(※以下の文章・写真はすべてご本人の許可を得て掲載。この記事、長文につき注意!)


先日12/23の本番に出演するため、その前日に富山県高岡市に入りリハーサルに参加。


ソリストは4人だが、僕が行った時は僕を入れて3人しかおらず、

もう一人のソリストは中学校の先生をされていて、仕事の関係で少し遅れるという。

そしてしばらくしてその方は現れた。


ソプラノの西野真理さん。


僕は初対面なのですぐにご挨拶をして、名刺を交換した。

西野さんの名刺を見て僕は一瞬、目が点になった。


名刺には名前の上にだいたい「肩書き」が書いてある。

例えば僕の場合は「声楽家」「バリトン歌手」「二期会会員」くらいしか書いていないが、

西野さんの名刺には肩書きが4つ。

それは、


・バリトン系ソプラノ

・SingerSongTalker

・エッセイスト

・突撃ボランティアシンガー


と、他ではなかなかお見かけしない肩書きが書いてあったからだ。

そしてまたよく見ると

「※上記肩書きについては裏面をどうぞ」と書いてある。

裏面を見ると肩書きの解説が。


・バリトン系ソプラノ⇒幅広い音域と、さまざまなジャンルのレパートリーを持つ


・SingerSongTalker⇒コンサートでは歌はもちろん、楽しいおしゃべりも人気(のような気がしている)


・エッセイスト⇒手刷り自費出版の爆笑エッセイ集 大好評売れ残り中 ご注文はE-mailで


・突撃ボランティアシンガー⇒アポなしで突然老人ホーム等を訪問しアカペラで演奏


と書いてある。

実物は以下の通り。


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(※住所、電話番号、E-mailの掲載は伏せました)


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もの凄く面白い人だなと思い色々と話したかったが、リハーサル中だったので我慢。

ソリスト4人で歌う曲が何曲かあり、僕は今回西野さんと二人で同じパートを歌う場面が多かったのだが、初対面にも関わらず不思議と息がピッタリ。(これは西野さんも驚かれたよう。)


リハーサルの合間に、僕は少し喋ってみた。

「西野さん、名刺すごい面白いですね。エッセイ書かれてるんですか?読みたいな!」

「1冊500円よ。今日持ってきてるし、あとで渡すね!」

「500円くらいなら買いますよ」

「うわぁ嬉しい!今日一番嬉しい出来事かも。」


リハーサル後、早速西野さんはエッセイを何冊か抱えて僕の楽屋に来た。

ところが僕も西野さんも千円札しかなく釣り銭が全くなかったので、

「じゃあ最新号2冊買ったら!」

と言われ僕は1冊のつもりが2冊無理やり買わさ・・・、購入することにした。

(ちなみにこのエッセイは現在PART9まで自費出版されている。この時僕が購入したのはPART8と9。)


それから「バリトン系ソプラノ歌手」とは何ぞや?という疑問をぶつけてみた。

すると西野さんは

「私、バリトンは敵なの!」

と答える。

絶句するバリトンの僕。

するとすぐに

「いやね、私バリトンに物凄く憧れているの!」

と答える。


話を聞くとこうだ。

例えばモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」。

ソプラノの人ならば“スザンナ””伯爵夫人”“バルバリーナ”という役があるが、

西野さんは「フィガロがやりたい!」という。

(注:フィガロはバリトンの役です。)


また石桁真礼生の「河童譚(かっぱたん)」という重唱曲、

女性の役は“お花”か“おっ母さん”しかないのに

西野さんは「河童の河太郎がやりたい!」という。

(注:河童の河太郎もバリトンの役。)


西野さんの声質は絶対ソプラノだが中低音もよく出て音域が幅広いことと、これは僕の主観だが話しているとその頭の中の思考は限りなく男に近く、しかもバリトンの思考。

僕は「バリトン系ソプラノ歌手」というジャンルを認めざるを得なかった。


その後、割と早い時間にホテルに戻ったのでベッドの上でのんびりと先程購入したエッセイを読みだした。


表紙裏に書かれたプロフィールには、

音大卒業後教員となり、21世紀日本歌曲コンクール第1位、「叱られて」歌唱コンクール第2位、奏楽堂日本歌曲コンクール第2位等、多くのコンクールに入賞し歌い手としても実力のある方だと知った。


