Design : Mayumi Tsuchida (Original)
今日は「制作の現場から☆Winter タペストリー」編ということで、
以前記載したことがあるかも知れませんが、
今回のような本や雑誌に作品を提供する場合、作家側が自由にやらせてもらえる訳では全然無いんですね。
テーマもある程度決められていますし、資材も決められていることもありますし、難易度も指定されますし、納期も短い。短い!!!
例えば、既に図案があって、「この図案を刺して、何かに仕立てて下さい」という依頼であればそれ程問題ないのですが、私にはそういう依頼は何故か来ない(笑)
たまにはそういうの、やってみたい気もするのですが、
刺繍作家を名乗っている以上は、オリジナルの新作をガンガン出さないといけないですし、性格的にもそちらの方が合っているような気がします。
・・・って、一体どっちなんだ!?って話ですが(笑)
とにかく限られた条件のなかで、最高のパフォーマンスを出したい、といつも考えています。
☆
私の場合、制作の一連の過程の中で一番集中力を要するのは「デザインを起こす」、つまり最初の段階で、ここは本当に集中力MAX状態になっています。
まず何を作るか、そしてそのコンセプトを固めてしまいます。
今回は直ぐに「雪の降る、静かなクリスマスの夜をイメージしたタペストリー」にしたいと考え、
次に、所有しているハーダンガー関係の本をいろいろ参考にみて・・・ということは一切せずに、やったことといえば10年前に一度旅行したことがある、デンマークの風景を思い浮かべること。
あれは丁度12月だったのですが、その時その場所にタイムスリップして、空気感や色彩を記憶から引き出しながら、頭の中に浮かんだデザインを一気にパソコンに打ち込む、
そんな感じでデザインします。
・・・というような事を生徒さんに言うと、
「憑依系?」「降りてくる系?」
って皆さんに言われるのですが(笑)、その辺りの感覚が、もしかしたら人より少し鋭いのかも。
☆
最終的にはクリスマスの時期、というよりも、もう少し広範囲な「冬の時期」というイメージのタペストリーに仕上がりましたが、最初のコンセプトから微調整はあるとしても、そこから大幅に逸脱したものが出来上がる、ということは私の場合は無いです。
First inspiration が大事、というか、表現したいものはそこにあるので、その最初のイメージを大切にしたい、ということです。
配色はデンマークの建物の壁の色や空の色が、どことなくイエローがかっていた、というイメージが強烈に残っていたので、ホワイトをベースに、ややイエローがかったペールトーンでまとめています。
「色が~」
って生徒の皆さんにいつも指摘されるので、色彩感覚も人より鋭いのかも知れないです。どうかな?
☆
今回一番難航したのは「Vinter」という文字の部分で、ここ本当にどうしようかなぁ~という感じだったんです。
編集部の方もかなり冷や汗ものだったと思うのですが、最終的には私は落としどころをつける人なので(笑)
例えば、クロスステッチでフランス語が入っている図案がよくあると思うのですが、生徒の皆さんに伺うと、
「読めない」「意味が分からない」
という方がかなりいらっしゃるので、私はこれまで自分の図案にフランス語を極力入れない、というか、英語にしていたんです。
今回は北欧がテーマの本なので、フランス語も変だし、英語もどうかな?と思い、いろいろ調べた結果、「Vinter」というスウェーデン語・ノルウェー語(冬の意味)が一番しっくりくるような気がして、それに決めました。
「V」を「W」に替えれば「Winter」になるので、そっちで刺してもいいですし(笑)
☆
またこのタペストリーの「裏コンセプト」として、「サンプラーとしても楽しめる」デザインになっており、ハートのポーチがファーストステップとすれば、タペストリーはセカンドステップとして取り組むのに丁度良い難易度に設定しています。
そして1作目でボタンホールSを入れたので、こちらはわざと外し、ボタンホールSに苦手意識がある方でも取り組みやすいデザインにしています。
いろいろ考えているでしょう?微に入り細に渡り。
刺繍以外のことはかなりザックリしている私なのですが。
あと特徴的な点は「ダイヤ柄」を入れたことで、クロスステッチ部門の方とデザインが被らない感じのやつで何かないかな?と考え、ノルディックセーターのデザインで時々見かけるダイヤ柄が新規性があっていい、と思って入れました。
全体として、針の流れ的に思い悩むような複雑なデザインにはしていないので、初心者の方でもゆっくり進めれば絶対に出来るはず。
ツリーの下、中央部分の織り糸だけはカットしないで下さいね!!!
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長々と書きましたが、今回これが一番言いたかったことです。注意!!!
以上です。
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