就職活動がうまくゆかないという、たったそれだけのことが原因で自殺を本気で考える若者が増えていると聞きます。もしそれが本当だとすれば、その脆弱さは果たしてどこからやって来たのでしょうか。労働奴隷になれなかったことがそれほどまでにかれらを絶望させる原因はいったいどこにあるのでしょうか。
 ほとんど無限の可能性とエネルギーを具えている若者が、恐るべき視野の狭さにとらわれて、そんな短絡的な答えを出そうというのは、まさに呆れ返った話です。親や教師が敷いたレールの上を走れなくなった途端に命を棄てても構わないと思うような絶望に蝕まれるのは、生命力の欠如によるものでしょう。そしてそれは、安定していることが当然の社会といった錯覚のせいでしょう。現実はそうではないということを知らずじまいでおとなの年齢に達してしまったからでしょう。
 人生の最大の喜びは、思い通りにゆかない、意のままにならない窮地を孤軍奮闘によって乗り越えてゆくことにあるのです。これに比べたら、安楽や安定や安心など取るに足らない、後ろ向きな、その場限りの快楽でしかないのです。それには、親にも教師にも友人にもいっさい頼ることなく、弱者のふりをやめ、内なる強者の自分を引き出し、世間の尺度を完全に無視して、この世とおのれがどんな関係にあるのかを一から問い直す必要があります。その気になれば誰でもやれます。その気になっていないだけです。潜在能力を侮ってはいけません。