今を生きてやる!~「葛西純自伝 CRAZY MONKEY」おすすめポイント10コ~ | ジャスト日本のプロレス考察日誌

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恒例企画「プロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コ」シリーズ40回目です。このシリーズはライターの池田園子さんが以前、「旅とプロレス 小倉でしてきた活動10コ」という記事を書かれていまして、池田さんがこの記事の書き方の参考にしたのがはあちゅうさんの「旅で私がした10のことシリーズ」という記事。つまり、このシリーズはサンプリングのサンプリング。私がおすすめプロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コをご紹介したいと思います。

 
この企画は単行本「インディペンデント・ブルース」発売以降、色々と試行錯誤してきて、ブログ運営における新しい基軸となったと思っています。今後もさまざまなプロレス本を読んで知識をインプットしてから、プレゼンという形でアウトプットしていきます。よろしくお願いします!
 
 
さて今回、皆さんにご紹介するプロレス本はこちらです。
 
 
 
 

内容紹介

神田伯山も絶賛!! 「生死を賭けた最狂のエンターテイナー 家族思いな一面も、カッコいいです! 」 葛西純は、プロレスラーのなかでも、ごく一部の選手しか足を踏み入れないデスマッチの世界で「カリスマ」と呼ばれている選手だ。 その20年以上のキャリアのなかで、さまざまな形式のデスマッチを行い、数々の伝説を打ち立ててきた。その激闘の歴史は、観客の脳裏と「マット界で最も傷だらけ」といわれる背中に刻まれている。 クレイジーモンキー【狂猿】の異名を持つ男はなぜ、自らの体に傷を刻み込みながら、闘い続けるのか。衝撃的自伝ストーリー。

著者について

■葛西純(かさい じゅん) 

プロレスリングFREEDOMS所属。1974年9月9日生まれ。血液型=AB型、身長=173.5cm、体重=91.5kg。1998年8月23日、大阪・鶴見緑地花博公園広場、vs谷口剛司でデビュー。得意技はパールハーバースプラッシュ、垂直落下式リバースタイガードライバー、スティミュレイション。

 
 
今回は2021年1月にblueprintさんから発売されたばかりのプロレスラー葛西純選手の自伝「CRAZY MONKEY」をご紹介させていただきます。
 
この本は発売されたばかりなので、今回はネタバレは少なめにおすすめポイントをプレゼンしていきたいと思います!またなるべく初心者からマニアまで分かりやすく伝えられるように書かせていただきます。よろしくお願いいたします!
 
 
★1.プロレスラー葛西純選手とは?
 
今回、登場する葛西選手とはどんなプロレスラーなのでしょうか?
 
葛西選手は、プロレスリングFREEDOMSに所属するプロレスラーです。元々は大日本プロレスでプロレスラーとしてデビューし、その後あらゆる団体を渡り歩き現在の所属団体でトップ選手として活躍しています。大日本時代から血まみれハードコア路線を突き進み、クレイジーモンキーという異名でデスマッチ戦線に一時代を築きました。またその喜怒哀楽が詰まったプロレスや人を惹き付けるオーラから、「デスマッチのカリスマ」と呼ばれています。
 
そんな葛西選手の自伝がこの本です。ちなみにこの本の帯文を書かれたのが講談師の神田伯山さんは「生死を賭けた最狂のエンターテイナー。家族思いな一面も、カッコいいです!」と綴っています。
 
実は私は葛西選手を一度取材したことがあります。本当に色々な質問にきちんと丁寧に答えてくれまして、その節は本当にありがとうございました!
 
 
 
 
★2.編集を担当した大谷弦さんの編集力と取材力
 
この「CRAZY MONKEY」は以前、「リアルサウンド ブック」の連載『狂猿』を再編集した一冊です。この本の編集を担当されたのがフリーライターの大谷弦さんが、葛西選手の生い立ちからプロレスデビュー、結婚、大けがによる休養、さらにコロナ禍における活動など、激動の人生を取材してまとめた作品です。
 
葛西選手のひとり語りという形で自伝がまとめられていますが、まず大谷さんの取材力が目を引きます。恐らくプロレスファン、葛西選手のファンが知りたいことをちゃんと聞きだしている印象を受けました。漏れがほぼないです。これは取材力の高さ、あと「葛西選手の自伝を読むとなるとこんな感じで書けばファンは喜んでくれるのではないだろうか」という俯瞰性を感じてしまいます。大谷さんは葛西選手を自然とブランディングしていて、その上で自伝に取り組まれていたのかもしれない。当たり前のことかもしれませんが、やはり基本は大事です。
 
また編集力に関しても凄くて。葛西選手のキャラクターを生かした文体で組み立ているんですよ。自身を「俺っち」と形容しながら、自然な形の語り口調が心地いいんです。だから葛西選手の自伝を大谷さんが担当されたのは大正解。本当に見事に目立たずに黒子になっています。
 
ちなみに大谷さんには以前、単行本「インディペンデント・ブルース」で、編集者である彩図社のGさんから「大谷さんから『REEDOMSの選手を取り上げてみますか、インディーについて書くのならマンモス佐々木選手を取り上げてみてはどうでしょうか?』と勧められたんです」という話を受けて、マンモス佐々木選手の取材を大谷さんからの紹介で実現したという経緯がありました。本当にその節は大谷さん、お世話になりました!
 
