コロナ経済対策はお金を配る事だけではない【住宅条例の規制緩和】 | 江戸川区議会議員 桝秀行のブログ

【令和2年5月18日】

 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府は様々な対策を打ち出していますが、そのほとんどは『金銭的補償』という内容になっています。しかし、経済対策にはお金を配る事だけではなく、『規制緩和』によって効果に期待が持てるものもあります。

 

今回は、江戸川区が条例(江戸川区の住宅条例)によって建築物に義務付けている規制について取り上げます。江戸川区の地主さんや不動産業者、建設業者やデベロッパーとして江戸川区に関わっている方は誰もがご存じの条例です。

 

そうです。23区でも突出して厳しい制限が義務として課せられている条例です。特に新たに土地開発を検討する際、あるいは相続によって土地の有効活用を考える場合などに問題化するのが以下の2点です。

●駐車場扶持義務

●70㎡規制と言われる住戸面積

 

ナゼ、問題化するのかと言えば、近隣自治体と比較して厳しい内容だからです。更に付け加えれば、条例の目指すゴールに共感しにくいからと言ってよいでしょう。

 

さて、他区と比較してどれくらい厳しいのかと言えば以下の図のようになります。これは実際に区内にマンション建設を検討している方からお借りした実例です。足立区の条例規制によって建設すれば72世帯のマンションが建設できるのに、江戸川区の条例に従うと47世帯しか建設できないというものです。

これは、駐車場の扶持義務が大きく影響していると言えます。つまり、江戸川区では駐車場をたくさん設けなさいという義務があるために、住居面積を大きく取れず容積率を効率よく消化できないというものです。同じ東京23区東部の地域であるにも関わらず、足立区と江戸川区というだけでこれだけの差が生じている事に疑問が生じて当然と言えるでしょう。私の議会における質問に対して区は、『ファミリー世帯がゆとりを持って住み続けられる街づくり』を念頭においた条例であり、内容も街の実情に合わせて適正に運用されている。と言います。

区の見解と、民間の不満は真っ向から食い違っているではないですか。だったら区は定量的な検証を実施しその結果を公に示すべきです。これだけの大きな制限を課し、民間に経済的デメリットを与えているのですから。

 

 

 

 

 

 

さて、もう一つ具体的な例を見てみます。下図は実際に江戸川区内で建設された建物の図面です。この建物には7台の駐車場が義務付けらていますが、竣工後、この駐車場はほとんど使用されていません。つまり、この建物は誰も使わない駐車場の設置を義務付けられ、更にそれをコストを掛けて維持していかねばならないのです。こうなると、非効率、不経済、無駄、と見られても仕方ないでしょう。

図の右側にある赤枠をご覧ください。例えば近隣の自治体並みの規制内容を想定し、7台のうち4台分の駐車場を他の用途に利用できたとします。

(江戸川区では7台の設置が義務付けられていても他区では4台で済むケースを想定)

ここでは38.5坪の土地に店舗を建設したと想定しています。駐車場だけで運営した場合、満車想定で月額92,000円の収入になります。しかし、店舗を建設し貸店舗にした場合は577,500円の収入になるという計算が成り立ちます。

 

これをどう考えるかです。

 

まず、マンションの管理組合や、賃貸マンションや商業ビルのオーナーであれば収入に大きく響いてきますし、投資家の立場から見れば収益率が変わってきます。つまり投資効率という観点からすると、土地を駐車場として寝かせてしまう事は非効率という事になります。また、社会経済の発展という観点にたてば、なおさら駐車場よりも店舗の方が良いですよね。38.5坪ともなれば、焼き肉屋さんでも美容室でもオフィスでも可能になり、そこに雇用も税収もGDPも生まれる訳ですから。

 

更に、駐車場の扶持義務の歴史は古く、遥か昔、青空駐車が社会問題となっていた時分に設けられたものです。現代では青空駐車はなくなり、車の所有についても多様化しています。時代と共に環境は変わっているわけですから、その街の実情に合わせた規制へと見直しを行うのは当然と言えます。

 

 

 

 

 

ついでに2020年における江戸川区の土地公示価格を見てみます。以下の通り東京都全体で25番目です。23区で比較すると足立区に次いで下から2番目となります。江戸川区の土地の価格が比較的安い原因の一端が、不動産の有効活用を妨げる規制条例にあるのかも知れません。

上図は、江戸川区の土地価格について直近10年ほどの推移を示したものです。2010年ころまでリーマンショックの影響を背負っていましたが、2014年からは土地価格も上昇に転じています。さらにこの4年間は政府日銀が掲げるインフレ目標の2%を上回る数字で価格が上昇しています。デフレからの脱却という観点からも、現在の価格上昇の現象は区内経済にとっては、とても良い事だと言えるでしょう。

 

しかし、2021年以降はコロナショックにより大規模ダメージが予測されます。価格は下降していくでしょう。そう考えるのが自然です。

 

そこで行政にできる事は何かあるのでしょうか?という事なのです。金銭的補償や大規模な経済対策は国や都が主導して行うものであり、財政的に余裕がない自治体に出来るものではありません。そこで自治体は独自に何かできる事がないかを考えねばなりません。私はそれこそ『規制緩和』だと思うのです。

今回取り上げた区の条例規制の緩和という提言は、これまでにも議会を通じて幾度も行ってきました。区側からは前向きな回答を引き出せていませんが、今回のタイミングで実施されればコロナ対策にもなり得るわけで、今一度このタイミングで区に提案する事としました。