今回の講義は「リアクション」である。
 
 お笑い芸人がアツアツの鍋の湯をかけられて「熱っ、熱ぅ!」とのたうちまわるその瞬間に人生を賭けるように、婚活という山を目指すお前たちも人生を賭けねばならぬリアクションがある。

 それは、男からプレゼントをもらったときのリアクションである。

 そして、このリアクションの熟練度こそが、お前の「結婚」を左右するのである。
 通常、男との交際を始めてからプロポーズに至るまでのルートは「サプライズルート」「アリ地獄ルート」がある。もちろん、スパルタ婚活塾生であり女としての魅力、品位に著しく欠ける貧乳メス豚野郎のお前たちは、逃げ惑う男を捕え、結婚という名の屠殺場に運び込む「アリ地獄ルート」が必修科目になる。

 しかし、もしお前にリアクションを極める心意気があるのなら「サプライズルート」を選べる可能性が出てくるかもしれない。
 
 サプライズルートとは何か。

 それは、男がお前に、ちょっとしたプレゼントをした際、お前たちのリアクションが素晴らしければ「じゃあ、次の誕生日はもっと喜ばせるものを!」となり、それがエスカレートすると最終的には最大のプレゼントである「結婚」をサプライズするというもので、すべての女が夢見るプロポーズだと言えるだろう。
 しかしそれを可能にするためには、リアクションを鍛えに鍛え、リアクション一本で飯が食っていけるくらいになる、恋愛リアクション界の出川哲朗になる必要がある。
 もちろん、一朝一夕で身に付けられるものではない。恋愛リアクションは奥が深く、それを本にするだけでも中谷彰宏の出版点数くらいになると言われている。しかも文字の大きさは半分で、である。
 だが、その中でもリアクションの基本となる考え方があるのでここで紹介しておこう。


 まず、男が感動するリアクションの原則は



 安いものに感激、高いものにオロオロ



 である。

 プレゼントが安いものであればあるほど、大感激せよ。
 100円ショップの造花をもらって「カワイイ! これ欲しかったの!」である。なんなら匂いをかぐ。それで「え、無臭なの?」である。あまりの精巧な作りに思わず香りがすると勘違いしてしまったお前、である。
 もちろんハタから見たら単なるバカなのであるが、これくらいの勢いが必要だ。
お前は、その男から、「結婚」という生涯で最も高価なプレゼント」を引き出さねばならないのだ。言うまでもなく、その男が付き合った過去のどの女よりも優れたリアクション――「サービスとしてのリアクション」を提供しなければならない。


 そう、リアクションとはサービスなのである。


 サービスとは「何かを提供する」ことだけを指すと思っているやつもいるだろうが
 「プレゼントに感謝をすることで、相手を気持ちよくさせる」
 つまり、受け取る側にも、れっきとしたサービスが存在するのだ。
 たとえば、親に寄生するニートでも「仕事なんかしなくても生きていける」と開き直るのではなく、毎日食卓に出される食事に感謝で涙ぐむ、お礼に両親の肩をもむ、父の日、母の日に、何十枚にもおよぶ感謝状の超大作を送る、などのリアクションを取ることで両親の溜飲も下がり、ひいてはニート期間を飛躍的に伸ばすことができるのだ。


 そしてリアクションの真髄は「高価なもの」をもらったときに表れる。


 そう。高価なモノに、オロオロである。


 男がお前を喜ばそうとしてこれまで買ったことのないような高価なものを買ってきた。
 男は当然お前の喜ぶ顔を予想するだろう。
 まず、この予想を裏切れ。
 うれしくなさそうな顔をせよ。
 そしてその顔に込められた意味とは
 「こんなに高いもの、大丈夫だった?」である。「相手の懐の心配」である。
 さらに、
 「自分は、こんな高価なものが似つかわしい女なのだろうか」の「謙虚さ」である。

