恒例企画「プロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コ」シリーズ41回目です。このシリーズはライターの池田園子さんが以前、「旅とプロレス 小倉でしてきた活動10コ」という記事を書かれていまして、池田さんがこの記事の書き方の参考にしたのがはあちゅうさんの「旅で私がした10のことシリーズ」という記事。つまり、このシリーズはサンプリングのサンプリング。私がおすすめプロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コをご紹介したいと思います。
内容紹介
喰った分だけデカくなった!
強くなった! !
日々、リング上で熱い闘いを見せるプロレスラーたち。
アグレッシブかつ魅せる試合を支えるのはタフな練習、そして “めし" だ。
屈強な身体づくりのための食事はもちろん、レスラーを目指していた頃の思い出の味、若手の頃に朝早くから作ったちゃんこ、地方巡業や海外遠征での忘れられない料理、仲間のレスラーたちと酌み交わした酒……。
ロマンと哀愁が漂う、プロレスラーの食事にまつわるさまざまなエピソードは、人気グルメ情報サイト「メシ通」内の人気連載『レスラーめし』でも大人気。豪華出演者のマル秘めしエピソードは、プロレスマニアからを熱烈な支持を得ている。
・小橋建太×「妻のポテトサラダ」
・中西学×「モンスターモーニング」
・鈴木みのる×「鶏の唐揚げ マヨネーズ和え」
・ブル中野×「紅しょうがごはん」
・前田日明×「ロシアンウォッカ」
・越中詩郎×「フィレオフィッシュ」
・長与千種×「タバスコめし」
・オカダ・カズチカ×「吉野家の牛丼」
・藤原喜明×「一番酒が強かったレスラー」
・長州力×「泡盛のコーヒー割り」
・ダンプ松本×「フライドチキン」
・武藤敬司×「高級ワイン」
・天龍源一郎×「天龍カクテル」
単行本では、13人のレジェンドレスラーの、連載に入りきらなかったエピソードを追加、加筆修正。さらに、新日本プロレスの重鎮・小林邦昭氏と獣神サンダー・ライガー選手の豪華対談『新日本プロレスの道場めし』も特別収録!
超人が食べためしから、プロレスラー、プロレスの歴史、物語が見えてくる!
マニア垂涎ドキュメント!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大坪/ケムタ
1972年佐賀県生まれ。広告代理店勤務後、1998年にフリーライターに転向。アイドル・プロレス・アダルトなどの原稿を中心に、記名無記名を問わず活動中。近年は都内トークライブハウスで年間50本以上のイベントを企画・構成(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
今回ご紹介するプロレス本は2019年にワニブックスさんから発売された大坪ケムタさんの「レスラーめし」です。
この本は面白い!「プロレス✕グルメ」という今までありそうでなかったタイプのプロレス本。例えばレシピ本ではなく、レスラーたちが愛したご飯から彼らのレスラー人生がわかるという作風もまたオリジナルだと思います。
これはプロレスだけではなくアイドルやAVなどさまざまなジャンルのエンターテイメントに精通していて、現在はライターでありながら、さまざまなトークイベントを仕掛けるイベンターであるケムタさんだからこそ書けた作品です。
「レスラーめし」の魅力を各章を追いながら、おおすめポイント10コを紹介しながらプレゼンしていきたいと思います。少しネタバレもあるかもしれませんがご理解のほどよろしくお願いいたします。
★1.はじめに
まずはこの本のまえがき。3ページに「レスラーめし」のコンセプトが、コンパクトに凝縮された一文となっています。
出だしがいいんですよ。色々と情景が浮かぶんです。それこそテレビ番組のナレーション原稿に合うような。このまえがきなんかを立木文彦さんに読ませたら最高のオープニングになるのではないかと思わせるほどのクオリティーなんです。
