5時間ごとに1人、1日に5人近くが餓死する日本-生活保護改悪は国家による殺人を増幅させる | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 「もっとおいしい食事をさせてあげたかった」というメモを残し餓死した大阪市の28歳と3歳のDV被害者の母子。


 「おにぎり食べたい」と日記に書き残し餓死した北九州市の52歳の男性。


 「助けて」と声をあげることもできず餓死した北九州市の39歳の男性。
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10439961956.html


 3度にわたって生活保護の相談に訪れたのに「水際作戦」で追い返され孤独死した札幌市白石区の42歳と40歳の姉妹。
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11360225593.html


 2011年の統計(厚生労働省人口動態調査)で、この日本社会において、1,746人が餓死しています。これは、1日に4.78人、5時間ごとに1人が餓死していることになり下のグラフにあるように、この14年間で餓死者数は1.7倍も増加しています。


すくらむ-餓死



 1日に5人近くが餓死している日本社会は「生存権」が守られている社会とは到底言えないでしょう。


 餓死者が多発する大きな要因は、困窮状態に陥っても「命の最終ライン」である生活保護を受けることができない人が数百万人にものぼっているからです。(※日弁連作成の「Q&A 今、ニッポンの生活保護制度はどうなっているの?」参照→
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatuhogo_qa.pdf  )


 いまでも生活保護を利用する資格のある人のうち現に利用している人の割合(捕捉率)は先進国最低の2割しかありません。それにもかかわらず、いま国会で審議中の生活保護法改悪案は、違法な「水際作戦」を合法化するとともに、親族の扶養を事実上生活保護の要件とするもので、これでは一層捕捉率が下がり、餓死・孤立死を頻発させることになります。(※生活保護改悪案の問題点については、反貧困ネットワークの「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める緊急声明 を参照ください)


 記憶に新しい大阪市でのDV被害にあった母子の餓死のようなケースが現在でも起こっているのに、さらに今回の生活保護改悪案で親族の扶養を事実上生活保護の要件とすると、DV被害者が生活保護申請をした場合にも扶養義務者たる夫に通知や調査がなされたりする危険性とともに、夫への通知によって自分の居所が知られることを危惧したDV被害者が、困窮状態に陥っても生活保護申請さえためらうことが多くなってしまいます。


 そもそも、日本の生活保護受給率はわずか1.6%(2012年)にすぎず、イギリスは9.27%(2010年)、ドイツ8.2%(2009年)、フランス5.7%(2010年)、スウェーデン4.5%(2009年)で、日本の生活保護受給率はイギリスの5分の1以下なのです。いま生活保護受給者が増大しているなどと言われますが日本は非常に少ないのです。今まで日本の生活保護受給者がこんなに少なくされていたことの方が問題であり、日本の公的扶助が小さすぎるということは、政府の政策による貧困削減効果が少ない、貧困が政府によって「人為的」に生み出されているということなのです。


 餓死や孤立死は、ただ孤独の中で死んでいっているということではありません。生活保護バッシングなどを煽り、貧困を利用して安上がりの労働力を常に確保しようとし続けている「国家による殺人」なのです。


 そして、生活保護バッシングや自己責任論に拍車をかけ、「助けて」と声をあげることさえ許さず、餓死を頻発させる日本社会でいいのかが、私たち一人ひとりに問われているのだと思います。


(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)


▼関連過去エントリー


◆また福祉が人を殺した-生活保護バッシングは「助けて」とも言えず餓死・孤立死を頻発させる社会まねく
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11360225593.html


◆橋下徹大阪市長や片山さつき議員らのバッシング依存症が「助けて」と言えない若者を自殺へと追い込む
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11352000496.html


◆生活保護改悪は福祉のパラドックスで「本当に困っている人」さえ救えずブラック企業を増大させる
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11476135797.html


◆日本のひとり親世帯の貧困は世界最悪、生活保護受給は世界最小、子どもの貧困を生み出す日本政府
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11370985764.html


◆国家による殺人をさらに強める生活保護バッシング
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11263655430.html



【追記(2013.5/31】


 2012年11月17日付のエントリー「1日5人超、4時間半に1人が餓死する日本-生活保護改悪は14年で1.6倍増の餓死者さらに増やす」 を書いたときは、「餓死」をウィキペディアで見ると、厚生労働省の「人口動態統計」にある「死因」の中の「栄養失調」と「栄養欠乏」と「食糧の不足」が「餓死」にあたるとありましたので、厚労省のホームページにある「人口動態統計」 から数字をひろってグラフを作成しました。その後、このエントリーが反響を呼ぶなか、ウィキペディアにあった上記の「餓死」の定義が無くなりました。そうした中で、5月29日の衆議院厚生労働委員会で生活保護法改悪案の撤回を求めた日本共産党の高橋ちづ子議員が、餓死者のデータについて国会図書館社会労働課に求めたところ、厚生労働省の「人口動態統計」の「死因」の中の「食糧の不足」と「栄養失調」が「餓死」にあたるということになり、「栄養欠乏」は病気等ほかの要因も考えられるので餓死には入らないとのことでした。 今回のエントリーで作成したグラフはこの「餓死の定義」にもとづいたものになっています。それから、以下のグラフは「餓死の増加と符号するもの」として追加しておきます。


すくらむ-餓死者と符号