「中立という立場はない」 | カノミの部屋

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 バスクのこと、野上弥生子のことも

 アメリカを訪問して、オバマ大統領と議会に「アメリカのかかわる戦争に、地球上のどこにでも、日本は参戦します」という意味のことを約束して、大歓迎を受けて帰ってきた安倍首相が、つぎにやることは、戦争に参加できるよう、憲法を変えなければならない。そのために、あらゆることをやる決意だ。

 もうすでに、マスコミには「改憲の立場、護憲の立場を公平にせよ」との命令をつたえてある。最大のメディアであるNHKには、安倍総理の思想的お友達が、トップに立つ体制がほぼ整っている。そのことは、テレビを見ていればわかる。マスコミは「護憲の立場」を際立たせる立場の発言や、行動の報道を伝えないか、ひかえめに、すでにしている。

 七〇年間、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と記された憲法第9条のもと、戦争をしないで、戦死者を一人も出すことなく、相手を殺すこともなく、安心して過ごしてきた。この憲法は、一五年も続いた戦争の、戦地での兵士の苦難、空襲でのすべての国民の犠牲のあと、もたらされた宝物だった。いろいろな思想を持つ人たち、左翼、右翼、中道、その誰もが、「平和」がありがたいと思った。自分が死ぬのも子どもが死ぬのも、殺せと命令されるのも「もうたくさんだ」と、だれしも思った。平和、戦争をしないことは、こんなにも安心なものかと、もう空襲がない空を見て思った。それを知っているのは、高齢者だ。

 安倍首相とその周辺の人たちは、憲法九条を変えて戦争ができるようにしようという立場をとっている。それに反対して、戦争を禁じている憲法を護ろうという人たちが「九条の会」などをつくって「護憲」の立場をとっている。いま、この二つの立場があり、中立という立場というものはない。

 最近、自治体が護憲団体の後援を拒否している例がたくさんある。

 たとえば練馬区の教育委員会は、空襲で家族をすべて亡くした海老名香葉子さんの体験を描くアニメの上映会の後援を断った。「ねりま九条の会」が上映会の共催に加わっていることを口実にしているが、これは練馬区の教育委員会が「改憲」の立場だということを示している。なぜなら「中立」という立場は今回の場合ありえないからだ。もちろん、教育委員会にはなんの考えもなく、いまの政権の喜ぶ立場を取るという最悪の態度を示したに過ぎないのかもしれないが。

 同じような動きを取った自治体や教育委員会は、千葉市、長野県千曲市、千曲市教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会、鳥取市、鳥取教育委員会、栃木県佐野市、東京都調布市。(東京新聞〈夕〉2015・5・1)

 「改憲」の側には権力があり、権力におもねるものがあり、圧倒的多数の手段を持つ。一方、「護憲」の側は、かなりの数の一般市民で、おまけに高齢者が多い。

平和のなかで育った、そしてその平和がどこからきたか、意味も知らない若い人たちに、学んでもらう、考えてもらう、真剣に、一生懸命に考えて自分の「立場」を選んでもらいたい。戦争を選べば戦場に行くのは若者であり、子どもであり、これから生まれる子どもたちなのだから。どちらが幸福なのか、どちらが本当の意味で、日本と世界に貢献できるのか、考えてほしい。