秋というのは僕の好きな季節である。


何故好きかとじっくり考えた事はなかったけど、きっと秋は押し付けがましくないのだと思う。


『さぁ夏だ!みんな飛びっきりの恋をしようぜ!』


『こんな寒い冬だからこそ、誰かのいる温もりを感じるの。
ほら、恥ずかしがってちゃ駄目!ちゃんと愛を育まなくっちゃ。』


『こんにちは、春ですね。
きっとあなたには素晴らしい未来が待っています。
だからまず、自分から何か新しい事を始めてみませんか?』


街の雰囲気も、流れる空気も、どこかそんなお押し付けがましさを孕んでいる。


今年もこの季節が始まったと、どこかで意識してしまう。


でも秋はいつの間にか訪れていて、気づけば散歩してる僕の隣を歩いているのだ。


ただ、僕に寄り添ってくれている。


飛びっきりの恋を見つける事も、本当の愛を育む必要もない。


観月ありさも、中山美穂もびっくりだ。


秋には、ただ夕暮れを眺めながら、自分の人生で最も彩られ、素晴らしかった思い出に浸っていればいい。


安心感や、励ましなんていらない。


ただ手をとって、笑顔で地獄まで着いて来て欲しいのだ。


秋には、そんな寄り添うような優しさ流れている。