先日更新した記事『退院前の面談』ですが、説明不足で分かりにくい点があったと思うので補足として今回の記事を更新します。

そもそも私がかかった先生の治療方針が分からないと私が質問した意味も分からないですよね。



まだまだ脱ステ継続中ではありますが、4ヶ月間入院してそれなりの脱ステの心構えが出来、手応えを感じ、今後に期待が出来るようになって来た為、今回は先生の治療方針を簡単にまとめたいと思います。



先生の治療には基本方針はありますが、患者の希望を取り入れたり、症状に応じて対策を変えたりと患者により多少の違いがあります。

その為、今回の記事を『先生の基本方針』として、次回の記事を『その治療方針に基づき私が試した事、基本方針には反するけれど試した事』として更新します。



※この治療方針は、あくまでも私が今回の脱ステで行った事をまとめたものです。
現在脱ステ中の方々は、自身の脱ステ方法や信じているものと異なる場合もあるかと思いますが、その点はご了承下さい。



**********************



【脱ステ主治医】
阪南中央病院 佐藤健二先生


※先生のブログはこちら→『佐藤健二のブログ』

※佐藤先生のプロフィールや先生の患者が運営している会のHPはこちら→『atopic』

※病院HPはこちら→『阪南中央病院』
※先生の著書「患者に学んだ成人型アトピー治療 脱ステロイド・脱保湿療法」(つげ書房)↓


つやぷる素肌を目指して☆絶対アトピー克服!-090728_1811~02.jpg



【佐藤先生の治療方針概要】


■脱ステロイド・脱プロトピック


1)ステロイドやプロトピックは一切使用しません。
内服ステロイド、内服の免疫抑制剤ネオーラルも同様使用しません。



■抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の内服について


1)抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤は脱ステの痒みにはほぼ効きません。
痒み止めを飲んでいるという安心感等、精神的な作用に対して用いているようです。
本人の希望により内服無しにする事も可能。
内服薬についても様々な副作用がある為、時期をみて止めるのが望ましいとしています。



■睡眠薬の内服について


1)脱ステ時の不眠対策に使用。
脱ステ時には頻繁な離脱と皮膚再生を繰り返します。
最初は重い離脱と緩やかな皮膚再生を長いサイクルで繰り返し、後に軽い離脱と急速な皮膚再生を短いサイクルで繰り返します。
この離脱から皮膚再生への効率の良い移行と、正常な皮膚に早く戻して行く為には睡眠が重要です。


また、良質な睡眠と起床後の生活という1日の生活バランスも大変重要としています。
生活リズムを正して体の機能を正常化していく為にも、夜は十分に眠り、朝は起きて行動をするという治療方針に基づき、脱ステ中は睡眠薬を使用する場合が多々あります。

但し依存性がある為、症状が軽減して睡眠が取れるようになって来た場合は、ゆっくりと減らし止めて行く方針です。



■抗生剤・抗ウイルス剤の内服について


1)細菌感染にかかった場合は抗生剤を内服します。
膿が出たり感染症の症状を伴っている場合に服用し、症状が収まると耐性菌が付くのを防止する為に服用を中止します。
部分的に小さい範囲で膿や滲出液が出ている場合は抗生剤を使用せず様子を見る事もあります。


2)ヘルペスやカポジ水痘様発疹症にかかった場合も同様に抗ウイルス剤の内服や点滴投与を行います。

3)掻き壊し等による通常のビランや皮疹との見極めが難しい場合も多く、診断には注意が必要。



■脱保湿


1)保湿剤等


肌に塗る軟膏やクリーム、オイル、化粧水は使用しません。
脱ステ、脱プロと同時に脱保湿も行います。
ワセリン、アズノールクリーム、亜鉛化軟膏、馬油、自然派化粧水等もほぼ使用しません。
例外として、貨幣状湿疹等の皮疹や部分的なビランに一時的に亜鉛化軟膏を使用する場合があります。

通常は脱ステと同時に脱保湿を行いますが、既に脱ステ済みで症状が軽減しない場合や数年後に悪化したような場合は後から脱保湿のみ行うパターンもあります。


長期に渡りステロイドを使用してステロイド依存となっている皮膚の場合は、同時に保湿依存となり皮膚が正常に機能しない場合が多々あり、そういった皮膚の場合は脱保湿により乾燥を促し、自然に自身の皮脂を出す方向に持って行く事で改善する事が多い為、脱保湿を重要としています。


2)お風呂やシャワー


お風呂やシャワーも同様に皮膚を保湿する事になります。
その為、基本的には入浴時間もシャワーを当てる時間も短縮します。
どちらも3分程度を目安に、症状によってはより肌が水に触れる時間を少なくするようにします。

感染症の心配があるビラン状の皮膚の時は石鹸を使用し軽く流します。
ビランが無くなり皮膚が乾燥して来た時期には、汚れの気になる部分以外は石鹸を使用せずに水で流す程度にしたり、1日置きの風呂やシャワーとする等、患者や症状により調整します。