★3.プロレス少年から共感できるエピソードが満載
 
第一章の「少年時代」で葛西選手はプロレスファンになったきっかけやプロレスファンの原体験を述べているのですが、これはね、プロレスファンは共感するエピソードだらけだと思います。プロレスラーも業界に入る前はプロレスファン経由でなられる方が多いですからね。
 
ちなみに葛西選手は子供の時にいじめられてたそうですが、サッカー部の先輩が「葛西の姉ちゃんが怖いから、あまりいじめない方がいい」と止めたそうですが、近所でもヤバいといわれるほどのヤンキー。でも葛西選手はグレることなく普通に育ったそうです。姉は学生時代はヤンキーで、自分は大人になってクレイジーになったわけですね。
 
★4.サル・ザ・マンの真実
 
この本では葛西選手がプロレスラーになる前に「格闘技通信」の読者が主体のイラストコーナーの常連だった頃について言及しています。ペンネームは「サル・ザ・マン」。結構この「サル・ザ・マン」の絵は「格闘技通信」のイラストコーナーではほぼ毎回拝見していましたね。
 
ラジオ番組にハガキを投稿する素人を「ハガキ職人」といって、常連とかになるとレジェンドとか言われたりする世界なんです。これは「格闘技通信」のイラストコーナーに置換すると、「サル・ザ・マン」は確実にレジェンドだったと思います。
 
実はこの「サル・ザ・マン」としてイラストを投稿し続けることには理由がありました。葛西選手は高校卒業後に上京してプロの格闘家になるという目標がありました。それでもし、プロになったときに「あの”サル・ザ・マン”がデビューした」と話題になればいいなというセルフプロモーションだったのです。
 
これは驚きました。この真実を知れただけでも私はこの本を取り上げる価値があると思いました。
 
 
 
★5.新人時代にたった一度だけプロレスを辞めようと思ったときに救ってくれた先輩
 
第三章の「大日本プロレス入門」という項目で、葛西選手は新人時代たった一度だけプロレスを辞めようと思ったエピソードについて語っています。選手で車で移動中に事故を起こしてしまったわけです。しかも廃車。葛西選手は責任を取って辞めようと思ったそうです。
 
すると止めてくれたのが先輩レスラーがいました。それが現在、新日本プロレスで活躍する本間朋晃選手だったのです。
 
「こんなことでやめるな。これからつらいことあるんだから。こんなことでプロレスラーの道を諦めるんじゃねぇよ」と励ましてくれたのが葛西選手にとっては救いとなり、辞めることをなかったそうです。
 
本間選手、やっぱりいい人です。
 
★6.大日本プロレス退団
 
葛西選手は猿キャラで大日本プロレスのデスマッチ戦線で活躍しますが、周囲はコミカルなキャラを求めたようです。しかし、本人はゴリゴリのデスマッチファイター思考なんです。そこがどうやら団体サイドとの相違もあったようです。

個人的な感想ですが葛西選手は会場人気はあったんです。でもどうやら当時の現場サイドに関しては過小評価だったのではないでしょうか。

さらに葛西選手は試合でヒザに大怪我を追いました。また怪我の治療費もでない。当時の大日本は経営難で、給料も払えないほどだったそうです。

葛西選手はここでリセットして大日本退団を決めたそうです。

大日本での葛藤や怪我、退団について正直に綴られています。
 
 
★7.あまり語られていないZERO-ONE時代

葛西選手は大日本退団後に橋本真也さん率いるZERO-ONEに入団します。

このZERO-ONEでのエピソードはあまり語れている印象がないので貴重だと思います。本人にとってはそれはいい歴史なのか、黒歴史なのか、それはこの本を読んでチェックしていただければと思います。
 
 
★8.伊東竜二との伝説のデスマッチに向けての険しき道のり

フリーとなった葛西選手は大日本の若きエース伊東竜二選手とのデスマッチを実現させるために、大日本に参戦するようになります。

ここから実際に二人がデスマッチで一騎討ちするまでに実に5年近くかかっているんです。

葛西選手は病気や怪我で戦線離脱を繰り返し、伊東選手も腕に大怪我を負い欠場したりとなかなか実現しませんでした。

そして遂に実現した二人のデスマッチが2009年のプロレス大賞ベストバウトを受賞したのです。

この波乱の道のりが葛西選手の語りで読めるんですね。

本当に一本のロードムービーを見ているような感覚に陥りますよ。
 
 
★9.葛西選手が語るレスラーたち

この本で葛西選手はライバルや同僚、他団体で対戦した選手について語っています。

これもまた貴重な証言。特に飯塚高史さんやエル・デスペラード選手といった新日本勢について言及はなかなか面白いですよ。新日本ファンは気になる内容かもです。

また現在の葛西選手の心境も綴られています。コロナ禍におけるプロレスについても葛西選手は語っていますよ!
  
★10.今を生きてやる!
 
 かつて天龍源一郎さんが「LIVE FOR TODAY(今を生きる)」というスローガンを掲げていました。天龍が引退後に上映されたドキュメンタリー映画のタイトルも「LIVE FOR TODAY(今を生きる)」でした。実に天龍さんらしい日々是完全燃焼という生き方を現れたワードです。

そして葛西選手にも天龍さんのような生き方を感じてしまいます。彼は常々「生きるためにデスマッチをやっているんだ」と公言しています。

生と死の狭間に存在しているデスマッチの世界で生き抜くために狂い咲くカリスマ…それが葛西選手であり、そんな葛西選手の魅力が詰まった一冊が「CRAZY MONKEY」なのです。

これからも葛西選手はデスマッチの最前線で「今を生きてやる!」と息巻いて闘い続けるのです!

この本の帯文の裏面には葛西選手の素敵な一文が記載されています。

「世界中に『カサイ』コールで出迎えてくれるデスマッチファンがいる。こんなに幸せなことはない。明日、死んでも後悔がないと言い切れる」

葛西純選手の自伝「CRAZY MONKEY」、これは素晴らしい本です。皆さん、チェックのほどよろしくお願いいたします!