以前からお伝えしている石郷岡病院事件(刑事裁判)の判決が今日、言い渡されました。(傍聴してきました)。

 なんと、求刑8年に対して、

 菅原被告、罰金30万円。

 田中被告 無罪。

 

 傍聴席で思わず声が漏れそうになりました。 

 これが精神医療裁判の現実なのでしょうか。

 いったい何をこの裁判は裁いたというのでしょう。

 

判決理由について、記憶に残っているものだけ記しておきます。

 まず、菅原被告に対して。映像から暴行は認定できる。頭部右上に右足を当てている。認定できるのはその一回のみ。

 映像は真上から撮られたもので、1秒に4コマという画像の粗さもあり、明らかに頭に足が当たっている映像はその他確認できない。

 検察は被害者の髪の毛が乱れたことを暴行の証拠のように主張しているが、画質が不鮮明で確認できない。

 一度頭部に右足が当たっているが、それと頸椎損傷の因果関係はないと判断。

 よって、傷害致死ではなく、暴行罪である。

 求刑8年に対して、罰金30万円。

 

 田中被告について。

 暴れる患者を抑制する以上のものは認められない。

 抑制は、看護行為としての抑制である。(あるいは看護行為の延長としての抑制である)。

 求刑8年に対して、無罪。

 

 この司法の判断は、あのような行為を看護行為と認定したということです。したがって、今後、精神科の看護師の行為はこのレベルまでは「看護行為」に相当する(そのお墨付きを与えた)ということになる。

患者が実際暴れていようがいまいが、看護師に少しでも抵抗したら(その理由は看護師に雑に扱われたからだ)、即抑制。そして、1回(や2回)、踏んづけても、罰金くらいで済んでしまうということだ。たとえ結果として命を落としても、その場で亡くならない限り、因果関係はどこまでもあいまいにされていく・・・。

 

そもそもが、「暴力的な患者」という前提での判決である。

 判決理由の中で「石郷岡病院への入院が父親の顔面を殴り骨折させたため」ということが強調されており、もともとそういう「粗暴な患者」だった、だから「抑制せざるを得なかった」、したがって、それは看護行為であるという、一番恐れていた筋書きそのままの結果である。

 

 この結果を受け入れるのは、かなりしんどいです。

 原告側の席に座られていたお父様は、判決理由を読み上げる裁判長のほうを、背筋を伸ばしじっと見つめていました。その胸中を思うと、言葉が見つかりません。長い時間をこの裁判に費やし、さらに民事裁判も控えて、ご家族はいまどれほどの思いの中にいるでしょうか。