☆子宮後屈の方へ ワンポイントアドバイス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

子宮は頚の部分で前後どちらかに曲がっています。前(お腹)へ曲がっているものを前屈、後ろ(背中)へ曲がっているものを後屈と言い、9:1くらいの割合です。数十年前は不妊や流産の原因とも言われ、後屈を前屈にする矯正手術も行われていたようですが、その関連性が否定された現在では手術は行いません。しかし、子宮内膜症や腹膜炎などの原因で後天的に後屈になった場合には、それらの病気の治療のため手術を行うことがあります。
生まれつき子宮後屈の方で妊娠を目指した場合には、ひとつだけ重要な注意点があります。今回はそれについて述べたいと思います。私が東京歯科大学市川総合病院に勤務していた医師2年目の時に当時の部長であった小田高久先生(現在:市川アートクリニック院長)から学んだものです。教科書や論文には記載されていない内容ですが、理論的にも実際的にも正しい内容と考えていますので、本稿をアップすることにしました。

図に示すように、子宮が曲がった方向によって、子宮の入り口(子宮口)の向きが変わってきますので、子宮口と膣壁の接触点が違ってきます(図の赤丸)。つまり、前屈の場合は膣壁の後側に子宮口が接触し、後屈の場合は膣壁の前側に子宮口が接触します。子宮口の周囲には凹みがありますので、膣内に射精された精液はこの凹みに溜まります。この精液の溜まりに子宮口が接触していないと精子は子宮内に入っていけません。さて、通常射精した後は女性は仰向けに寝ていることが多いと思いますが、仰向けに寝た状態で精液の溜まりが子宮口に接触するのは前屈の場合(左上)であり、後屈の場合には精子が入っていけません(左下)後屈の方は、うつ伏せに寝ると精液の溜まりが子宮口に接触(右下)します。したがって、後屈の方は性行為の後に10~15分程度うつ伏せに寝て欲しいと思います。単純な事ですが、これだけ実行しただけですぐに妊娠される方がおりますので、子宮後屈でタイミング治療をされている方は是非お試し下さい。

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