スタッフ
脚本・演出:西田征史
振付:akane
キャスト
奈美:花總まり
千夏:瀬奈じゅん
みどり:小林綾子
桜:馬場園梓
好恵:佐藤仁美
奈美(高校生時代):渡邉美穂
千夏(高校生時代):須藤茉麻
探偵、奈美の夫、みどりの夫など:片桐 仁
あらすじ
主人公の奈美(花總まり)は夫と高校生の娘を持つ、専業主婦。
自分のことより家族を優先し暮らしていますが、肝心の家族はどこ吹く風の様子です。
奈美が入院している母のため病院を訪れた際、偶然にも高校時の同級生・千夏(瀬奈じゅん)に再会します。
千夏から癌で入院していること、そして余命が幾許もないことを告白され、ショックを受ける奈美。
高校時代を懐かしく語る千夏を見、高校時代の友人たちに逢わせることを決心するのですが・・・
この舞台は韓国で大ヒットした映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイク版。
80年代のヒット歌謡曲を中心に、歌とダンスで青春物語を彩るステージです。
感想
コロナの影響もあり舞台を観る回数がかなり減ってしまったのですが、久しぶりに感想を書いてみました。
相変わらずの雑文&駄文になるかとは思いますが、よろしかったらお付き合いください。
以下、ネタバレを含んだ内容なので舞台を観ていない人は読まないでくださいね。
SUNNYはとても観やすく分かりやすい話で、ミュージカルが苦手だったり舞台観劇初心者にもオススメです。
シーンの転換が早く動きがあるため、飽きることがありません。
中・高校演劇に向きそうな内容でした。
80年代のヒットナンバーというと昭和感が漂ってしまいそうですが、決してそんなことはありませんよ。
想像していた以上に高校時代のシーンが多く、現代と同時進行していくので古臭さを感じませんでした。
基本は「ベタ」なストーリーなのでもうひと捻り欲しいと感じましたが、王道が好きな人には好ましかったのではないでしょうか。
願わくば、使用している楽曲と台本が無関係なのではなく、多少なりともリンクしているとよかったですね。
例えばですが、冒頭は斉藤由貴さんの「卒業」はいかがでしょうか。
卒業できなかったのにあえての選曲するところに繋がりがみえてきそうな気がします。
高校生時代グループには「新しい学校のリーダーズ」等の楽曲も取り入れ、レトロな中にも親近感を持たせると幅広い年齢層に響くのではないでしょうか。
ここからは、舞台を観ていて湧いた疑問をピックアップしていきます。
大きく4点に絞ってみました。
①なぜSUNNYのメンバーは退学になったのか
シンナーを吸い、乱闘騒ぎ&自殺未遂を起こした美樹が退学になったのならわかりますが、なぜ奈美らSUNNYが退学になるのか本当にわかりませんでした。
先生が「あなたたちを庇いきれない」といいましたが、奈美はむしろ美樹にシンナーを吸わされそうになった被害者ですよ。
アイドル志望の芽衣子も美樹に顔を傷つけられた傷害事件の被害者です。
まして千夏や桜や好恵のどこに非があるというのでしょう。小競り合いが原因ならクラス全員退学になりますがそんなことはあり得ません。
うーん。わからなすぎる。学校を相手取り、不当退学で訴訟しましょう。勝てます。
②SUNNYは6人組じゃなかったのか
この舞台はタイトルロール通り、SUNNYというグループ名の女の子たちが織りなす友情物語が軸なのですが、過去では重要人物である芽衣子がいつまで経っても現代に出てきません。
「ははーん、どうなるかどうなるかと焦らしての御大登場だな」と思いましたよ。
どう予想したかといいますと・・・
千夏の病室に集まっているSUNNYのみんな。
新聞を握りしめ病室に飛び込んでくる芽衣子、と同時に千夏の臨終を伝える医師(もちろん片桐仁さん)。
芽衣子にビンタする奈美「遅すぎるよ!」。うなだれる芽衣子「ゴメン・・・」。
数日後、奈美に連絡する芽衣子、「ねえ、みんなで文化祭のやり直し、しない?」
「もう年だもん、動けないよ」
「動けなくたっていいじゃん、あの頃だって動けなかっただろ」
「・・・芽衣子が新リーダーになってくれるなら」と心が動く奈美。
「駄目だよ、リーダーはアンタだ。千夏のためにみんなを集めてくれたのは奈美だろ。千夏もそれを望んでるはずだ」
「芽衣子・・・」
「私はダンス指導をするよ。これでも元アイドル志望だからね。奈美の振付じゃ全員タコ踊りになっちまう」
「もう!ひどいっ」
そう、新たに芽衣子を加えてあの時を取り戻すことになったのだ。
と、ここまで考えていたのです。
病的な妄想力は置いておくとして、ベタ中のベタならこういう展開ですよね。
現実にはチラッと舞台の隅に出てきただけで、まあ、記憶に残りません。
現代の芽衣子は本筋と無関係といってもいいでしょう。チラシに顔もありません。
なぜ!?本当になぜっ!?
