三週間ぶり、二度目の来訪の患者さんが、入って来られるなり


「あれから三日後から全く物が食べられなくなっちゃって丸三日お味噌汁だけ飲んでたんです」


前回、脈診をして、胃の調子は悪くありませんかと、お尋ねしたところ、生まれてこのかた胃がもたれた事もなければ、調子が悪くて物が食べられないという経験もない、という非常にきっぱりしたお答えでした


ところが、そう言った三日後から生まれて始めてものが食べられなくなる経験をした、というのです


患者さんの訴えは、施術方針を決める重要な手掛かりですが、たいていの場合、愁訴は一カ所に留まりません。


この方の場合、主訴(施術を受けるきっかけとなった現在最も気になる症状)も全く別の事でした。


例えば主訴が頭痛でも、腰痛も不眠も胃のもたれもある


その全部が連動して、今回の主訴を作っている事は非常に稀です


何年か生きていれば、怪我も病気もしますし、体質も影響します


そして、この体質というのも、生活習慣や加齢によって変化します


そのため、方針を決める時には、最も緊急性の高いものから優先順位をつけていきます


長年かけて生み出された症状は、要因が重なり合って出来ているので、薄紙を剥がすように改善されていきます


同じ方の同じ症状に対する施術でも、状態に合わせて毎回方針を変えて対処していかなければならないこともあるのです


そうして三ヶ月、半年と鍼灸を受け続けていると、「ヘルニアで通い始めたけれど胃弱も便秘も治っていた」という体験をしたのは、かつて鍼灸師になるなど夢にも思っていなかった頃の私です(笑)



結局、一度の施術で対処すべき範囲を決める際に、前回は、脈が顕していた胃に関しては緊急性なしとして優先順位を下位に設定していたのでした


ところで、鍼灸では患者さんからの聞き取りの他、脈や舌、声の調子、臭いなどの状態からも、情報を得るのですが


舌が身体の状態を反映するのは脈より遅く、自覚症状に追い付かない場合もあります


一方、脈は直近の変化を表すもので、自覚症状より早い場合もあり、そのために、しばしば主訴と連動しません


今回が正にそのケースだったようです


結局、食べられないという以外の症状はなく、「家族には、風邪だろ、って言われて胃腸薬なんて飲んじゃいました」で、済んだそうです


「笑っちゃいましたよ、言われた後にホントに食べられなくなって」とおっしゃっていました


まさか、言霊!?口に出すとその通りになってしまうという…


いえいえ、脈は預言するのです


鍼灸・マッサージ


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