ケムタさんが終盤で「プロレスラーも人だな。プロレスラーって怪物だな」という書き方もまた、味わいがあって、人情があっていいんです。心がほっこりして、本編を読み進めることができるんです。
★2.小橋建太×「妻のポテトサラダ」
ここからは本編です。全員紹介するわけにはいきませんので、一部のレスラーについて紹介します。
まずは小橋さん。お母様が料理好きで、クリームシチューとか工夫して作ってくれたことが印象に残っているようです。ただ、小橋さんは片親で、お母様は昼も夜も働きながら、小橋さんを育てたのです。そんなお母様を見ているからこそ小橋さんは「これが食べたい」と言えなかった。新人時代の小橋さんが、お母様に親孝行したい、喜ばせたいって言っていたことがあって、色々と苦労があったのだろうなぁと察しましたが、やはり大変だったようです。
あと全日本プロレスのちゃんこ鍋メニューがわかったことも大きいですね。新日本プロレス系のちゃんこ鍋メニューは割りと知られているんですが、全日本プロレス系は新日本に比べると知られていないように思いますので。
そして小橋さん腎臓ガンとの闘いを支えた奥様について後半は語っています。
やっぱり、小橋さんは優しいなぁ。なんだか心が暖まった私なのでした。
★3.鈴木みのる×「鶏の唐揚げ マヨネーズ和え」
次に紹介するのは、鈴木みのる選手の回。週刊プロレスの選手名鑑で鈴木選手の好きな食べ物の欄には必ず「鶏の唐揚げ マヨネーズ和え」と書かれています。その理由について冒頭でわかります。長年の疑問はこの本で解決しました!
あとパンクラス旗揚げ前に初期にレフェリーをされていたトレーナーの廣戸聡一が鈴木選手に語った「新しいことをするときにどうやったら世間に伝わるのか?ひと目見て『あれ?違うぞ』ってなったら誰もが見てくれる。だけど見た目で何も変わらなかったらそれは新しいものとして受け入れてくれない。通りすがる人は見た瞬間に良いか悪いか全員判断してんだよ」は世の中の仕組みが分かる名言だなと思いました。さすが廣戸さん!
また鈴木選手が「いろんなトレーニングをしてきたんですけど、食事はトレーニングと同じくらい重要。だからトレーニングの中にもオフがあるように、食にもオフがある」とかは印象に残りました。
最後に鈴木選手が頸髄損傷で長期欠場中の盟友・高山善廣選手といつか行きつけの店に行きたいという言葉には胸を打たれました。
鈴木選手、やっぱりいい人だなぁ。そして強いなぁ。そう感じた回でした。
★4. ブル中野×「紅しょうがごはん」
ここで女子プロレス界のレジェンドのひとりブル中野さんが登場。プロレスラーの食事となるとイメージするのは、練習後に道場でみんなでちゃんこ鍋を食べるシーン。だがブルさんが在籍していた全日本女子プロレスは派閥があり、みんなで食べることはなかったそうです。
お米は支給されるので、おかずは自分たちで用意。主に先輩たちからもらった差し入れの食べ残しをおかずにして食べていたようです。ブルさん曰く「全女で今までいじめられずにトップに立った人はいない」とのこと。かなり壮絶な世界です、全日本女子プロレスは。
あとブルさんがレスラー引退後に壮絶なダイエットもされていて、本当に波乱万丈ですよね。
ブルさん、素敵な女性だなぁ。でもそれだけでは収まらない壮絶な人生と誰にも真似できないプロレスラー魂があることがよく分かる回でした。
★5.前田日明×「ロシアンウォッカ」
今やチャンネル登録10万人以上の人気YouTuberとして活躍している前田日明さん。前田さんが食にこだわりがあることはYouTubeを見ればわかります。
さすが前田さん、少年時代から新人時代からの数々のエピソードを披露。ヤングライオンの時にあまりも多すぎて食べられなかった肉をアントニオ猪木さんが当時飼っていたセントバーナードに食べさせたとか(笑)
ちなみに前田さんが1991年のリングス旗揚げ時に人材発掘のためにロシアに行った際に、さまざまなパーティーに参加して延々とウォッカを飲まされたそうです。前田さんとロシアとの関係はお酒から生まれたものかもしれませんね!
