知ってるつもりのIllustrator(リンク編) | 3倍早くなるためのDTP講座

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DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。



リンクは「配置」でファイル名を選んだり、Finderから「ドラッグ&ドロップ」するだけなので、特に仕組みを知らなくたってDTP作業に支障ありません。

しかし、Illustratorのリンク周りは、まるで地雷原のような危険仕様。曖昧にせずしっかりと知っておくべきところですが、ガイドブックやヘルプにはほとんど詳しい記述はありません。

大抵、「リンク」は外部ファイルに紐付けしてIllustrator上に表示しているだけなのでデータが軽くなり、リンク元を一元管理できる。対して「埋め込み」はファイルに内包するのでデータが重くなるがリンク切れのトラブルは無い。という表面的な説明が一般的でしょう。

うん、間違ってません。でもこの説明だとInDesignも全く同じ機能ですよね。
実際はIllustratorとInDesignのリンク周りは全く別物です。DTPをやる上で知っておいて欲しいのは概要では無く実務上の挙動です。この表面上の説明のせいで何度トラブったことか!

どこかに突っ込んだ説明がないかと探しましたがあんまりありませんでした。ということで、今回はリンクについて以前検証した記事の内容も含めてまとめます。

●リンクの認識

リンクファイルは「絶対パス」という方法で認識しています。リンク情報を確認するとファイルの場所にパスが記されています。


「パス」はWEBの世界では常識ですが、DTP作業(特にMac)ではあまり意識することはないので馴染みない方もいることでしょう。

ここでのポイントは「リンクにはファイルの置き場所が記されている」、「絶対パス」であるということです。

※(IT用語辞典より引用)パスとは、外部記憶装置内でファイルやフォルダの所在を示す文字列。ファイルやフォルダのコンピュータ内での住所にあたる。

●リンク切れ

リンク切れとは、この「パス情報」に差異が生じてIllustratorがファイルを見失った状態です。パスの記述と一文字違うだけでもう認識できません。フォルダ名やファイル名を変更したり、ファイルやフォルダを移動するとリンク切れになるのはこのためです。


↑ファイル名変えたらリンク切れちゃいました



逆に、別の環境へコピーしても絶対パス通りの構造になっていればリンク切れは起こりません。

●リンク切れからの~再リンク

リンク切れを起こした場合、救済措置なのか「Illustratorファイルと同一階層」に、「リンクと同じファイル名」があると再リンクするという仕様です。


ん? と違和感を覚えた方するどい。そう、たとえ「同名の別ファイル」だったとしても「名前が同じなら」無条件再リンクです。警告? Illustratorだぜ。そんなんあるわけない。ワイルドだろぉ~。

※MD5500さんから情報をいただきました。CCでは同一階層の「Linksフォルダ」にもリンクと同じファイル名があると再リンクがかかります。これはCS6クラウドから搭載されたパッケージ機能を受けてのことでしょう(CS6パッケージ版はダメでした)。

●内容の違う同名ファイル

さて、ここで疑問です。別のフォルダにある同名別ファイルにリンクしていることは「稀によく」ありますね。

↑同じ名前の別ファイルをリンク


画像01.epsとかA.psdとか。テキトーに名前付けてあるやつ。前号から流用とか、後送データとか。
まあ、後送分を同じ名前のママ作業するのもどうかと思うが…。


↑こんな感じで



リンクが生きていれば全く問題ないこのファイル、リンク切れを起こしたときIllustratorさんはどのようにして復旧させるのでしょうか?

答え:その1 最初にリンクしたヤツにぜんぶ勝手にかけ直し。
   その2 それが嫌ならぜんぷ手動でかけ直ししろ。
の二択です。さあ、今日の気分はどっち? いやどっちとかじゃない。同名別ファイルある時点でその1はダメだから。

さて、ここで前述の問題「Illustratorファイルと同一階層にリンクと同じファイル名がある」が掛け合わさるとどうなるか。

同一階層に同名ファイルは1つしか置けませんね。つまりこの状態でリンク切れを起こすと同一階層にあるファイルに全部置き換わります。ええ、警告なんて一切ありませんよ。

↑開いただけでこうなります


●再リンクその2

誤リンクの危険性がある場合、自動一括再リンクは避けたいところです。
ただし、前項の「答え:その2」の手動再リンクにも幾つか方法があります。

ファイルを開くときにリンク切れの表示が出ますが、ここで1つ画像を選べばその階層と同じリンク切れになったファイルは自動的に再リンクします。

↑リンク切れ警告


↑再リンクっと


これはこれで助かりますが、当然「同名別ファイル」でも警告無しでやってくれます。

↑あれ、チェーンの画像が勝手に変わってる

しかもIllustratorはこのとき指定した「階層を記憶する」ので、もし途中で間違いに気付きキャンセルをしても、次からは勝手にその階層に見に行きます。

↑保存しないっと


この状態ではIllustratorは「見ぃつけたぁ~」状態なので、次にファイルを開いたときはもうリンク切れの表示も出さずに再リンクをしていまいます。別ファイルを開いても同じです。ロックオンしてます。こうなってしまったら回避策はIllustratorの再起動だけです。

↑開いただけで再リンク。もう警告してこない。

(z-)さんのブログに詳しい記事(Illustrator:リンクの注意のはなし)がありました。参考までに。

勝手に再リンクは同名別ファイルが無いという前提であればとてもラクチン機能なのですが、もし同名別ファイルの危険性があるならば、手間はかかりますがリンク切れを起こしたままファイルを開き、リンクパネルから1枚ずつ再リンクするのが安全です。

でももし手動で誤リンクしても警告はありません。出てくるヤツが悪いのと同じくらい間違える方が悪いんです。

同名別ファイルのある場所に確信があるなら「その1」で一括再リンクして、誤リンクのみ手動で再リンクする手もありますが、デンジャラスであることは言うまでもありませんね。

ちなみにInDesignやQXはリンクの貼り間違いやリンクファイルの変更(リンクしていたファイルと再リンクしたファイルに差異がある場合)は「変更」があることを明示してくれます。


●アラート

でもIllustratorだって環境設定の「リンクを更新」で「修正されるときに確認」にしていれれば、別ファイルに置き換わったときに警告あるんでしょう? と思いますね。




このアラートは「Illustratorファイルが開いているとき」に「リンクファイルに変更」があったら出ます。決して開くときにリンクファイルとの差異を警告する機能ではありませんのでご注意を。

一人で作業していたらあんまり意味の無いアラートですねえ。自分で直すんだしわかってますよ。うぅ寂しい。


(つづく…と思う)