水の常識非常識 038

個々の温泉や名水の他に、心と身体にエネルギー情報をいただくた
めの水の新常識、その常識を阻害してしまう世俗の非常識について
も、毎月お伝えしています。
今回は、引退を（一応）表明した宮崎駿監督へのオマージュの意
味を籠めて、最高傑作『千と千尋の神隠し』の“水と温泉”につい
て整理しておきますね。

（本文)

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千、苦団子を食べる
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前回のブログで記した、千（千尋）が身を挺してヘドロ
状態のオクサレさまの世話（薬湯で汚れを流し、取り込
まれたゴミを見つけて湯屋の全員で引っ張り出す）をし
たら、それはオクサレさまではなく名のある河の神で、
本来の巨大な白蛇の姿に戻り、天空に飛び去っていくと
いう設定は、有名な仏教説話が元になっている。

光明（こうみょう）皇后の名をご存じだと思う。
奈良時代の聖武天皇の后（きさき）で、貧しい人々に施
しをする施設の「悲田院」や、医療施設である「施薬
院」を置き、風呂を施す施浴も行った。天皇に東大寺
や、全国の国分寺・国分尼寺の創建を勧め実現させるな
ど仏教弘流に絶大な功績があった。

そのため次のような伝説が生まれ、広く流布した。

皇后自身が開基となった奈良・法華寺の施浴において千
人の垢を洗い流すことを発願、実施した。最後の千人目
に現れたのは、全身に血膿をもつ癩病の患者だった。し
かし、皇后は厭うことなくその背中を流し、さらに患者
に乞われるまま膿まで吸い出した。その瞬間、浴室に紫
雲がたなびき、患者は黄金の光をはなち、「我は阿閦如
来（あしゅくにょらい）なり」と声を発して消え去った
という――。

わが身の犠牲も厭（いと）わず他人のために尽くすとい
う仏教の「忘己利他（もうこりた）」の教えが貫かれて
いる。

ちなみに阿閦如来とは、お釈迦さまが悟りを求めて修行
中にしばしば悪魔の誘惑を受けたが、これに屈せず修行
を続けたという伝説に由来するもので、煩悩に屈しない
堅固な意志を表す仏さま。

助けた相手が実は神仏だったという設定は多くの説話に
見られるが、『千と千尋の神隠し』もその古典的な手法
を踏襲している。

そして助けた相手から与えられるお礼、ご褒美のモノや
知恵が必ず存在し、それによってやがて主人公の道が開
ける・窮地を脱するといった“果報の法則”も物語のお
約束事。

千尋（千）の手には河の神から与えられた「苦団子（に
がだんご）」がのっていた。

https://www.google.co.jp/search?q=%E5%8D%83%E3%81%A8%E5%8D%83%E5%B0%8B%E3%81%AE%E7%A5%9E%E9%9A%A0%E3%81%97+%E7%94%BB%E5%83%8F%E9%9B%86&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=13dGUt6rItGRkgWJ64GgCg&ved=0CDwQsAQ&biw=1366&bih=643&dpr=1#imgdii=_

そして物語はこの苦団子が大きな役割を果たす展開とな
る。

河の神が去って一段落した千尋とリンが従業員の寝起き
する部屋に引き上げてからのシーンが心にのこる。

雨で下の平原は大海原になっている。冠水したレールの
上を円い波紋を描きながら電車が進むそのはるか向こう
に街灯りが見える。空からは満月の光があまねく下界を
照らす。月光を宿してかすかに揺れる水面が永遠の揺ら
ぎのように美しい。

仏教ではしばしば月がこの宇宙を貫く真理の象徴に譬
（たと）えられるのだが、その月の光を浴びて、リンが
（かっぱらってきた）大きな饅頭を千尋も食べながら、
河の神から与えられた苦団子の匂いをそっとかぎ、一口
かじってみる。あまりの苦さにあわてて饅頭をほおばり
飲み下す。

　　　　　　　　　　　　　　出典：同上

こうして苦団子をわが身に取り込んだ千尋は、これまで
に想いもしない大きな力を発揮していくのだった――。

今回も読んでいただき洵にありがとうございました。
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水の常識 非常識 038 千と千尋の神隠し ⑥ 千、苦団子を食べる

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