これは、うちのマスターがまだ十六、七の小僧っ子だった頃のお話です。
上野デリーで修行中だった若き日のマスター。ある日派遣されて手伝いにいったのは、デリーの暖簾分け第一号店として開店した柏のボンベイ。
ボンベイ店主がデリーで修行をしている間、店を任されていたのはうちのマスターを含む数人のデリーの従業員達だった。
開店当初は、お客さんの数も微々たるもので、来る日も来る日も暇を持て余して厨房の片隅に腰をおろし、日がな将棋をさしたり、少年サンデーや少年マガジンなんぞを回し読みしていたんだそうな。
店主はデリーで修行をしながら、夜になると店に顔を出す。
静かな日々…
当時は一人でやって来る女性客など皆無。しかしそんな中、頻繁に通ってくる一人の若い女性がいた。
ご飯を盛り付ける所の目の前、いつも同じカウンターの片隅にポツンと座る女の子。
どうしてこんな綺麗な娘が、1人で毎回決まってここに座るんだろう…
若いデリー従業員達は、厨房の中の誰かを目当てに来てるんじゃないかなぁ…などと想像して、色めき立ったりもした。
しかし、そんなある日の朝…
何故か半開きになっているシャッターをヒョイとくぐり、店に入って行ったマスターが見たのは、なんとまぁ!店の奥で逢引き中の、あの綺麗な女性客と店主ではないか!
こりゃまたとんだお邪魔虫でぇ…などと思いつつ静かに店を出て、大きな声で
「お早うございま~す!」と言いながらシャッターをガラガラと勢いよく押し上げて、あらためて店に入っていった。
♡♡♡
開店からしばらくの間は、デリーの従業員たちが入れ替わり立ち替わりして店を手伝っていたのだけど、徐々に引き上げていき、デリーに戻ったうちのマスターはというと…
軽井沢やら銀座やら六本木やら、デリー支店を巡りながら仕事を一通り覚えた頃、違う料理も覚えたいという思いから、東京は芝公園のロシア料理店ヴォルガへ。
仕事が休みの日に「いい所につれてってやる」などとと調子のいいことを言っては仕事仲間を引き連れてボンベイに遊びに行き、みんなで店を手伝う事もあった。
ヴォルガで何年かを過ごし、修行先を違うレストランに移そうとしていた頃、柏のボンベイはとんでもなく忙しい店になっていた。
もしまだ次の所を決めていないならば戻ってきてくれないかと店主に頼まれ、再び柏ボンベイで働く事になる。
そして、あの時の綺麗な女性はというと…ボンベイ店主の奥様になっていましたとさ。
m(_ _)m
カレーハウス横浜ボンベイ
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