内容は中学校の教員としてのエピソード、主婦として・母としてのエピソード、歌い手としてのエピソード(特にコンクールに入賞するまでの、コンクール敗退記録やその時の心境や決心、涙ぐましい努力が詳細に書かれている)、突撃ボランティアのエピソード、また時々考えさせられるようなエピソード等々、全体的にとにかく面白い文章で書かれていて2冊あっという間に読み切ってしまった。


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ホテルで一気に読み切ってしまった西野さんのエッセイ、「美女エッセイ」2冊。


これを読むと教員としても、歌い手としても本当に研究熱心で、かつポジティヴに楽しく活動している西野さんの活動がよくわかる。

「人生をこんなに生き生きと楽しんでいる先生に中学時代習いたかったな」と思わせるようなエッセイ。素晴らしい!


翌日の本番、舞台裏で僕は西野さんに前の晩に読んだエッセイを絶賛したらとても嬉しそうだった。

話が奏楽堂日本歌曲コンクールの話題になり、

コンクール本選で歌った曲が何と僕も西野さんも同じ曲だった。

(ちなみにその曲は石桁真礼生作曲「鴉」。三好達治の詩で、この一曲で10分以上ぶっ通しで歌う日本歌曲。)


本番での西野さんのソロはそのお人柄も十分ににじみ出るような素晴らしい演奏だった。

重唱もリハーサルと同じく息がピッタリ。


本番後も「いつになるか分からないけど、またいつか共演したいね」という会話を交わし、僕は富山から東京に帰った。


帰りに読むためもう一冊いただき(この一冊は表紙が折れているからという理由でプレゼントして下さった)、新幹線の中で読んだがやはり思わず吹き出してしまうくらい面白かった。


家に帰ってから妻にも読ませたが「これは面白い!」と笑いながら読んでいた。

やはりエッセイは大変面白いので全9冊揃えたくなって、僕は帰ってからエッセイの追加注文と公演の時に撮った写真をメールで送ったら、西野さんから大変ユーモアのあるメッセージが届いた。

以下、そのメールを全文転載する。


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原田圭様

2割美しく撮れた写真ありがとうございました。
事前に15回も合わせをしたかとおもうほど
高岡のステージでは息ぴったり!
優秀な人と歌える幸せを感じたひと時でした。
マジな話、こういう機会、私には年1回あればいいほう。
原田さんと歌わせていただけて、本当によかったです。
是非ビッグになって、私の自慢のネタになってくださいね。

写真のお礼(?)に、妄想コンサートのプログラムを作ってみました。
エッセイは近日中にお送りいたします。
お楽しみに。


<妄想コンサート>
2人のバリトン(?)と美人ピアニストによる欲張りコンサート

201?年 ○月○日
Br:原田圭

Br系ソプラノ:西野真理 

Pf:原田(妻)

※D:デュエット
1 オープニングステージ
  かんぴょう(D)

2 オペラアリアの世界
  ①フィガロの結婚より

(訳詩:西野真理)
  ②魔笛より

3 邦人作曲家によるピアノソロ曲の世界
  ①滝廉太郎
  ②三善晃
  ③湯山明

4 中田喜直の世界
  ①行く春   

  ②夏の思い出(D)  

  ③小さい秋見つけた
  ④いしの上  

  ⑤歌をください

5 爆笑歌曲
  「あんこまパン」(全曲)

      休憩

6 アニメソングの世界
  ①勇者ライディーン   

  ②マジンガーZ
  
7 こども歌の世界(全てD)
  ①ぺんぎんちゃん  

  ②北風小僧の寒太郎  

  ③たぬきのレストラン  

  ④だんご3兄弟
  ⑤赤鬼と青鬼のタンゴ  

  ⑥めだかの学校

8 ファイナルステージ
  鴉

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こんな楽しい方と妄想ではなく、実現させたいとさえ思った。

僕も西野さんのようにバイタリティーのある人間、歌い手になりたいと心から思った。


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その後エッセイは早速自宅に届いた。これから読むのが楽しみだ。



声楽家・原田 圭の♪Kei's Blog♪
バリトン系ソプラノ歌手・西野さんとのツーショット。

西野さん、楽しいひと時を本当にありがとう!