この時の水温は出来るだけ低いのが望ましく、夏は水、冬はぬるま湯が良いとしています。

3)温泉


温泉もリラックス効果がある反面、保湿効果が高い為、脱保湿中は禁止としています。
皮膚が正常化して安定した場合は、自己管理しながら短時間から試してみるのは可能としています。


4)布団


就寝時の布団については、掛け過ぎて保温し過ぎると、体中が蒸れて同時に全身の保湿になるとしています。
布団をめくった時に湯気や熱気が出るようなら掛けすぎの為調整します。

また、脱ステ時の体力消耗や不眠から昼寝をする場合も布団にくるまり眠るのは1日の大半を全身保湿する事に繋がる為禁止とされています。

昼間眠る場合は、椅子に座って眠ったり、ベッドを起こして布団に入らず仮眠を取る程度が良いとしています。


5)包帯やタオル等での皮膚の保護


脱保湿中は、皮膚を出来るだけ湿らせないように、蒸れないようにして乾燥を促す事を基本としています。

とは言っても乾燥による皮膚の捲れや亀裂は自身の微動によって起こる空気の流れも凍みる程痛いもの。
その場合は、包帯をグルグル巻かずにガーゼを患部にひと巻きする程度に保護し、通気性も同時に保つようにとしています。

腹巻き、タイツ、タオルでの首の保護も同様に保湿になるとしています。
しかし、例外として、多少保湿になっても掻き壊し防止の為に皮膚を被い保護する場合があります。
これはそれぞれの症状等によっても違う為、基本方針から外れて様子を見ながら試してみる事になります。


6)保湿石鹸等の使用


入浴時の石鹸やシャンプーは、潤い成分の入っていないものを勧めています。
先生の治療では、基本的には牛乳石鹸青箱とメリットを用います。潤い成分の入っていないシンプルなものであれば代用は可能。


7)化粧


顔の皮膚が正常化した場合、女性の場合は化粧がしたくなるものですが、原則禁止としています。
特にファンデーションで顔を覆う事は粉の下に水分や皮脂が溜まり、保湿に繋がるとしています。
例外として唇は粘膜なので多少の保湿では悪化しない。

佐藤先生の元で脱ステをした人も、症状が安定した場合は基礎化粧品や通常の化粧品を使っている方もいますし、先生の著書でも皮膚の状態が安定して、どうしても化粧が必要な場合は、2~3日程度から試験的に保湿や化粧を試すという方法が記載されています。

但し、ステロイド依存や保湿依存が長期化して皮膚の萎縮が激しかった場合等は特に、化粧品を使用する事によって保湿が促進され、赤みが出る事が多い為注意が必要です。
これは、皮膚の細胞に残る『ステロイド依存や保湿依存の際の細胞記憶』によるものとしています。



■滲出液対策


1)滲出液には皮膚再生に必要な良質な蛋白質が多く含まれているので拭き取らない。


2)特にティッシュには化学物質が多く含まれる為、ビランになり滲出液が出ている患部に当てない。


3)滲出液が流れ出る場合はガーゼで軽く抑え、ガーゼ1~2枚を貼り付けておく。
貼り付かない場合は何も当てる必要は無く患部の通気性を保った方が良い。


4)顔や頭、耳等の滲出液が多い場合は、就寝時ベッドの頭部側の高さを上げる。クッション等を重ねて調整しても良い。


5)水分摂取過多の場合は滲出液が増える為、適宜制限をして調整する。(後述)



■水分制限


1)滲出液対策として水分制限を行う。
脱ステは滲出液を伴ったり頻繁に落屑を繰り返すが、これにより体内の蛋白質も多量に流出する。

正常な皮膚の再生には蛋白質が大変重要だが、過剰な水分摂取により滲出液が増えて止まらなくなるると蛋白質の流出も進み皮膚の再生も停滞する。

症状の悪化により喉が渇いたり、食欲が減退して固形物より流動物を欲したりと、余計に水分摂取過剰となり悪循環になりやすい。
この連鎖を絶ち、滲出液の増加を抑え、皮膚乾燥させて正常に再生させる為に水分摂取制限が必要。


2)入院治療では、食事に含まれる水分を除き『日常で摂取する水分量』を1200~1500mlとする。
体重や気温、発熱状態によって異なるが通常は1200ml程度が妥当。
気温の高い夏に汗をかいた場合はその分を増やし、冬は減らして調整する。
発熱した場合も同様に増やす。目安として38度を超える発熱の場合は制限を無くして水分摂取が必要。


3)この水分計算では、食事として摂る『味噌汁』や『牛乳』、『野菜やごはんに含まれる水分量』は計算に入れないが、間食として摂るドリンクや、ヨーグルト、プリン、フルーツ等の流動物は『日常で摂取する水分量』として計算する。


