未知の世界の謎を解き明かす鍵
「群集生態学は工学や医学とは異なり、研究成果がすぐに社会に役立つわけではありません」と語る門脇さんだが、けっして社会と無関係というわけではない。菌根菌ネットワークの仕組みが解明されることは、未来の森林を育てることにつながるのだ。
「樹木を切り倒して裸地にしても植林すれば大丈夫と思っている人も多いかもしれませんが、一度樹木が失われると、植林しても地下の微生物がすぐに元通りにならないことは、さまざまな研究で指摘されています」と門脇さんは語る。
「しかし、微生物と森林の仕組みについての知見があれば、例えば失われた生態系を復元しようとしたとき、多様な樹木の森林を作るために効果的な場所や植樹の順番についてなど、いろいろな提案ができるでしょう」と続ける。
門脇さんは、森林の生態系をみることは生物の多様性を知ることであり、人間も含めた生物が自然とどのように関わり、どのように生きていくかに向き合うことだと考えている。ゆえに、この研究は深めれば深めるほど「面白い!」のだそうだ。
学生たちも立てた仮説が実証されたり、顕微鏡写真やDNA分析で根に共生する菌根菌を見つけたりすると、理論が現実と結びつく。