売れ筋でないマニアックな本ばかり仕入れて


閑古鳥の鳴くような(笑)古書店を営んでいた父。



それでも自分の好きな本に囲まれて満足そうでした。




浜崎あゆみの曲で、



きみのこと 思い出す日なんてないのは


きみのこと 忘れた時がないから




なんていうフレーズがあったかと思いますが、


まあ私にとっての父とはまさにそういう感じなんですね。


他界してから10年以上たった今も


いつでもすぐ近くに温もりを感じることができます。





この前、母と会話していた時にふと


苦笑いしちゃうような父との記憶が甦ってきたのですが。笑



「そーいえばあんた昔、詐欺にダマされそうになったことあるよね~。(爆笑)」





て、、、えーそうですよ、そーなんですよ。




多分、小学校の高学年くらいの時なんですけど、


家に電話がかかってきて。



いわゆる学習教材(超高額)の勧誘だったんですけどね、


なんか話を聞いてしまって、そのうちに


この教材で勉強すれば秀才になれる!って思い込んでしまったのですよw


あー恥ずかしいw




なんだろう、しかも多分あれは今思えばデート商法にも似たようなやり口だったのかな。。


営業の人は男の人だったのですけど、「僕の為にご両親を説得してください。」みたいな方向性で、


私はこの人の役に立たなければいけないといったような気にもさせられたわけですよ。


あー恥ずかしい恥ずかしいw




人を疑うことをしらない単純バカ純粋無垢な私はですね、


さっそく両親にそのことを話しました。


うちはお金持ちじゃなかったですけど、


勉強したいと願う子供の要求に親が反対するはずがないと。


(いやー悪い商売ですねー)





だけどうちの両親もムダに長く生きてません。


瞬時に


「この子ダマされてる。」と気づいたそうですw



なるべく私を傷つけないような言い回しで諦めさせようとしてましたが


私もまさか自分がダマされてるとは思ってないわけで


決意は固く一歩も譲りません。




そしてここからがうちの父の面白いところで。



もうこうなったらこの子の「ダマされるという体験」に


とことんつきあってやろうじゃないかと決めたらしいのです。




私が、自分自身で気がつくまで。





どういう経緯か細かいことはもう忘れましたが、、、



その教材をもうほとんど購入するかしないかの段階で、


販売元の事務所がある新宿へ父と一緒に行きました。


説明会のような、合同販売会のような感じ。



私はそこで初めて、違和感を感じました。





営業マンが全員ホストのような容姿だったことや


来ていた子供のほとんどが女子だったこと





会場のなんと例えたらいいかわかんないような高揚感?みたいな。




で、私は結局、「この教材は欲しくない」と自分で結論を出したわけです。






会場を出る時に、父はなんだかそこでいくらかお金を払っていました。


多分法律的にはなんら効力のない違約金めいたものだったんじゃないかな。


もちろん父も払う筋のないお金とわかっていながら、この「ストーリー」に味つけしたんでしょう。


それか騙すという役割を演じてくれた人への謝礼のつもりだったのか。笑




でね、そのあと2人でうなぎを食べました。



まだ父は、「ほらな、お前はダマされていたんだよ。」とは言いません。



でも笑ってこう言いました。




「これから先、うなぎを食べるたびにお前はこの日のことを思い出すかな。」






私はそこではじめてなんだか恥ずかしいような、情けないような、悔しいような


申し訳ないような色んな感情がぐちゃまぜになって



ほとんど泣きそうだったか、実際泣いてたかは覚えてないけど




「お父さん、ごめんね。」



って言ったんです。





そしたら







「お前のおかげで旨いうなぎが食えたから、いい。」





ってやさしく笑う父・・・













あの時もしも、最初から頭ごなしに「バカ、ダマされてるんだよ!」って言われたとして、


私は納得してなかっただろうな~って。



で、この体験をしていなければ、またどこかで同じようにダマされただろうな~って思うんです。




うちの父はこういうやり方で、私の経験を奪わないでくれたんですよね。






それは本当に感謝しています。







まあ、今振り返れば、のハナシですけどね(・∀・)





・・・それにしても単なる記憶も強い感情がセットになると強烈ですね。


あの日の会場の室温、新宿で歩いた地下街の様子





あの時父と食べたうなぎの味までがつい昨日のことのようです(苦笑)








わたしたちはあなたにどんな記憶を残してあげられるかな。 







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私も親として、過保護になりすぎず過干渉になりすぎず






娘の心を育んであげたいなと思った秋の夜でした。