ご承知のように、故やしきたかじんさんの長女が出版社である幻冬舎を相手取って、百田尚樹氏著の「殉愛」の差し止めと慰謝料請求訴訟を提起しました。


私は、このことを知って「あれ???」と疑問を感じました。


法的措置を執る場合、仮差し押さえや仮処分が可能であるのにその申立をしなかったとしたら、代理人弁護士は弁護過誤に問われても仕方がないというのが私の立場です。


もちろん、保証金が調達できなかったような場合はやむを得ませんが、本件のように出版を差し止めるのが目的であれば「仮処分」を申し立てないのはあまりにも不自然です。

保証金についても、担当裁判官に被害の甚大さを訴えれば酌量してもらえる余地はいくらでもあります。

結果的に、本訴を提起したということで本書が話題になり、原告側(長女)としては、いたずらに話題をつくって書籍の販促活動をしてしまったという結果になってしまうからです。

これは、原告本人としてはとてつもなく不本意な結果になるはずです。


故城山三郎氏著の「落日燃ゆ」でも名誉毀損が争われましたが、それを斟酌しても、出版直後の仮処分申請は弁護士としては当然行うべき義務があると考えます。

ところが、あくまでネット上ですが、私が検索した結果、仮処分云々に触れたものはありませんでした。


これはいったいどういうことなのでしょう?


仮処分申請が棄却されたとしたら、本訴を起こすことは長女にとって大変なリスクであります。

もともと関心を持っていなかった人々も、本書を関心を持って読んでしまいますから・・・。

本訴を提起するかどうかについて大いに悩むところでしょうし、本訴を提起したときの想定しうるリスクの説明を代理人弁護士はしっかりやらなければなりません。


万一ではありますが、長女の代理人弁護士が仮処分申請を怠っていたとしたら、資格剥奪ものの懲戒処分になってもやむを得ないでしょう。

いくらなんでもそのような阿呆な弁護士がいるというのは、いささか考えにくい状況であります。


出版差し止めの仮処分申請をしたのかどうか?

しても棄却されたのか?

もし棄却されても、なぜあえて(どこの書店でも平積みになっている)この時期に本訴を提起したのか?

それによって、かえって本書の販促につながるという単純な想定くらいできなかったのか?


どうにも、疑問だらけであります。


もう一度書きます。

「仮処分」「仮差し押さえ」ができるのに、それを怠ったとしたら弁護士としては失格です。


若き弁護士諸氏は肝に銘じておいて欲しいと思います。