与えていたのですね。


4.鈴木秀樹選手にとってアントニオ猪木さんとは?

鈴木選手はアントニオ猪木さんが作ったIGFでプロレスラーとしてデビューしています。そんな彼にとって猪木さんとはどんな存在だったのか?

猪木さんとのエピソードは必見。あと猪木さんとのスパーリングとかも興味深かったです。 

ちなみに鈴木選手は一度だけ試合でアドバイスをもらったことがあるそうです。その内容はこの本を読んで確認してください。私の感想は、「猪木さん最高」でした。このアドバイスに猪木イズムを感じてしまいましたね。



5.もうひとりの師匠ケンドー・カシン選手とは?

鈴木選手はロビンソンさんから闘い方や技術を教わりプロレスラーとなりましたが、もうひとつの師匠が問題児ケンドー・カシン選手。カシン選手からは闘い方や技術をリングで活用方法を教わったそうです。  

鈴木選手が時折見せる周囲からすると突拍子のないように見える行動や言動もカシン選手の影響のようです。    

鈴木選手のスタイルというのはどこか波乱がある。その波乱は、かつて波乱の問題児と呼ばれたカシン選手譲りなのかもしれませんね。

そして鈴木選手にとって、カシン選手とは?気になる答えはこの本にあります。



6.鈴木秀樹選手の新日本プロレス論が読める!

この本で鈴木選手は今の新日本プロレスについて語っています。これは面白かったです!

鈴木選手はまだ新日本参戦経験はないのですが、新日本参戦という噂は上がりますよね。恐らく古くからのプロレスファンからすると鈴木選手のスタイルがかつてのストロングスタイルに見えて、新日本レスラーと闘った時にかなり刺激的になるというのが待望論や噂が上がったりする理由ではないでしょうか。

ちなみに鈴木選手は中邑真輔選手と対戦したいと言っています。今はWWEの中邑選手ですが、かつては新日本のスーパースター。もし二人が闘ったどうなるのでしょうか。気になるところです。鈴木選手がWWEに行くという可能性はゼロではないでしょうが、やるなら日本のリングで見たいのですね!


7.鈴木秀樹選手流フリーランスとして生きる方法

鈴木選手は2008年にデビューして以来、特定の団体に所属したことがありません。ずっとフリーランスなんです。

そんな鈴木選手がどうやってフリーランスとして生き抜いたのかがこの本では書かれています。

本当によく考えて行動している。ずっと脳を回転させながら生きているなと感心しました。


プロレスに限らずあらゆる業種でフリーランスとして生きている皆さんにはこの本を勧めたいですね。


8.鈴木秀樹選手が考える同調圧力から自由になる方法とは?

鈴木選手は帯文でも本文でも同調圧力というわーを使っています。同調圧力とは、少数意見を持つ人がいる場合に、多数意見に合わせるよう暗黙のうちに強制することで、群れたがる日本人には特に多い傾向だそうです。

確かに学校や職場でも同調圧力は存在していると思います。

鈴木選手はこの本で同調圧力から自由になる方法を書かれています。彼にとって常識が同調圧力のようで、「こうでなければいけない」という固定観念みたいなものにとらえています。そこに対して「こんな考えもあっていいんだよ」というスタンスが鈴木選手です。

この本には学校や職場で同調圧力にあって苦しんでいる皆さんにはひとつの突破口になる言葉がならんでいると思います。 


9.鈴木秀樹選手が考える「良いレスラー、悪いレスラー」とは?

プロレス界の論客である鈴木選手。彼が考える「良いレスラー、悪いレスラー」とは?これは面白かったです!納得しました!  
  
これは是非読んでいただき確認してください。

本当にズバズバといいところを突いてきますよね、鈴木選手は。




10.鈴木秀樹選手のギリギリを狙う絶品料理手法

この本を読んで特に印象深く感じた鈴木選手の言葉が三つあります。ひとつじゃなくて三つ。それだけ鈴木選手の言葉は強烈なんです。

「僕のイメージではギリギリの線を越えないように試合をしているんです(中略)『どうなるんだろう?』と、思わせることを意図的にやっています」
「ギリギリを狙うというのが僕の最大の強みです。一見、終始グチャグチャの混沌とした状態に見えるけど、必ず最後に整合性を取る」
「僕の言う整合性はお客さんの満足度が高い試合ということではありません。『大会が成立したか』ということです。『成立』というのは主催者に対してしっかりお客さんが集まっていて『これで文句ないでしょう?』ということ」

この三つの文章が序盤で出てくるのです。私はこれらの文章を総体的に表現するなら「ギリギリを狙う絶品料理手法」だと思っています。

つまり鈴木選手は、「何が起こるのか分からない」というハラハラ感を与えることで、周囲は目を離さなくなり、最終的にはいい作品になる。

レストランでライブキッチンで料理を作っている場合とかあるじゃないですか。その調理工程で、この具材とこの具材を混ぜるのか、こんな調味料を使うのかと目を引かせるわけです。注目されなければ終わりの世界だということは鈴木選手よく分かっていますからね。

そして最終的にはライブキッチンから出されるのは、ものすごく美味しい絶品料理なわけです。その絶品料理のアクセントとしてギリギリがあるわけですね。
  
だから鈴木選手ってどこか創作料理人の考え方に近いのかもしれませんね。固定観念がないから、この具材とこの具材を混ぜたらダメという考えがない。

それと多分鈴木選手はギリギリを狙う段階から最終的な仕上げのビジョンが見えているんだと思うんです。だからこそこの調味手法がてきるわけです。


あまりにも凄い手法だと思いますが、これなかなか真似できません。プロレス界では鈴木みのる選手が鈴木秀樹選手の手法に似たこと(鈴木みのる選手の場合はそこにより多くの人たちを巻き込むという表現をする)をやっています。

結局、この本で読み終えて感じたのは、鈴木秀樹選手が実践しているギリギリを狙う絶品料理手法の意図、効果、背景などを文章表現でプレゼンしているのだなと感じました。序盤の段階でひとつの自分自身のプロレススタイルの結論を出していて、その理由をさまざまな角度から述べていたのかなと思います。

だからこの本って順序とか、起承転結とかあまり関係がなくて、突然別の話題になったり、終盤になって自身の子供時代の話になるんです。これも同調圧力から自由になるための方法の一環かもしれません。

鈴木選手によるギリギリを狙う絶品料理手法から生まれるプロレスから今後も目が離せません!

 

  

素晴らしいというより、凄い本だなと思いました。この本はチェックのほどよろしくお願いいたします!