ダイチ君と別れたこの日の夜に、アヤさんともお別れ。
「南米に行ったら、連絡してね♪」
と言われ、
「はい、絶対、連絡します。」
と僕は言ったのだが、
「絶対、連絡してこないでしょ!」
って返された。
図星!
ダイチ君もいなくなり、アヤさんもいなくなった翌日の事。
この日の夜には、トウル君もいなくなる。
「最後にロンドンの街を歩きたい。」
と言ったトウル君のリクエストで、2人でロンドンの街を歩く事にした。
カメラのレンズを直したは良いもの、全く使っていない。
充電なんて、1週間以上もしてない。
この日も、カメラに触れる事も無く、携帯と財布、必要最低限の荷物で街を歩いた。
そんな僕とは真逆。
「うわー!まだ、ロンドンにいたいなー!」
と言いながら、カメラを構えるトウル君。
そして、その勢いで僕達は大英博物館へと行った。
トウル君にとっては、1回目の大英博物館なのだが、僕にとっては3回目。
見学はトウル君に合わせようと思った。
が、トウル君も博物館系は興味がない模様で、「もう、いいや。」と言い、30分位で外に出た。
博物館系は興味が無いのだけど「有名な物はとりあえず見る。」と言った、謎の使命感をトウル君も持っている様でして、2人でナショナルギャラリーに行った。
トウル君は(ゴッホのひまわり)を何枚か撮っていた。
僕は2回目のナショナルギャラリーだったので、トイレに行った。
僅か15分位でナショナルギャラリーを後にし、街歩きを再開。
しばらく、2人で街中を歩いていると(ジャパンセンター)と言った、店の看板が見えてきた。
異国の地、ロンドンにあるそれは、まさしく日本のスーパー。
ジャパンセンターへ行けば、日本のお菓子や調味料、何もかもが揃うと言っても過言では無い。
ONE PIECEや週刊誌、地球の歩き方まで置いちゃってる。
僕はジャパンセンターへは1回行っていた。
その時は、700円くらいの醤油を買った。
今回、2回目でしたが、大英博物館やナショナルギャラリーへ入るよりはワクワクしていた。
店内までのエスカレーターを上る時に、フワッと香るイトーヨーカドーの惣菜コーナーの匂い。
あの匂いは、日本人じゃないと分からないのかもしれないけれど、
もし、香水の種類で(イトーヨーカドーの惣菜コーナー)ってのがあったら買おうと思う。
「いらっしゃいませー!」
「ありがとうございました!」
などの日本語が店内を行き交う中
僕とトウル君は「たけー!たけー!」と連呼。
日本で買う時の約3倍はする。
そんな僕達の声を聞いていたのか?
近くにいた1人のおばあちゃんに声をかけられた。
日本人だった。
赤いニット帽に、眼鏡。
見た目は60歳前後。
右手には、僕の大好物のあんぱん。
「高いわよねー。」とおばあちゃん。
「高いです。」的な会話のキャッチボールを数回した。
話を聞く所、海外の人と結婚し、ロンドンに移り住んで23年との事。
年齢は見た目とは裏腹、77歳でした。
そして、若い頃は僕達と同じ様に旅をしていたと言う。
一通り世間話をしたおばあちゃんは、日本語で書かれた無料の新聞(フリーペーパー)を僕達に2部も渡してきた。
「これ、読みなさい。」って。
正直な所、その新聞を読むか?
と聞かれたら読まないのだけれど、断りきれない僕達は2部の新聞を受け取り、そのままエスカレーターを下った。
すると、おばあちゃんが付いてきた。
右手に持っていたあんぱんを、元の場所へ戻してまで。
エスカレーターを下りながら
「何も買わないの?何か買ってあげるわよ。」
と僕達に言ってきた。
(いやー…さすがにそれは申し訳ないです。)
と僕達は遠慮したのだが、おばあちゃんの押しで、再びエスカレーターを上がった。
カツ丼や親子丼、お寿司などが陳列している棚の前で「何か好きな物を選びなさい。」
と僕達に言うおばあちゃん。
しかし、値段を見た僕達は、全く手が出せなかった。
「さすがに悪いでしょ…」とトウル君。
「買ってあげるわよ。」とは言われたが、本当に手が出せない。
日本食、高すぎる。
「どうする?どうする?」
と、トウル君と悩んでいた所。
「ちょっと、別の場所でゆっくりしましょう。」
とおばあちゃんが言った。
再びエスカレーターを下り、ジャパンセンターを出て、おばあちゃんの後を付いて行く。
そして、歩く事約15分。
着いたのは、日本食レストラン。
先程、ジャパンセンターのお惣菜で手が出せなかった僕とトウル君。
レストランなんて、それ以上に高い!
メニューを渡されても、僕達は遠慮した。
ただでさえ、物価の高いロンドン。
それに加え、日本食ときたら…
しばらくメニューを眺めていると、おばあちゃんが可愛いく一言。
「じゃあ、私が決めちゃう!」
そう言って、おばあちゃんはオススメの料理を注文した。
韓国人が経営しているらしく、キムチとビビンバが美味しいとの事。
更には焼うどんと、味噌汁。
もう、十分だと遠慮したのだが…
お寿司。
そしてデザートの抹茶アイスまで…
どれも本当に美味しかったです!
まさか、抹茶アイスまで食べれるとは…
カンボジア以来、日本食を食べない縛りで来ていましたが、この日はそんな事言ってられません。
約6ヶ月振りの日本食。
やっぱり、日本の料理が世界で1番美味しいと思いました。
本当に、あの時はありがとうございましたm(_ _)m
おばあちゃんと、色々な話をした。
おばあちゃんが、今まで訪れた国
旦那さんとの出会い。
おばあちゃんの息子や孫の事。
日本の素晴らしさ。
ほんの数時間と短い時間でしたが、おばあちゃんと出逢えて良かったです。
おばあちゃんは最後の最後まで、僕達を気にしてくれて「もう、大丈夫です。」と言っているのに、別れ際にお菓子まで買ってくれましたm(_ _)m
マシュマロに、日本の醤油煎餅。
本当にありがとうございますm(_ _)m
最後、おばあちゃんと握手をして別れた。
小さくて細い手は、どこか暖かくて、いつまでも明るくて、元気で、可愛いおばあちゃんでいてほしいと思った。
次、会った時は恩返しがしたい。
夜になり、トウル君ともお別れした。
「南米辺りで会おう」って。
見送る方って、結構辛いんですよ。
1人残され、部屋に戻る。
27歳と言う、年が終わっていた。
いい終わり方だった。
僕も、おばあちゃんみたいな歳の取り方をしたい。
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