シング・ストリート 未来へのうた(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

シング・ストリート 未来へのうた(ネタバレ)

※この映画に関しては、行列のできるラブホテルさんチルさんはちごろうさんの感想などを読むと良いですぞ。
※今回の記事は、「小さな恋のメロディ」のネタバレに触れているけど、良い作品なので観ておくと良いんじゃないかな。
※ムービーウォッチメンのリンクなどを追加しました(8/7)


<ザ・どうでも良い前置き>

昨年公開された「はじまりのうた」は、そりゃあ良い作品でしたけれども。基本的にアクション映画を好む僕からすれば、音楽映画を得意とするジョン・カーニー監督は“追いたいタイプ”ではなくて。遊星からの物体Xファンタスティック・フォーのベンがストリートで迎え撃つ→Thing ストリート!Σ(°д°;)」といった内容だったらともかく、また音楽映画っぽい本作はあまり観る気はなかったんですが、しかし。愛聴するラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になっちゃったというね。

ただ、そうなってみれば、「はじまりのうた」の出来を考えると確実に良い映画っぽいし、都内の上映館の1つである渋谷のシネクイント本作の公開を最後に閉館してしまうのもあって、微妙に乗り気になってきて。他館前売り券システムなどにも頼らず、あえて1800円支払って、鑑賞してきました。


鑑賞した日はレディスデー。劇場はスゲー混んでましたよ。
レディスデー

シネクイントのロビーには、記事の切り抜きや本国版ポスターなど、いろいろ展示されてまして。
展示がいろいろ

この映画館、パンフが読めるだけでなく…。
パンフも読める!

サントラが聴けるのもありがたかったんだよなぁ。
サントラが聴ける!

場面写真なども飾られてたりしてね。
場面写真

今までの感謝の気持ちを込めて、1800円でチケットを購入。「ワールズ・エンド」の時はご迷惑をおかけしました… ('A`)
1800円払いました

ビールとお菓子も買っちゃったのでした。
ビールとお菓子を買いました










シング・ストリート 未来へのうた

シング・ストリート 未来へのうた

原題:Sing Street
2015/アイルランド、イギリス、アメリカ 上映時間106分
監督・製作・原案・脚本・歌曲:ジョン・カーニー
製作:アンソニー・ブレグマン、マルティナ・ニランド
製作総指揮:ケビン・フレイクス、ラジ・シン、ボブ・ワインスタイン、ハーベイ・ワインスタイン
原案:サイモン・カーモディ
撮影:ヤーロン・オーバック
美術:アラン・マクドナルド
衣装:ティツィアーナ・コルビシエリ
編集:アンドリュー・マーカス、ジュリアン・ウルリクス
歌曲:ゲイリー・クラーク
音楽監修:ベッキー・ベンサム
主題歌:アダム・レビーン
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボーイントン、マリア・ドイル・ケネディ、エイダン・ギレン、ジャック・レイナー、ケリー・ソーントン
パンフレット:★★★★★(1200円/「うたコード」付きのデラックス版を購入。デカいので読みにくいけど、歌詞の邦訳まで載っているほど情報量ギッシリで超オススメ)
(あらすじ)
大不況にあえぐ85年のアイルランド、ダブリン。14歳の少年コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、父親が失業したために荒れた公立校に転校させられてしまう。さらに家では両親のケンカが絶えず、家庭は崩壊の危機に陥っていた。最悪な日々を送るコナーにとって唯一の楽しみは、音楽マニアの兄と一緒に隣国ロンドンのミュージックビデオをテレビで見ること。そんなある日、街で見かけた少女ラフィナ(ルーシー・ボーイントン)の大人びた魅力に心を奪われたコナーは、自分のバンドのPVに出演しないかとラフィナを誘ってしまう。慌ててバンドを結成したコナーは、ロンドンの音楽シーンを驚かせるPVを作るべく猛特訓を開始するが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




85点


素敵な音楽映画でしたな… ( ;∀;) イイエイガダナー


思わずデラックス版のパンフとサントラを買っちゃうほどでしたよ。
パンフとサントラ


まず、身も蓋もなく乱暴にお話を書いておくと、1985年のアイルランド・ダブリンにて、父親が失業して家庭が財政難に陥ったため、主人公のコナーは荒れた公立高校「シング・ストリート」に転校するハメになりまして。いじめっ子に目をつけられて殴られるわ、校長にも厳しくされるわと、踏んだり蹴ったりだったんですが、しかし。学校の対面にあるアパート(実は養護施設)の前に立つ”自称モデル”の年上少女ラフィーナに一目惚れすると、「僕のバンドのMVに出ない?(o^-')b ドウ?」とぎこちなく口説いて電話番号をゲット。MVどころかバンドすらやっていなかったので、事情通の“校内コンサルタント”ダーレンと手を組んで、急いで仲間を集めまして。あらゆる楽器が演奏できる&作曲もできる万能野郎エイモンなどの力を借りて、何とか初のMV「リドル・オブ・ザ・モデル(モデルの謎)」を作り上げるのです。


