秋田和徳ブログ『バラ・グラフィック』 -5ページ目

あつカセ ―ポケット・ミュージック―

The Lemon Twigsで「The One」。

 





70年代の雑誌広告。

 

 

 




1981~82年頃、
岡山市内には貸しレコード屋さんはもちろん、
貸しテープ屋さんというのもありました。
場所は就実高校の向かい側の並びにあって、
学校帰りに時折――借りても録音(複製)出来ないので
回数は限られていましたが――立ち寄っていました。
自分がレコードから録音したものとはまるで異なる、
ミュージックテープならではの音の良さを知ったのは
その時がはじめて。

 

 

 




学生時代、自分には
ミュージックテープを買うという選択肢は
全くありませんでした。
同じくらいの価格なら小さなカセットより大きなLP、
小学生の時にはじめて買った
エアロスミス『ロックス』から一貫して“レコード”でした。
当時、ミュージックテープは
売り場で見た記憶すらほとんどありません。

もっとも、録音用のカセットテープとなると話は別。
殊に中学生の頃は一本一本が大切なので
インデックスも丁寧。なにしろ
46分テープ(SONYのBHF)一本が
400円くらいしたように記憶しています。
下の写真は友人から借りたレコードを録音した、
13~4歳頃のもの(まだ持ってる!)。
当時は知る由もない、背の書体は「Optima」。

 

 

 




楽曲の邦題や作者名のみならず、別紙にわざわざ
メンバー・クレジットを書き添えるという
念の入れよう。

 

 

 




良い素材があれば、
雑誌の切り抜きをインデックスに差し込み、
手書き部分を覆い隠すパターンもありました。

 

 

 




そして、雑誌の付録インデックス。
手元に残っていたのはこれだけ。

 

 

 

 




ほんの一ヶ月ほど前、
コンサート・パンフレットに往年のFM雑誌のような
カセット・インデックスをつけることを思いつき、
実行に移した令和二年秋。

 

 

 


 

 


これはBUCK-TICKのニュー・アルバム
『ABRACADABRA』がカセットテープ
――もったいなくて未だ未開封――でも
発売されたことを受けてのこと。

 

 

 




この仕事に従事して33年、
ミュージックテープのジャケットを手がけるのは
今作がはじめて
(91年に一度だけ手がけた可能性はあれど
現物を見ておらず、証拠がないのでノーカン)。
かつてミュージックテープを購入する習慣が
なかったとはいえ、
これはやはり嬉しい経験でした。

というのも今から20年以上前、
ミュージックテープのジャケットにも
定番とも言える「LPジャケットの縮小」ではない、
創意工夫に富んだものを発見してしまったから。

 

 

 




その面積が小さいことを逆手に、
見慣れたレコード・ジャケットのトリミングを
大胆に変えることによって、
また別の趣が生まれることを“ユリイカ!”
(下の写真左がカセット、右がLP)。

 

 

 




以来、気まぐれに買い求めた
わずかな数のミュージックテープ。

 

 

 

 

 

 

 

 




実のところ、自分にとってこれらは
――音源を別に所有していることもあって――
「聴く」ものではなく「観る」もの。

豆本のように、その小ささにときめく
ポケットいっぱいの音楽、カセットテープ。

 

 

 

 










*
My all-time favorites
#238

日曜18時からの『リクエスト・コーナー』は
石田豊氏の落ち着いたトーンの語り口と、
曲を最初から最後までキッチリと
言葉をかぶせないでオンエアーする、
エアチェックにうってつけのラジオ番組でした。
その番組でたまたまテープに録音し、
繰り返し聴いた14歳の時からずっとこの曲の虜。
Nick Loweで「Cruel To Be Kind/恋するふたり」。