財産管理の能力に疑問 | 江戸川区議会議員 桝秀行のブログ

【平成30年4月28日】

 

4月25日、今期最後となる財産価格審議会が開かれました。昨年の審議会でも『公道に面していない土地を購入する』など、財産管理を任せても大丈夫なのか?と管理能力を疑いたくなるような事案がありましたが、今回の議案にも耳を疑うようなものがありました。

 

記事を読むのが面倒くさいという方の為、一文でまとめると『問題のある土地を取得してしまい、問題解決の費用を差し引き損して土地を売却した』という話です。

 

*この審議会は、区が管理する財産を売却したり、新たに取得する際の価格が適正かどうかを審議するために議会ではなく区役所が設置したしたものです。また、議案には個人情報が含まれるため、審議内容の詳細をオープンにする事が許されていません。そのため、ここでは個人情報が特定されないような表現とさせて頂きます。

 

区役所が審議会に諮った内容はおおまかにこのような内容です。

 

● 区が所有する土地を区民に売却したい

● その土地には地下埋設物が残されているため土地の価値は相応に下がる

● 専門家の鑑定により、減額分が算定された

● 区の評価額は5,000万円、埋設物撤去には2,000万円ほどかかる

   (↑金額は仮のものです)

● 5,000万円ー2,000万円=3,000万円で売却したいが、この金額は妥当でしょうか?

 

と、いうものです。

 

『???』

 

このような説明では何が何だか分かりませんって。適正かどうかなど判断できますかって。

 

この契約は、今回江戸川区が児童相談所用地として東京都から譲り受けた土地と同じ手法で行われています。まず、売主が所有している土地に問題(汚染や残置物等)がある事が判明します。そして、その土地の問題を取り除くための費用を元々の売値から差し引いて契約しましょうというものです。

 

これは極めて危うい契約と言えます。私も宅建主任士の資格を有し、民間での売買でもこのような形を見ることがありますが、そもそも土地というものは地歴や図面を眺めていても、実際に掘ってみなければ分からないことだらけなのです。

 

ですから、掘る前に契約でガッチリと内容を決めてしまうと売主買主共に大きなリスクとなるのです。だって、購入した後に想定を上回る杭が埋まっていたり、遺跡が出てきてしまったりすると買主は大変な思いをする事になるのです。

 

こうしたリスクを回避するためには、売却する前に売主の負担で土地を整備し、正規の価格で売却すればよいのです。ただ工事の都合上、購入後に買主が土地を整備した方が建築上も合理的であることから、このような契約は珍しいことではありません。ただし、その場合は見込んだ整備費用が見込みを上回ったり、下回ったりし場合の対処を特約条項として契約に盛り込むものです。

 

さて、そのような問題になる事を懸念し、いくつかの質問を投げかけました。

 

●値引き分の2,000万円の根拠は?

→ 残置物を把握したうえで積算した金額

●残置物ってナニ?

→ 区が所有する以前の所有者である東電が残していった鉄塔の基礎のようなもの

●売却後に買主が行った工事の金額が積算の2,000万円と差が生じた場合の特約はあるの?

→ ない。そもそも買主は残置物撤去を行うことはない

 

「??????」

 

ますます分からなくなってきました。上述した私が指摘しようとしていた契約の在り方としての問題とは角度が変わってきたのです。買主は工事をしない、ただし残置物があるので価値が下がっている、だから値引きだけして売却する、というもの。ふむ。

 

もう一度質問しました

 

●そもそも取得した金額、つまり区の台帳上の価値はいくらになっているのか?

→ 分かりません。

(よく考えれば換地取得した土地なので5,000万円が台帳価格のはずです)

●そもそもこの土地をどのような経緯で取得したのか?

→ 区画整理に伴い換地として東電から取得した

 

また、帳簿上の価値が分からなければ審議もできませんって。

 

結果として、今回の価格は『適正ではない』(反対票)と意見表明しましたが、採決の結果、私以外の委員は全員賛成という事で議案そのものは承認されました。

 

最後まで読んで頂いた方には感謝申し上げます。皆さんはどのようにお感じでしょうか?細かい点を突いているような印象を持った方もいるかも知れません。しかし、私が感じているのは区役所による財産管理能力の低さです。

 

最後に私の考え方を整理しておきます。

 

①東電から換地として取得した

②その時点で土地の問題を見抜き2,000万円分安く見積もるべきだった

③今回の売却までその問題に気が付かなかったとしたら区の怠慢

④値引き分の2,000万円は誰が負担するの?そもそも誰の責任?なぜ区が負担するの?

⑤区役所内でも誰もこの契約に疑問を持たなかったのか

 

民間企業でこのような土地売却を行えば、これは担当者は責められるでしょうね。取得した5,000万円という金額から、何も悪いことをしていないのに2,000万円値引きさせられているのですから…どれだけお人よしなんでしょうかね。区の土地は区民の財産です。そんな簡単に値引きされたら敵いませんて。そんな甘い財産管理は自分の持ち物だけにして欲しいですね。

 

区の財産管理の在り方は今後の議会でとりあげます。