知ってるつもりのIllustrator(リンク編3) | 3倍早くなるためのDTP講座

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DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。



つづきのつづきです。

●画像置換のルール

リンク画像は別の画像に置換することができます。
例えば50×70mmのリンク画像を17.5×25mmの画像に置換するとします。

↑これくらいのサイズの違いがあります。


するとベロンと置き換わります。これ、同じ倍率でも同じ寸法でもない、ピクセル等倍とかでもない、ではなんじゃらほい。



↑もーなんだよこれー。


もったいぶっても仕方ないのでズバリ、これは対角線の長さが同じになるのです。そして基準は画像のセンターです。


つまり縦横の比率さえ同じなら(再サンプル無しのリサイズなど)、置換してもIllustrator上でのサイズや位置は一切変わらないということです。

デジカメ画像などは取りあえず貼っておいて、カラーモードや色味、解像度を調整してから張り直してもトリミングしない限りズレません。

でもそんな仕様だからノートリからトリミングへの置換はもう大変なんですよ、奥さん! アタリ画像をノートリで貼って、トリミングを入稿する人ちょっと来なさい。メッ!(さすがに今はいないか^^)



●埋め込みのルール

リンクを扱うなら埋め込みにも言及しないといけませんね。

埋め込みは配置データをIllustratorファイル内に格納する機能ですが、単純に格納しているわけではありません。データによってはオリジナルデータと異なる情報に書き換えてしまいます。

まずはカラーモード。リンクファイルととIllustratorファイルのカラーモードが違う場合、ファイルを埋め込むとそのモードに変換されます。



次に画像解像度とサイズ。ラスターデータの場合、画素数は変わりませんが元の画像解像度に関係なく72dpiに変換されます。

この際Illustrator上での貼り込みサイズは変わりませんが、整合性を取るために必然的に拡縮率が書き換わります。前述の通り画像サイズが変わっても縦横比は変わらないので見た目は一切変わりません。

↑原寸で貼ったのに



↑埋め込んだら12%でした。この画像の解像度はいくつか求めなさい。(10点)



ちなみにこの「72dpi」はラスタライズ解像度などとは関係なく固定のようです。

たとえば350dpiの画像が72dpiになるとサイズは約5倍になるので、100%で貼っていたものが約20%に縮小されます(正確には4.86倍で20.571%)。仮に23%に縮小して配置したら、埋め込み時は4.371%になるわけです。

こんな仕様ですから、埋め込み画像とリンク画像の倍率を合わせて貼り込みするのは大変なんですよ、奥さん!

また、レイヤー付きpsdファイルは、埋め込みオプションでレイヤーを分割したり1枚画像にしたりできます。ただし調整レイヤーなどのレイヤー分割不可能なものは強制的に1枚画像になるようです。

クリッピングパスのあるものはクリッピングマスクに、レイヤー分割したときのレイヤーマスクは不透明マスクになります。

クリッピングパスは何とか目視できますが、レイヤーマスクは危険です。これ、画像を置換してもマスクが残るので、似たような画像だと見落とす危険性があります。

↑タイガー、いやレイヤーマスクが不透明マスクに。オブジェクトとして表示されないので透明パネル出てないとなかなか気付かない。

↑画像修正時にご丁寧に余白トリミングしてくれて再リンクしたらちょっと拡大されちゃって、マスクは居残るからずれちゃったの図。この現象はクリッピングマスクも同じです。


IllustratorファイルやPDFも埋め込めますが、ベクターデータはオブジェクトとして展開されることになります。ネイティブデータが埋め込まれるわけで無いので、アピアランスなどは分割された状態になります。


Illustratorデータでは、配置状態では「線」にも変形がかかりますが、展開すると線に変形はかかりません。オリジナルとは違う形状になるので注意しましょう(過去記事参照:Ai-Aiリンクの注意点(その1))。

画像ファイルは埋め込んだときに名前やリンクパスが残るものと残らないものがあります。

↑これらを手動で埋め込むと、


↑Photoshop PDFとPhotoshop EPSは名前とリンクパスがなくなる

                                                           
Photoshop PDF 消える
Photoshop EPS 消える
tiff 残る
psd 残る
jpeg 残る


●「配置画像を含む」チェックとリンクの強制埋め込み

「画像含む」にチェックするとリンクとして配置していてもリンクデータの形式によっては強制的に「埋め込み」になりリンク関係は破棄されます。

DTPの主要形式であればeps意外は全て強制埋め込みと思っておきましょう。意図していない埋め込みは前項のとおり注意が必要です。リンクを保ちたいならば「配置画像を含む」チェックは要注意です。

↑「配置した画像を含む」にチェックを入れて保存してみた。


↑Oh! これ絶望! ちなみにai形式、Illustrator eps形式共に同じ結果でした。


なぜかepsだけはIllustrator EPSでも埋め込まれません。埋め込まれた画像の名前やリンクパスは消滅します。

強制埋め込みにはオプションなどの指定はなく、Illustratorのオレルールに従って埋め込まれます。

しかもPDF互換aiとepsは既にリンクデータを内包しているのに更にデータを格納するため、データ容量がふくれあがります。

↑画像含まなくてもリンク内包するから出力できるのに…


さらにチェックがないと「本当に埋め込まなくていいのか」的な問答がありますが、印刷出力に関しては、これは「世界の半分をオマエにやろうと」同じです。埋め込まなくても出力できるのに埋め込みチェックを入れるとリンク関係が破棄され容量マシマシになります。

↑うーめこむ、うーめこむ! やめなよ、りんちゃん泣いてるでしょ! せんせー!


また、検証の結果「同一データの複数リンク」の「内包」は1枚であろうと10枚であろうとデータ容量は同じですが、埋め込んでしまうと枚数分のデータに比例して容量が増えます。

↑でPDF互換チェックありのai形式(内包状態)なら、同一画像のリンク配置1枚でも5枚でも容量は1枚分。埋め込むと5倍になる。


うっかり強制埋め込みになってしまうと、容量は増えるし元データに直しがあった場合全て再リンクになるというダブルパンチを食らうことになります。

「配置画像の埋め込み」は、リンク切れなどを気にせず配置データを固定するための便利機能ですが、使い方を誤るとトラブルの元です。

※ai形式ではPDF互換を入れずに「画像を含むチェック」だけチェックしても出力はできず、ver.8形式のepsでは「画像を含むチェック」で出力できました(昔はこれで出力してました)。正直よくわかんないっす。

これらを踏まえてリンクをリンクとして保つなら保存形式には注意しましょう。埋め込みからリンクへの復旧は面倒なうえ、貼り間違いやマスクのトラップもあり危険です。



もう1回だけつづきます。