中間省略登記の歴史(前編)~助けてくれたやん~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 不動産の転売をよくしています。
  登記する時にかかる印紙や税金が高いのですが節約できないでしょうか。

登記に関する相談をピックアップ。
不動産の売買については,実費が結構かかります。
登記に際して「登録免許税」,不動産をゲットしたことについて「不動産取得税」です。「所得」ではなく。
対策はあります。歴史があります。

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A 契約を工夫すれば 2分の1 に節約できます!

A→B→C と順に売買が行われたとします。

昔は,3人で協力して「登記だけはA→Cとやろう。A・Cで売買が行われたことにしよう,対法務局では」と示し合わせることが流行っていました。
これによって,登録免許税,不動産取得税は,本来2回分のところ,1回分で済みます。

素直に考えると「実際の権利(所有権)の動き」と「登記上の動き」が違っています。
厳密に言うと違反です。
公正証書等原本不実記載罪という呪文のような罪名が付けられています。

では,なぜ「流行って」いたのか?
「法務局は分からない」からです。
登記申請書に「A→C の売買による所有権移転登記をして下さい」というメッセージがあれば,書類上矛盾がない限りスルーされます。
形式的審査権限とかいう呪文が唱えられています。

ちょっとまてい!
登記ちう重要な申請で「契約書」を出してるはずでしょ。まさか,A・Cという契約書を偽造したの?

違います。
確かに,売買契約書を提出することもできます。
ただ,通常は契約書は出さず,代わりに「申請書」のコピーを付ければ良かったのです。

で,実際上,中間のBを抜かした形の登記が流行ってしまっていたのです。
法務局も,理論上,「出された書類に不備があるかどうかだけをチェックする」というルールだったので,周辺事情(提出書類)から,「怪しいな」と思っても黙っていたのです。

時代は変わりました。

平成17年に不動産登記法,という登記関係のルールが改正になりました。

「登記原因証明情報」が要求されるようになりました。
ネーミングイマイチです。
要は,契約書なり契約内容の説明を書面にしたやつを提出する,ということになったのです。

ある意味KYが現れました。
(※「空気読めない」ということで,常識がずれていることを指します。)

なんと,「契約は2回。A→B→Cだけど,3人で仲良く『A→Cで行こう,A→Cで行こう』と決めました。だからA→Cで登記して下さい」とアピールしてしまいました!

ここからが長い闘いになりました。

法務局:いや,実体と一致しない登記はダメだよ。
申請者:いやいや,いままでやってくれたやん!
法務局:一致しないと知ってしまったので。
申請者:今までも知っててやってくれたやん!節約させてくれたやん!助けてくれたやん!
法務局:お客様!困ります。そう言われましても・・・お客様!できません!
申請者:ほな,返品でっか?
法務局:返品というか・・・却下です。

申請者ぶちきれる。

申請者は登記申請の「却下」が不服として,こともあろうに,「却下の取消」を求めて,国を相手取り,裁判所に提訴!

裁判所:えーと。これ,実体と登記が一致してないですよね・・・
原告:今までやってくれたんですよ。法務局は新設でええやつだったんですよ。それなのに・・・
裁判所:「今までは親切だった」という主張で良いですか。
(長いので省略)
(本当に長くなって,1審判決→控訴)

控訴審の判決
結論は 中間省略登記は違法(登記申請は却下すべき) というものでした。

すごい当たり前のことなのに,すっごく丁寧に判決文で説明を書いてくれました。

・・・で,話しは戻って。
中間省略登記は可能,という結論です。
(厳密には中間省略と同じ状態にすること,が可能なのです)
判決でNGと言われたとこで,ダメだ!と思わせたとこで・・・

続く。

※「引っ張り」と言います。ガンダムとか,アムロとか,ドラゴンボールとか,あられちゃんを想い出しますね!

