矢印のカスタマイズ | 3倍早くなるためのDTP講座

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DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。


Illustratorは、パスの始点終点に矢印を追加する機能があります。CS5からは線パネルからプルダウンで選択でき、差し替えや位置変更も簡単に行える便利機能です。

しかし、デフォルトで39個もある割には使うことのないデザインだったり、バランス修正をしたい物などありませんか?

↑もっと使える…ゴホゴホッ



実は公式HPに載ってますが、矢印はカスタマイズや追加が可能です。

ええっ、知らなかった! 早速作ってみようと思ったアナタ、飛びついてはいけません。甘い話には罠が潜んでいるのです(業務用アプリに潜ませる必要はないけど^^)。

矢印のカスタマイズは3D効果のベベル同様、取扱い注意です。理由は、スウォッチやブラシ、スタイルなどのように設定がドキュメントに依存するのと違い、矢印はアプリに依存するためです。

イラレ不祥事案件でいうところの、「あー、支給データの矢印いじったら同じの選べなくなっちゃったー」ってやつです(レアケースですけどね)。




というわけで、矢印のカスタマイズは、仕様をよ~く理解した上で正しくお使いください。

まず、矢印についての基礎知識。矢印のライブラリ「矢印.ai」はIllustrator.appのResource内に格納されており(Mac版)、起動時に読み込みます。矢印の項目は「矢印.ai」のシンボル内にある条件に合ったもののみ線パネルに表示されます。

↑普段アプリの内包物は見ませんよね


↑開くとこうなっている


↑そのドキュメントのシンボルに入ってる



ヘルプでは「カスタマイズした場合はプラグインフォルダへ複製する」旨の指示があります。そう、プラグインフォルダに「矢印.ai」があれば、プラグインに入れた方を優先的に読み取ります。

プラグインフォルダは普通に出し入れできますので、カスタマイズのハードルは下がりますが、「ライブラリを読み込んだIllustratorにしか表示されない」のは変わりません。

例えば同じ部署内でカスタム矢印を使ったAさんのデータを、Bさんのド・ノーマルIllustratorで開くと画面表示はされますが線パネルには表示されません。同じ矢印に統一したい場合、スポイトやグラフィックスタイルを使うなど面倒なことになります。

そして、一度別の矢印を選んでしまったら、もう元には戻せません。

↑矢印40として作ったけど、別のIllustratorのプルダウンリストには出てこない



これは、外付けのプラグインではなく標準機能であるため、余計に気付きにくい事象になっています。だって自分の所ではいつでも表示されているわけですから。


念のため検証してみます。MacOS10.8.5+IllustratorCS5.1(矢印カスタム)+CS6パッケ版(矢印ノーマル)。

まず、CS5で矢印.aiの「矢印39」に変倍をかけます。そして、矢印40を作成して追加します。

↑矢印39を改変、矢印40を追加



CS5でこれらを適用した書類を作成し、CS6で開いてみると書類にはカスタム矢印は「データとして」残っています。しかし、矢印39と矢印40はプルダウンメニューでは適用されていません。

↑改変した矢印39と矢印40はリストに表示されない


倍率の変更や始点終点の入れ替えは可能ですが、一度プルダウンリストを変更してしまうと二度と選択できなくなります。

↑ライブラリになくても矢印として認識しているので編集は可能



これを更にCS5形式で下位保存してCS5で開いてみます。

↑CS5に戻れば認識しています



このことから、Illustratorのライブラリにない矢印は、矢印として認識はするものの、線パネルからの選択は不可になるようです。そして名前では見ていないようです。

Illustratorの場合、名前で認識したり、無いものは強制的に分割するなどの仕様がありがちですが、この仕様ならうっかり置き換わるという事故はなさそうです(ただし検証はCS5,CS6なのでバージョンアップに伴う変更などはあるかもしれません)。

回避策としては矢印.aiを同梱して「修正時はプラグインフォルダに入れてね」とお願いする方法も考えられますが、経験からすると相当嫌がられるでしょうな。


とまあ、面倒な仕様ではありますが、状況次第ではかなり使えるのも事実です。もともとプルダウンだけでパスの端を修飾できて、色を付けられて、矢尻部分だけ拡大縮小できるとか超絶便利じゃないですか。

プルダウン項目がデフォで39個もあるの邪魔だし、絶対に使わないデザインもありますよね? よく使う数種類にまとめ直したり、既存のバランス調整や自作の矢印を追加すればさらに便利。使わない手はない気もします。


↑CS6なら可変線幅+線グラデも効果的。やだなあベルギーチョコソフトですよ



矢印の作り方は簡単で、矢印.aiを開いてシンボルにあるデータを複製して改変するだけです。グレースケールや白も使用できるので濃度や白マドのある矢印も作れます。

↑以外と知らない? 白マドとグレースケール



個人的には非常に魅力的な自作矢印ですが、手放しで使える仕様でないことがブレーキになりモヤモヤしている今日この頃です。

とりあえず事故回避の仕様のようなので、「危険」というほどではありませんが、データ納品ならフォントのアウトラインと同じ意味合いで、アピアランス分割して渡す方が確実ですね。

スウォッチやスタイルのようにドキュメント依存だったら大声で宣伝してますよ、ホントにもう。

※実際使っていない+仕様上とても手間がかかるので軽めの検証しかしておりません。間違いなどございましたらご教授いただけたると助かります。