【ロイター】2016.9.6

閉幕の数時間後に公表された共同声明では、世界経済の成長は想定よりも弱く、下方リスクが残るとの認識を表明。金融政策だけでは均衡の取れた成長は実現できないとの見解や競争的な通貨切り下げを回避する意向をあらためて示した。

英国の欧州連合(EU)離脱決定をめぐっては、世界経済の見通しをめぐる不透明感を増大させるものの、G20は経済、金融面での影響に対処する体制を整えていると指摘した。

またテロリズムや移民問題などの新たな問題が世界経済の見通しを悪化させているとし、G20は持続可能かつ力強い成長の促進に向け、利用可能なあらゆる政策手段を総動員することで合意したとした。

環境保護対策は数少ない成果の1つとなった。G20に先立って2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を米中が批准し、他のG20も両国に続くよう促した。
http://jp.reuters.com/article/g20-china-wrapup-idJPKCN11B26W?sp=true

〔ここからコメント〕
G7が決定力を失い、それ以後中国など新興国を含むG20が大きな決定力を持つようになったと考えられたが、彼らもまた世界をリードすることができないことを露呈したようだ。

参加国を見ても、主催の中国は世界経済の成長センターから転落したし他の有力新興国であるブラジル、ロシアもマイナス経済の苦境にあえいでいる。世界経済の低迷は彼らの力も削いだようだ。

中心的な課題であった「世界経済の下ブレリスク対策」は「政策を総動員する」というが、低迷の原因がつかめないので、一致した方向が見えず総花的だが内容はほとんどない。金融政策が低金利下でデッドロックに乗り上げて身動きが取れず、結局のところ財政赤字問題を棚上げしつつ財政出動に傾斜することを暗に認める内容だろう。

次に世界で問題となっている「為替切り下げ競争」や「保護貿易主義的傾向」対策が問題であったが、この論議も何の決め手も無いように見える。と言うのは、グローバル経済に対する反発は国際的な流れとなりつつあるからだ。反格差・反グローバリズムの大波が自由貿易主義の筆頭であるはずの米国で大きな流れとなってきた。。オバマのおひざ元では次期大統領候補たちが、共に「TPP反対」の立場を鮮明にしている。オバマ大統領は任期の残されたわずかな期間でTPPの批准を実現できるかは怪しくなってきた。

グローバリズムは、実際には先進国の多国籍企業による世界支配を意味している。米国ばかりではなく、欧州、中国、日本らのガリバー企業が国境を越えて進出し激しく競争を繰り広げる。同時にグローバリズムは人的移動を活発化し、地元の零細企業や雇用を奪ってきたのだ。こうした資本主義的貧困の拡大ばかりではなく、英国のEU離脱に示されたように、東欧移民らの激増に対する反発ーー後ろ向きの ーーの結果であることはすでに明らかなことだ。米国でも欧州でも「移民を入れるな」「国境に壁を作れ」と言った乱暴で筋違いの政策が国民の支持を高めている。グローバリズムの先頭に立つG20の首脳たちも自分たちのまいた種なのだが、妙案を見いだせないでいる。

実際、資本主義下の自由貿易とは、労働者にとって強搾取と低賃金を意味する。先進国資本は日本でも知られるようにアジアなど低賃金労働者を求めて海外に流出し、国内の雇用が劣化してきた。生産的産業の喪失は国内雇用の劣化に帰結してきた。米国でも、EUでも日本でも経済のグローバル化は格差を意味してきたし、それに対する批判が噴出しつつあるのだ。。

また、G20では今年に入り北朝鮮の数度の弾道弾ミサイル発射への警告と対策が話し合われた。国民的窮乏化をよそにキムジョンウォン体制は、国内の厳しい締め付けのなかで核武装にまっしぐらなようだ。少しでも早く、北朝鮮人民がこの腐れ切った反動的な政権と軍事支配階級を打倒することを強く望みたい。ところがこの点でもG20は無力を囲っている。各国は相変わらずの中国頼み、と言う現状だ。ところが中国は、キムジョンウォン体制の崩壊や、それに追い込むような政策を相変わらず一切取ろうとしない。G20が中国で開催しているさなかの弾道弾打ち上げは、習近平の顔に泥を塗っただろうが、何事もないかのように「各国に自制と冷静さを求め」続けている。

中国人らしいおおらかさからではない。中国政府の最も恐れることは、北朝鮮の崩壊による混乱と親米政権の成立にあるだろう。南シナ海での緊張が続くが、東アジアでは現状維持を望んでいるのだろう。

「G20に先立って2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を米中が批准し、他のG20も両国に続くよう促した。」(ロイター)。少しでも華々しい成果はこれだけのようだ。(片平)