前田さん、やっぱり豪快だなぁ。でも私は「好きだなぁ、アキラ兄さんは!」と再確認できた回でした。
★6.越中詩郎×「フィレオフィッシュ」
★7.オカダ・カズチカ×「吉野家の牛丼」
レジェンドレスラーが次々と登場するこの本ですが、ここで現役レスラーが「レスラーめし」に登場します。
新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手は、元々闘龍門出身。新人時代はメキシコでレスラー生活を送っていました。その苦労話を読むと彼はエリートではなく雑草なんだなと感じます。
アメリカ修業時代に1日1万キロカロリー摂取を目指して肉体改造に励んでいたなんて、もはやフードファイターレベル!
あとオカダ選手の食生活を聞くとかなり庶民派だなと思いました。
オカダ選手、好青年だよなぁ。それでもリング上では黄金色に輝くスーパースターになってしまうわけなんだよなぁ。
★8.武藤敬司×「高級ワイン」
現在はプロレスリングノアの最前線で活躍するリビング・レジェンド武藤敬司選手の回で印象に残ったのは、坂口征二さんとのエピソード。坂口さんの家で高級ワインを全部飲んでしまい、唇が紫になってしまったそうです(笑)
そういえば武藤選手自身は料理は作らないんですけど、周辺は作る方がいるんですよ。橋本真也さんは、あまりも料理に凝りすぎることで有名。豆腐も手作りだったりとか。
あとアメリカやプエルトリコ遠征では、一緒にサーキットを回ったケンドー・ナガサキさん手作り弁当を持って転戦していたそうです。ナガサキさんはめちゃくちゃ料理がうまかったようです。
全日本プロレスやWRESTLE-1時代では元付き人の浜良太の料理が絶品だったそうです。
武藤さん、やっぱり面白いなぁ。そして「この人は人たらしなのだなぁ」と感じた回でした。
★9.天龍源一郎×「天龍カクテル」
本編最後に登場するのは、ミスタープロレス天龍源一郎さん。プロレス界屈指の酒豪である天龍さんは角界時代、全日本プロレス時代、アメリカ修業時代などあらゆる角度からのグルメエピソードを披露。
そして有名な天龍カクテルについて、天龍さん自身が語っています。ウィスキー、ビール、焼酎や日本酒といったあらゆるお酒を全部アイスペースに混ぜた天龍特製のカクテルをそのままみんなで回し飲みするのが、天龍さんの飲み会名物でした。
天龍さん、生き方に深みがあるなぁ。そして腹一杯プロレスをして引退した天龍さんには1日で長く生きてほしいなぁと私は願いました。
★10.「孤独のグルメ」+「プロレス・スーパースター列伝」の世界観=心がほっこりする超人たちの生き様!
私は「レスラーめし」は、実際に読み進めていくと、「孤独のグルメ」のような緩くて心がほっこりする味わいに、「プロレス・スーパースター列伝」のレスラーならではの規格外の武勇伝と豪快なエピソードが見事に融合した唯一無二のプロレス本だなと感じました。
ブル中野さんのエピソードはかなり壮絶なのに、この本にかかるとどこか心が温もる。この本を読むとさまざまな具材をひとつの鍋にまとめるちゃんこ鍋を食べているかのような気分になる。
その味付けとしてこの本の著者であるケムタさんの実力と作風にあります。レスラーの武勇伝を「心をほっこり」させる形で読み物として面白い作品となったのはケムタさんの力だと思います。
「この話を聞いてほしい」「このネタを入れてくるのか」というプロレスマニアの心を掴み、きちんと取材対象の魅力を引き出す優秀なインタビュアーとしてのスキルに、心がほっこりする人情味溢れる文体だからこそ、この本が生まれたと思います。
超人たちのレスラー人生と生き様が綴られ、彼らの食生活にも迫った「プロレス✕グルメ」という新風を吹き込んだ大坪ケムタさんの「レスラーめし」、本当に面白い本です!ぜひ皆さんご一読していただければありがたいです!よろしくお願いいたします!