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<裁判例(抜粋)平成20年3月27日最高裁判所>
 1 争点1(本件処分の適法性)について
   控訴人は,本件の申請情報は,登記権利者である控訴人が,平成17年7月13日売買により本件建物の所有権を取得したことを理由として登記義務者であるAから所有権の移転登記を求めるという内容であり,他方,本件の登記原因証明情報は,本件建物の所有権がAからB,Bから控訴人にそれぞれ売買により移転し,Aから控訴人に移転登記をすることをBが承諾したことにより,控訴人が適法な登記権利者,Aが登記義務者に当たることを示す内容のものであること,これによれば,本件の申請情報と登記原因証明情報は合致しており,不動産登記法第25条第8号所定の登記の申請の却下事由は存在しないというべきであること,以上のとおり主張し,これを理由に,本件処分は違法である旨主張しているので,以下にはこの点について検討をする。
   ところで,不動産登記法第18条は,「登記の申請は,次に掲げる方法のいずれかにより,不動産を識別するために必要な事項,申請人の氏名又は名称,登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供しなければならない。」と規定し,不動産登記令は,申請情報として,第3条第6号で「登記原因及びその日付」を掲げている。同法第59条第3号は,権利に関する登記の登記事項として,「登記原因及びその日付」を掲げ,同法第60条は,「権利に関する登記の申請は,法令に別段の定めがある場合を除き,登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。」と規定している。そして,同法第5条第2項ただし書は,登記原因について,「登記の原因となる事実又は法律行為をいう。」と定義している。また,同法第61条は,「権利に関する登記を申請する場合には,申請人は,法令に別段の定めがある場合を除き,その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。」と規定し,同法第25条において「登記官は,次に掲げる場合には,理由を付した決定で,登記の申請を却下しなければならない。」として,第8号は,「申請情報の内容が第61条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。」と規定している。不動産登記法及び不動産登記令の上記の各規定の文言及び趣旨にかんがみれば,上記法令は,権利に関する登記については,申請情報に係る登記義務者と登記権利者の間の「登記原因及びその日付」を登記事項とし,もって,当該申請に係る権利に関する登記に係る登記義務者と登記権利者の間の登記原因及びその日付を公示することとし,他方,権利に関する登記を申請する場合には,申請人は,法令に別段の定めがある場合を除き,その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならないこととして,申請人に対し,当該申請に係る権利に関する登記に係る登記義務者と登記権利者の間の登記原因及びその日付を証する情報を提供することを義務付け,これにより,権利に関する登記の登記事項である登記原因及びその日付が客観的な裏付けのあるものであることを確保し,もって,不動産の物権変動を公示するため権利の変動に逐一対応する登記をすることとし,申請情報と登記原因証明情報とを合致させて登記内容に物権変動の過程を正確に反映させようとすることを制度の趣旨とするものであると解するのが相当である。
   これを本件についてみるに,本件申請において,控訴人が登記所に提供した不動産登記法第61条所定の登記原因証明情報の内容は,前記のとおり,本件建物については,AからBに対し,平成17年7月12日に売却され,本件建物の所有権がAからBに移転したこと,次いで,Bから控訴人に対し,同月13日に売却され,本件建物の所有権がBから控訴人に移転したというものである。これに対して,控訴人が登記所に提供した同法第18条所定の申請情報は,平成17年7月13日に本件建物をAから控訴人が買い受けてその所有権を取得したというものである。以上によれば,本件申請における不動産登記法第18条所定の申請情報は,本件建物の所有権が平成17年7月13日にAから控訴人に売買により移転したというものであり,同法第61条所定の登記原因証明情報は,本件建物の所有権が平成17年7月12日AからBに移転し,次いで同月13日Bから控訴人に移転したというものである。