このMVでは省かれていますが、ラストに映る”オモチャの牙”がまた愉快だったりしてね。




最初こそ、巷によくいる「楽器ができないからとりあえずボーカル志望」だったコナーでしたが、「大学を中退して引きこもっている兄貴ブレンダンのロック指南を受ける→教えてもらったアーティストにかぶれる→自分の体験や感情を歌詞にこめて曲を作る→ラフィーナを起用してMVを作る」なんてことを繰り返しているうちに、より音楽にのめり込むとともにスキルもメキメキ上達! 両親の別居決定やラフィーナのモデルデビューの挫折、ブレンダンのごもっともな説教などにションボリしながらも、実は虐待されてたいじめっ子も仲間に取り込むと、最後は文化祭っぽい舞台でライブ→校長に反抗した歌を披露して大成功! そのままコナーはラフィーナとともに学校を出ると、兄貴に港まで送ってもらって、祖父のボートでロンドンへ旅立つという「小さな恋のメロディ」っぽい終わり方なのでした (´∀`) メデタシメデタシ


ラスト、少年と少女が手を携えて旅立つ映画って、大体良い感じな気がしますな(何の裏付けもない文章)。
2人で旅立て!


もうね、褒めるところまみれというか、褒めるところしかないというか。ナイーブな少年が音楽を通じて成長する物語であり、社会的に不遇な立場にある少年少女たちがポジティブにあがく話でもあって。ジョン・カーニー監督の前作もそうでしたが、音楽のプラスの面を積極的に描いていて、それがスゲー心地良い感じ。特に、コナーが兄貴ブランドンに新しいミュージシャンを教えられるとすぐそのファッションを真似る展開は最高で(かぶれるってとても大事)、最後の方はそうなるのがわかっていながらも笑っちゃいましたね。あと、バンドの各キャラの説明台詞などはないのに、さりげない演出で「コイツはこういう性格なんだろうな」というのがなんとなくわかるのがスゴいなぁと。監督の思惑通り、「シング・ストリート」のメンバーは全員好きになっちゃいましたよ (´∀`) ウフフ


役者のチョイスも良かった! すっかり彼らに好感を抱いちゃったというね。
俺たちがシング・ストリートだッ!


それと、劇中でコナーたちが作る音楽やMVのクオリティ、そしてその見せ方が絶妙でした。最初の「リドル・オブ・ザ・モデル(モデルの謎)」の「初心者が頑張って作ったみたいだけど、結構センスもあって面白い」というバランスが見事で、その後の曲のクオリティやバンドのスキルが上がっていくのも素晴らしい。さらにコナーとエイモンが曲を作り始めるといつの間にかみんなで演奏しているシーンになったりとか、そういう見せ方も上手くて。ちくしょう、ジョン・カーニー監督、センスいいなぁと思ったり。


「UP」が出来る場面とか100点でしたな ( ;Д;) イイシーンダナー
曲作りの楽しさ表現


それと、ジャック・レイナー演じる兄貴ブレンダンもスゲー良かった。クリス・ヘムズワースっぽいセス・ローゲンってムードで弟のコナーを愉快に導いてくれて、「あんなお兄さんがほしかった… (ノД`)」と思わされるほどに魅力的なのです(監督のお兄さん(故人)がモデルとのこと…)。で、彼が弟に「(やり直すって)今さら?┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」と生意気な口を叩かれて、「オレが切り開いてきたんだ!ヽ(`Д´)ノ」とキレる場面はしみじみしましてね…。これ、年が離れた兄や姉がいる人なら「あるある」なシーンではないでしょうか。何はともあれ、僕には姉が2人いるんですが、本作に出てきた80'sUKロックの数々がわかったのは「長姉に付き合ってMTVを観ていたから」だったりするだけに、ブレンダンとコナーの兄弟描写には、なんとなく懐かしさを覚えた次第(って、あんなに仲良くありませんが)。


ジャック・レイナー、今後ブレイクする気がします。
兄貴ブレンダン


その他、「久しぶりにザ・キュアーのアルバムを聴きたくなった」とか「『HAPPY SAD』というフレーズを聴いて、高橋芳朗さんの本作のレビューが聴きたくなった」とか「ああいう場面でバラードはちょっと… (´・ω・`)」とか「ラストの”弟を見送るブレンダン”を『幸せそう』と感じた人と、『可哀想』と思った人がいるのが面白い(僕は前者)」とか思うところはあるんですけど、長くなるので割愛!ヽ(`Д´)ノ 些末なところを挙げると、いじめっ子を仲間に入れるくだりは泣いたし、校長を叩く歌を披露する場面は笑ったけど、どちらも中途半端感が否めなかったというか、主人公が乗り越えるべき障害はどちらかで良かった気がしましたが、まぁ、どうでも良いザンス。とにかく素敵な青春音楽映画だったので多くの人に観てほしいし、サントラも即購入してほしい強い気持ち、強い愛。そして、都内在住の方は、できれば本作で閉館となるシネクイントで観てみてくださいな。おしまい。

宇多丸師匠の思い入れたっぷりの時評がアップされているので、ぜひ読んで!




昨年観たジョン・カーニー監督作。僕の感想はこんな感じ



素敵なサントラ。輸入盤デジタル盤アナログ盤もあります。



ジョン・カーニー監督のデビュー作。ちくしょう、観ようかしらん。