 が、しかし。

 ここで相手を気遣う女がしてしまいがちなミスがあるのだが
 決して、遠慮はするな。

 忘れてはならない。男は、お前を喜ばせたいのである。

 男の、「喜ばせたい」という気持ちに応えること、それもまた「サービス」なのだ。

 だからこそ、プレゼントを手にしたお前は、オロオロし、泣きそうな顔になりながらの

 「ありがとう」

 である。

 「一生大事にするね」

 である。
 ここまでできて、英検3級。TOEICに換算すると400点前後だ。

 さらに、あくる日、男の枕元に手紙が置いてある。プレゼントをもらったお前からの感謝の手紙だ(TOEIC600点)

 さらに、数か月後、一緒に住むマンションに突然、避難勧告のアナウンスが流れる
「火災が発生した可能性があります。ただちに避難してください」
 男は携帯と通帳、最低限のものを持ってすぐさま飛び出そうとするのだが、お前は「待って!」と言って部屋の奥から何かを持って出てくる。
 「何やってんだよ、こんなときに」
 「……ごめんなさい」
 「何持ってきたんだよ」
 そしてお前は申し訳なさそうに、手のひらを開く。
 そこには、男からプレゼントされた指輪がある(TOEIC800点)

 しかしこの程度で安住してはならない。
 繰り返すがリアクション道は奥が深く、この上、またその上をいくリアクションが存在する。
 「リアクション8段」と呼ばれる愛也でさえ、リアクションに関しては日々厳しい鍛錬を積みながら追及している。お前たちも常に今の自分を疑いながら向上し続けて欲しい。

 ただ、リアクションについてもう一つ大きな原則を言うならば、「ウソはつけない」ということだ。
 「こういう演技をすれば男を騙せるんじゃないか」という考えでは、客(男)を魅了するリアクションなど取れはしまい。
 結局のところ、人を感動させるのは、ウソ偽りのない本音の愛である。だからこそ、最高のリアクションを取るために必要なのは、お前がそのプレゼントに対して「本当に感動」していることなのだ。

 つまり、問われるのは、お前自身の持つ「感動する力」である。

 では、どうすれば感動する力を養うことができるだろうか。

 それは、「目に見えない『プロセス』に目を向ける」ということだ。

 たとえば、普通っぽく見えるプレゼントでも、男は忙しい仕事の合間を縫い、上司に小言を言われながらもプレゼントを買う時間を作ってくれたかもしれない。お金や将来に対する不安と戦いながらそのプレゼントを選んだのかもしれない。そんな男の、「目に見えない心の動き」を想像するのである。
 それだけではない。
 プレゼントされた指輪は、思ったより安いものだったかもしれない。しかし、その指輪は、様々な人の知恵と工夫と労力の結晶である。ダイヤモンドを掘った人がいて、磨いた人がいて、指輪を作った人がいて、運んだ人がいて、店頭に並べた人がいて、その店が閉店した後も盗まれないようにガードしてくれた人がいる。

 そもそも指輪とは? 
 お前たちは、指輪の起源を知っているだろうか?

 人類最初の婚約指輪は「鉄」だった。恋人同士の愛の証として鉄の輪を指にはめたのだ。そこに輝きはなく、もちろん重かった。指を傷つけた女性もたくさんいただろう。だが、その鉄の指輪を見て、涙を流した女性もいたはずだ。
 こうした歴史を経て、今日の指輪――お前の目の前にある指輪は生まれたのである。
 
 このように、目に見えないプロセスに目を向けることで、「世界」は新たな輝きを持ち始める。
 そして、その輝きを見ることができたものこそが、目の前のプレゼントに対して感動し、最高のリアクションを取ることができるのである――(TOEIC990点)。



■ 第16講 男がプロポーズしたくなるリアクション

・プロポーズには「サプライズルート」と「蟻地獄ルート」があるが、プレゼントをもらうときのリアクションで男を感動させることができれば、男は「もっとこの人を喜ばせたい!」と「結婚」のサプライズを考えるようになる。

・リアクションの原則は「安いものに大感激、高いものにオロオロ」である。

・「目に見えないプロセスに目を向ける」ことで感動する力を養う。



それではまた来週火曜日、この場所で会おう。





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