人生として成立していないほどの精神状態 | kyupinの日記 気が向けば更新

人生として成立していないほどの精神状態

精神科医は患者さんを診た際、あまりにも重篤で、

人生として成立していないほどの精神状態。

と判断される時は、その事態が収拾可能であれば、たとえ一時的に薬物が大量になったとしても、その方針で臨む。

チンタラ良くなりようがない中途半端な治療は、時間がかかるので悪手、愚策である。それは患者の人生全体に影響する。(治療に即反応する人はそれで終わり)

過去ログにも、このような病態は「時間かかると予後が悪くなる」という記載が度々出てくる。(参考

その方針の大きな理由は、精神科医のその患者を救おうとする「本能的なもの」から来る。

人生として成立していないほどの精神状態なんて、そんなのあまり意味がない。

精神科医は人を診るというか、生きざまと対峙する医師なので、視点が他の科と異なるのである。

平凡な人生のワンピース、例えば、好きなものを買ってくるとか、美味しいものを食べに出かける、好きなスポーツを観る、どこか興味がある地方に旅行に行くなど、一般の人が自然にしていることができないなんて悲惨すぎる。

これは、人生の質的なものを重視しているといえる。

ここが精神科医と、身体を診る科の医師の最大の相違点。


身体科の医師が、ある時点の処方を見て、「薬が多すぎる」とか、「副作用が出ているじゃないか?」などは、精神科医から見れば、机上の空論である。

最初から、治療の前提が異なっているので、そんな風に思うのだろう。

参考
専門性について
薬剤性肝障害
多剤併用についての話
長嶺敬彦「抗精神病薬の「身体副作用」がわかる」の感想
オーストラリア旅行に来ていた患者さん