芸人だった頃、様々なテレビ番組のオーディションを受けさせて貰っていましたが何だかずっと違和感がありました。










全ては、オーディションに受かっていたとしたら関係ないし、落ちてる上でのお話です。










芸人の定義とは何なんでしょう?


人を笑わせる人。

ネタをする人。

破天荒な人。


それは人によって様々だとは思いますが、僕が小学生の頃は授業中フザけてたりテストの点数が悪い学生がいると、先生がよく


お前もう吉本行け!!


と注意していました。

まず大阪で芸人と言えば吉本興業で、つまり『吉本行け』とは『芸人になれ』と言う意味で、頭が悪いヤツや授業を真面目にやらないヤツは芸人になるしかない、選択肢が芸人にしかないと言う事を意味していて、

人生諦めろ!

的な感じの言われ方をしていました。

つまりこの頃芸人とは、はみ出し者でありどうしようもない人間の事を指していました。







しかし今や東大卒業者や元医者や元先生までもいる。そしてどのテレビ番組でも必ず芸人がいて、と言うか司会者をやっていて、気の利いたコメントを言いバランスをとりとても賢い存在で、憧れの職業になってたりしている。


単純に定義が変わってしまったと言えばそうなんでしょうが、ちゃんと出来ないから『芸人』になったのに、『芸人』だからちゃんとしなきゃいけなくなっている。


好きだから連絡したくてメールを送って、好きだから会いたくてデートに誘って、好きだから好きって伝えたくなってその結果付き合っているに、いつの間にか

付き合ってるんだからちゃんとメールしてよ

付き合ってるんだから好きって言ってよ

って言うあの逆転した感じ…




相変わらず例えが合ってるかどうか分かりませんがとにかく『変なヤツ』だから芸人であり『はみ出し者』で『他と一緒の事をしない』から面白いのです。


つまり、オンリーワンの存在。







なのに、オーディションでは『ショートネタブームなのでショートネタを持って来て下さい』と言われたらみんなキッチリ時間を守ったショートネタを用意し、『すぐ言う芸(50音言われたらその言葉から始まる○○を言いますってやつ)が流行りなのですぐ言う芸を持って来て下さい』と言われたらキッチリすぐ言う芸を用意する。

違う違う。

ショートネタが全員の武器になるのじゃなく、みんなが長いネタをやっている中、唯一ショートのネタをするから個性になり武器になり、みんながモノマネとか一発ギャグをする中、すぐ言う芸と言う誰もやっていない新しい形を見せるから面白いんです。

オンリーワンにならなきゃいけないのに、みんながみんな同じタイプの芸をやっている。

全てが逆転してしまっている。








『今年の審査員は小道具を使うのを嫌うらしい』

『有名人の名前を使うとダメらしい』

『みんなが共感出来る部分を入れるとウケやすい』


違う違う違う。

みんなが同じ方向に進んでどうする。はみ出せはみ出せ。ルール無用が芸人だったのに、しっかりルールを守ってどうする。同じ形になってどうする。


海岸で、どこにでもある丸い石を拾って持って帰りますか?


『これ、みんな着てますよ』って言われた服を着たいですか?


みんなが…


もう例えが全く出て来ないけど何かそんな感じのやつですよ。




ただオーディションやコンテストに受かる事だけをゴールにするならば全然良いのですが、売れる事を、そして1番になる事をゴールに考えるならば、絶対にみんなと同じ列に並んだらダメです。










って、オーディションに落ちるたびに自分に言い聞かせていました。







レッドカーペットとか出たかったなぁ。。。