したがって,本件においては,申請情報と登記原因証明情報が合致しないことは明らかであるから,不動産登記法第25条第8号所定の登記の申請を却下するべき事由があることは明らかといわざるを得ない。控訴人は,本件の登記原因証明情報には,上記の他に,A,B及び控訴人は,登記権利者を控訴人,登記義務者をA,登記原因を平成17年7月13日売買として登記することに異議なく同意した旨の記載があること,したがって,上記の登記原因証明情報は,控訴人が適法な登記権利者,Aが適法な登記義務者であることを明らかにするものであって,結局本件における申請情報と登記原因証明情報は合致している旨主張するが,本件の事実関係に照らすと,確かに,本件建物の所有権は,AからBに,次いでBから控訴人に順次移転しているから,本件建物所有権の移転について,控訴人が結果として適法な登記権利者となり,また,Aが登記義務者となることは否めないが,そのことから,本件建物所有権が,順次AからBに,また,Bから控訴人に移転したという事実が変容を受けて,本件建物所有権がAから控訴人に直接移転したことになるはずのものではないし,また,本件の登記原因証明情報に控訴人の指摘する上記のA,B及び控訴人は,登記権利者を控訴人,登記義務者をA,登記原因を平成17年7月13日売買として登記することに異議なく同意した旨の記載があるとしても,そのことから,真実は,上記のとおり,本件建物所有権がAからB,Bから控訴人へと順次移転したのに,これがAから控訴人に直接移転したことになるはずもないのであって,控訴人の主張するような理由で,仮に,前者と後者,すなわち,本件建物所有権がAからB,Bから控訴人へと順次移転したこととこれがAから控訴人に直接移転したこととを同一視するならば,本件における申請情報が真実を示している登記原因証明情報と異なることを是認することとなるのであって,このことは,不動産登記法第25条第8号が申請情報と登記原因証明情報が合致しないときは申請を却下するべきであるとして,不動産の物権変動を公示するため権利の変動に逐一対応する登記をすることとし,申請情報と登記原因証明情報とを合致させて,登記内容に物権変動の過程を正確に反映させようとする不動産登記法及び不動産登記令の前記の趣旨に反することになることは明らかである。
   なお,控訴人は,平成17年法律第29号による改正前の不動産登記法(以下「旧法」という。)においては,控訴人の主張するような登記は,中間省略登記として登記実務上認められていたかのように主張することろ,登記を申請するには,旧法においても,第35条第1項第2号で「登記原因ヲ証スル書面」を提出する必要があるとされ,第49条は,「登記官ハ,左ノ場合ニ限リ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ申請ヲ却下スルコトヲ要ス」として,第7号は,「申請書ニ掲ケタル事項カ登記原因ヲ証スル書面ト符合セサルトキ」と規定していたから,旧法下においても,本件と同内容の登記申請がされ,登記原因を証する書面として本件における登記原因証明情報と同内容の書面が登記所に提出された場合には,上記第49条第7号に該当するものとして登記申請が却下されるべきであったのであり,このことは現行の不動産登記法の上記規定の場合と同様であって,不動産登記法が現行法に改正される前と後とで,登記原因と異なる登記申請は却下するという基本的な考え方は何ら変更がないことは,上記の旧法及び現行法の不動産登記法の上記各規定の内容に照らして,明らかである。確かに旧法においては,その第40条で「登記原因ヲ証スル書面カ初ヨリ存在セス又ハ之ヲ提出スルコト能ハサルトキハ申請書ノ副本ヲ提出スルコトヲ要ス」と規定していたことから,旧法第35条第1項第2号所定の登記原因を証する書面に代えて登記申請書の副本を提出した場合には,形式的審査権しかない登記官としては,登記申請に掲げられた事項と真実の登記原因が合致しないことを知ることができないまま,提出された登記申請書の副本に基づいて登記申請を受理する結果となり得ることがあったことはうかがわれるものの,それは結局登記原因が事実と異なるにもかかわらず,旧法第40条が登記原因を証する書面に代えて登記申請書の副本の提出を認めていたことにより,虚偽の内容の申請を結果的に排除できなかったというに過ぎないものであって,このことから,旧法下でも,控訴人の主張するような中間省略登記が登記所において正当なものとして受理されていたことにはならないことは明らかである。