☆妊娠の確率 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

一般集団での妊娠の確率はどのくらいでしょうか?本論文は、フランスでの全国調査から、半年で54%、1年で76%、2年で89%の方が自然妊娠することを示しています。

Hum Reprod 2012; 27: 1489
要約:2007~2008年にランダムに選ばれたフランスの64262名の女性(18~44歳)の中で、順調な月経周期があり男性のパートナーがいて性交のある方1089名を対象としました。調査の時期までの避妊していない期間(CDUI)を「意識しない不妊」期間と考え、その後の経過を観察しました。半年で妊娠しないカップルは46%、1年で24%、2年で11%となりました。

解説:一般集団での自然妊娠の確率を調査することは容易ではありません。病院に通っていないためデータの収集が難しいからです。本論文はCDUIという指標を用いたユニークな方法で不妊率を計算しています。本論文のデータから、妊娠した方は半年で54%、1年で76%、2年で89%となります。1991年にBraudeさんが「The Embryo」という書籍に記したデータでは、妊娠した方は半年で50%、1年で76%、2年で92%となっていますので、ほぼ同じ数値です。もっとも、性交頻度は国によって大きく異なります。コンドーム製造のDurex社の2005年の調査によると、性交回数が最も多い国はギリシャで1年に138回、フランスが120回、アメリカが113回、中国が96回、日本は最も少なくて45回です。欧米で性交回数が多く、アジアで少ない傾向があります。このように性交頻度が異なりますので、自然妊娠の確率は日本と欧米では違うかもしれませんが、日本ではこの種の検討はなされていません。