4)個人での水分制限(入院以外で独自で行う水分制限)は、食事に含まれる水分計算が難しい為、喉の渇きや尿の色で判断する。
一度にゴクゴクと飲まず、間隔を空けて少しずつ飲み、多少喉の渇きを残す程度の摂取が望ましい。
尿の色は透明に近いと水分摂取過多の可能性が高い為注意する。


5)脱ステ直後は、電解質バランスが狂い高ナトリウム血症となる場合もあるが、この時は無理な制限をせずに多少制限を緩めて水分摂取する事も必要。
高ナトリウム血症の症状としては、頭がぼぉっとしたり異常な喉の渇きが起こる事があるが、正確には医療期間

で血液検査をして、ナトリウムが正常値か確認が必要。

6)滲出液が減り皮膚が正常になって行くと喉の渇きがおさまる場合が多い。
この時期になると、多少水分を摂りすぎても滲出液や炎症として皮膚表面に出ない事が多い。



■蛋白質摂取


1)脱ステ時期には滲出液や落屑が増え、皮膚の再生の為に必要な蛋白質が体外に流出しやすい為、積極的に蛋白質摂取する事が必要。


2)摂取する蛋白質については、動物性、植物性問わずバランス良く摂るのが良い。
納豆、豆腐、大豆、豆乳、牛乳、ヨーグルト、チーズ、肉、魚等があるが、塩分や水分の含有量に注意する。



■食事制限


1)基本的には食事制限はしない。
何でもバランス良く食べ、栄養を摂る事が重要。
自覚症状として明らかにアレルギーのある食品は各自で制限をする。


2)皮膚に悪いとされる嗜好品についても過剰な制限をしない。

砂糖や甘いお菓子等も、バランス良く食事を摂った上で、たまに食べる事に関しては問題無い。

コーヒー、アルコールに関しては、痒み成分も含まれるがリラックス効果もある為、試してみて痒みを強く感じる場合は控え、リラックス効果により痒みを忘れる場合は適度に摂っても問題は無い。



■アレルギー検査


1)食事、ダニ、花粉、金属等のアレルギー検査は不要。
IgE数値の高さと症状は必ずしも比例せず、アトピーの原因とは別である。
数値が高くても症状となって表れない場合も多々ある為、検査結果では無く、自覚症状に目を向ける。
自覚症状として表れた場合は、次回から注意する事で十分対応出来る。



■サプリメント・健康食品等


1)バランスの良い食事をしている場合は、食品から十分な栄養が摂取出来ている為、サプリメントや健康補助食品は不要である。


2)これらの製品は法律で定められた薬物では無い為、十分な安全管理がされていないものも多い為原則禁止としている。
内容物が不明な為、不純物が多量に入っている可能性もあり、その副作用も不明である。
また副作用についても追跡調査をする義務が無い為、不明なままになっている場合がある。


■漢方


1)副作用は無いとされている漢方にも、甘草などいくつかの漢方にはステロイドと同様の作用、副作用を有するものがある。
また、電解質バランスを崩し、脱ステ中の離脱症状を長引かせたものもある為、原則禁止としている。



■規則正しい生活


1)脱ステ中は、痒みや痛み、不快感より不眠が起こりやすく、朝方眠り昼に起きる等、昼夜が逆転している場合がある。
昼夜が逆転していると症状の改善が遅い場合も多い為、生活リズムを正す事が重要。

睡眠薬を利用してでも夜は眠り、朝は起きる事、規則正しく食事をして、昼間は身の周りの掃除や運動等で体を動かすように意識する。

また、掻かない為に夜眠らずに起きているという人も多いが、掻いても夜眠った方が皮膚の改善が早い。



■運動


1)運動する事により血行が良くなり、皮膚症状の改善に効果が見られる為、治療の一環として勧めている。
脱ステ初期の場合は滲出液が多かったり亀裂が入り痛みや消耗も激しい為、そのような場合は無理をせずに休息を取り、最初は疲れない程度の軽い運動から始める。


2)具体的には、『休まず30分程度の早歩き』で良い。
休まずに早歩きする事で有酸素運動となる為、ゆっくり長期間歩くより効果的である。



■鍼や整体等


1)基本的には規則正しい生活と適度な運動、バランスの良い食事で十分である。



■掻く事に対して


1)掻く事に対して罪悪感を持たない事。
脱ステ時の痒みは我慢出来るものでは無く、我慢しようとする事でストレスにも繋がる為、周囲も「掻くな」とは言わない事。
掻いても少しずつ強い皮膚になり、最終的には掻いても傷が付かないようになる為、掻いても良い。



**********************



以上、佐藤先生の治療方針を簡単にまとめました。
先生の本に書かれている事のほんの一部となりますが、私が毎日の診察で確認した内容や先生から都度指導された内容をまとめたものです。


こちらはあくまでも先生の基本方針をまとめたものなので、実際には、この方針に基づき私が実際に試した事の他に、方針に反して先生と相談して試した事などもあります。

また、先生が効果が無いとしている事や原則禁止としている事でも、症状が安定してから試してみたい事もあります。
その詳細については、次回まとめて更新予定です。