すみコラム 28
「大切なのは手段ではなく結果である。」



昨夜、友人との待ち合わせの時間まで少しあったので、ふらりと本屋に入り、本を一冊買いました。



「女文士」林真理子

女流作家・真杉静江の愛の遍歴を綴った評伝。




私は大抵、何を買うという目標無く、その場でパパっと決めることが多いのですが、そうするとまだページを開いていない本もたまっていくのです。

でも意外とこの「後で読む」というワクワクが好きなのもあるのです。


今、私たちは所謂「小説・読み物」を買う手段として、「紙で買うか、デジタルで買うか」という選択肢があります。いや、これはどちらがいいとかそういう話ではないのですが、私はデジタルで買ったことがありません。

もちろん、資源削減や置く場所に困らないという利点はたくさんあるのですが、どうしてもこの「買っといて後で読む」という行為には不向きなんじゃないかなと思います。

どうしても、「物質」という安心感がないと、忘れてしまうような気がしてならないのです。


先日、こんな素晴らしい番組を見ました。

「庵野さんと僕らの向こう見ずな挑戦 日本アニメ(ーター)見本市」

BSでやったのですが、これは総合でやってもらいたかったくらい素晴らしかったと思います。(ちょっと前にやった「浦沢直樹の漫勉」みたいな感じです)

たった5分のアニメ映像を作るために、何万時間も悩み生み出していく男たちを追ったドキュメンタリーです。

正直私はそんなにアニメは見ないタイプなのですが、このドキュメンタリーは涙が出そうになったくらい感動しました。


生み出された作品には、必ずそれを作った人たちがいるのです。

見たものは、割とすぐに詳細な内容を忘れてしまうことがあります。忘れてしまったらまた見ればいい。また見る時に見やすいように、情報はしっかりとアーカイブしていかないといけませんよね。


少し前に見た「ニューシネマパラダイス」

この映画で重要な、「フィルムが燃えて火事になる」という場面があります。
昔のフィルムは可燃性です。温度が上がると自然発火してしまうので、とても危険でした。今、昔のフィルムを保存している施設は、温度と湿度が一定に保たれた涼しい保管場所を持っています。

そういう危険なフィルムで映画や番組を作り、上映・放送する。そういう人たちがいたからこそ、現在の進歩があるのですよね。


使うツールは違うけれど、よりよいコンテンツを作るため、泊まり込みで作業するクリエイター達。

文字だけで私たちに、世界も時代も越えた感動を体感させてくれる作家たち。


一つのコンテンツに触れるための選択肢は一つではありません。
しかし、元をたどれば全て人間のアナログな思考から生み出されています。

多くの情報の中から自分で処理しきれるだけの、本当に興味があることを、製作者への敬意を忘れずに手に取っていければなあと思った木曜の夜。