③中退後会わなかった理由
ライバルグループリーダーが自殺未遂をしたこと、退学になったこと、芽衣子の顔に傷が残ったことは気まずい要因であることは間違いありません。
しかし、ピタッと全員が連絡を取り合わなくなるのは不自然です。
ここは退学後に千夏の号令が必要だったんじゃないでしょうか。
「SUNNYは今日で解散する」
「どしてさ、わは嫌だよ」
「新ルール追加、お互い二度と会わないこと。わかったね」
というような展開があれば納得できるのにと更なる妄想を広げてみました。
④結局はお金で解決か
この舞台では、教師がことあるごとに「女の子は“おしとやか”にしなさい」と言っていました。
それは彼女らの内面に響き反発エネルギーとなり「自立」した大人になることへの前フリだと思っていたのです。
ところが未来の自分に向けてメッセージが、“綺麗になりたい”“痩せたい”“いい男と付き合いたい”“結婚したい”で、表面的かつ自立していない願望のままであることが残念でした。
唯一自立への夢を語った千夏は、死後友人たちに遺言を残しますが、弁護士斡旋だったり職紹介だったり保険加入だったり生々しすぎます。お金や立場で解決した感が否めません。
現実かもしれませんがあまりにもクールじゃないので、もっと青春物語の爽やかさを期待したいところです。
そして主人公である奈美がこれから先も「絵を描いていく」というはっきりとした指標が欲しかったですね。
その他にも、シンナーは飲むのではなく吸うのでは?とか、癌の余命告知は月単位ではしないのでは?とか、飲酒・喫煙が通常運転の学校?とか、ヤンキー女子高中退グループの未来が社長やセレブ妻は流石にご都合主義?とか、カーテンコールを含め大ラスのナンバーは“♪SUNNY”では?などなど細部のツッコミが止まらなかったのですが、こうしたらどうだろう、ああしたらどうだろうと考案し、伸び代を期待したくなる作品であったことには違いありません。
奈美を演じたのは花總まりさんです。
ドレスも着ず、シャンシャンも持たず、パパみたいになろうとしない花總さんを観る日がこようとは想像だにしませんでした。
冒頭、主婦である奈美に“16だから〜♪”と歌わせるシーンはウケ狙いなのでしょうが、花總さんが歌うとさしてギャグにならず客席も普通に受け入れている様子なのは流石の若々しさです。
少し鼻にかかった魅力的な甘い声が特徴で、スラリとした体躯や洗練された佇まいも、主演を張り続けている舞台人のそれで見事でした。あとはもう少し声量をもって歌をリードできるとよかったですね。
初恋だった宗田(井阪郁巳さん)とカフェで再会するほろ苦いシーンは瞳に憂いがあり大人芝居。
キュートでもありお節介でもある2.5枚目の花總さんを堪能できる珍しい舞台だと思います。
これは演出・脚本上のことかもしれませんが、学生時代の奈美(渡邉美穂さん)が大人になって花總さん演じる奈美になるようには思えませんでした。
年月が経ったとはいえ、方言全開だった奈美の未来がお洒落な巻き髪セレブ妻では何か違う気がします。
黒髪・ひとつ結びや素朴さは踏襲できなかったのでしょうか。
そして娘を助けに行った時こそ、伝家の宝刀・怒りを炸裂させ青森弁全開でイジメッ子たちを撃退すれば、過去とリンクするのにと思いましたね。
千夏を演じたのは瀬奈じゅんさんです。
トップスターだった瀬奈さんにピッタリのリーダー役でしたね。
ラストに白服で踊る瀬奈さんときた日にゃ、大階段で降りてこないのが不思議なくらいのキラキラっぷりでしたよ。
こちらは高校時代の千夏(須藤茉麻さん)のボス感カリスマ度がそのままで、納得がいく未来でした。
女性中心の舞台ですが、男役の声は他と差別化され良いアクセントになっていましたよ。
ソロナンバーの「あの日に帰りたい」や「飾りじゃないのよ涙は」は瀬奈さんの声域によく合っており、聞き応えがありました。
気になったのは、SUNNYのメンバーと再会するシーンです。
20年近く会っていなかった友人と久しぶりに会う時は微妙な空気が流れませんか?
一緒にいるうち馴染んでくるのはわかるのですが、最初は戸惑いがなければ嘘です。
初めからみんなの距離感が近かったので不自然さを覚えました。
自分だったらあれほど訛っていた奈美が標準語しか話さないことへの違和感は計り知れないと思います。
台本には書かれていないかもしれませんが、セリフなきセリフで表現できれば最高ですね。
その他、小林綾子さん、馬場園梓さん、佐藤仁美さん、片桐仁さんなど映画やテレビでお馴染みの人たちが所狭しと活躍しています。
渡邉美穂さんを中心とした学生時代のSUNNYチームは瑞々しい団結力がありグループとしてのまとまりを感じる一方で、大人になったSUNNYチームは個が際立っていたので、とても良い対比にみえました。
最後に
私は幼稚園から中学2年生まで体操を習っていたのですが、同い年のマリコという親友がいました。
いつも二人でつるんではイタズラばかりしていたのです。
彼女が体調不良でお休みの時は体操の先生に「今日はマリコがいないから大人しいなあ」と冷やかされ、めちゃくちゃ恥ずかしかったことを思い出します。
そんなマリコとの関係でしたが、体操を辞めたのを期に会うことはなくなってしまいました。
ところが偶然も偶然、大人になってから仕事関係でバッタリ会うことがあったのです。
同職だったのはさすが親友同士といったところでしょうか。
子供の頃はあれほど会っていたはずのに、名乗ってもらわなければ気が付きませんでした。
しかもかなり年上の知人の後妻になっていたので、二度びっくり。
敬語で話すべきか、タメ口か迷ってしまいましたよ。
寂しいけれど、子供の頃の親友は大人になってからの親友ではない、というお話でした。
Fin