朔太郎のエッセイだったり短編

朔太郎のエッセイだったり短編

「今さらブログのようなものを始めたのはいいんだけどね」
と言って、コーヒーをひとくち飲んだのは良いが
熱くて噴いた。


最近はもっぱらブクログのパブーの方に、朔太郎という名前で投稿してます~。
Amebaでブログを始めよう!

   またこんな時間になってしまった。既に最終電車である。まあそれはいいのだけれど、とりあえず何かお腹いっぱいになるものを食べたい気持ちと、このまま何も食べずにシャワーを浴びて寝てしまおうかという気持ちが、まるで大事な結果発表を待って掲示板の前でそわそわしているビジネスマンのように、先ほどから僕の頭の中で行ったり来たりしていた。こちらの壁にぶつかると向こうの壁まですたすた歩き、向こうの壁にぶつかるとこちらの壁まで戻ってくる。その繰り返し。途方もないほどお腹が空いているし、食べ物の存在意義すらどうでも良いくらい興味もなかった。要するに、自分でもよく分からないのだ。
   その辺のくだらない飲食店でお金を支払ってまで何かを食べるのもしゃくだった。もちろん料理なんてする気にもならない(料理なんてするくらいなら水でも飲んでる方がましだ)。困った。たまにこんな気持ちになるときがある。前にこんな風になったときはどうやって切り抜けてたっけ?   と考えてみたが、まったく思い出せそうもなかった。

「それで?」と彼女は言った。「“わたしの”ごはんの時間が遅くなった理由と、あなたの“その”揺らいでいる気持ちが、どこでどう結びつくのかちゃんと説明してもらえるのよね?」
「うん」と僕は靴を脱ぎ、ワイシャツを洗濯機に放り込みながら言った。「説明なんてしたくない。ごはんが食べたければ好きなだけ食べればいい。でも今は用意なんてしたくもない」
   僕だって疲れていれば苛々くらいするのだ。何故だか今日は引く気にはなれなかった。
「ふうん、なかなか興味深い意見を口にしたわね。面白いわ。さくちゃん?」
「はい!」
「この人疲れてるみたいだから、今夜はゆっくり寝させてあげましょう。ごはんも我慢できるわね?」
「え!?   ……は、はい。できます!」     
   彼女は、ふう、とひとつため息をついて、にっこりと微笑んだ。「あなたちょっと疲れてるのよ。もういいから早く寝なさい。その代わり……明日の朝までにあなたの大事な大事なレザーだか何かのソファの柄が、熊の縄張りのマーキングのようになっているかもしれないことは了承しておいてね」
   熊のマーキングだって?   ふん、爪痕だか何かのことを言ってるんだろうけど、どうだっていい。何せ僕は苛々しているのだ。
「ふん、靴下を脱いでからきちんと用意するので少々お待ち頂けますでしょうか?」と僕は言った。

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「わかればいいのよ」