昨日、4月2日は告知していたとおり、名古屋において「ベンゾジアゼピン処方をめぐる裁判を語る――日本の医療裁判の問題点とは――」と題して、勉強会を開きました。

 大阪や東京など遠方からのご参加もあり、たいへん有意義な会になったと思います。

 

 この日はこの裁判を担当された弁護士にもご参加いただき、医療裁判についての話をうかがうことができました。

 医療裁判においては、2004年に発生した福島県の大野病院事件

 の判決が出た2008年が一つの潮目となっているようです。

 この事件は産婦人科における医療事故により妊婦が亡くなり、担当医師が業務上過失致死罪によって逮捕されたものの、無罪となった事件です。

「医師の逮捕」ということで大きなニュースとなりましたが、 朝日新聞、読売新聞、産経新聞(毎日新聞だけ別の姿勢をとりました)はこぞってこの無罪判決を歓迎。世論もそれに同調しました。(事件の概要を読むと、私には「無罪」はないように思われます……)。

 また、日本産婦人科学会などからは、「事件は産婦人科医不足という医療体制の問題に根ざしている。医師個人の責任を追及するのはそぐわない」といったコメントが表明されたり、日本母性保護産婦人科医会(現・社団法人日本産婦人科医会)も声明を発し「このように稀で救命する可能性の低い事例で医師を逮捕するのは、産科医療、ことに、地域における産科医療を崩壊させかねない」と批判したのです。

 その結果、裁判どころか、医師、あるいは医師の行う医療そのものを「批判」すること自体「医療を崩壊させかねない」といった風潮が出てくるようになりました。

 そして、この事件の判決は、それ以降の医療事故裁判を大きく変えることになったのです。

 それまで(平成19年まで)は、判決で「認容・一部認容=賠償金が認められること」と「棄却」の割合は、「認容」のほうがわずかながら件数は多かったのですが、この大野病院事件以降、割合は逆転しています。しかも、その割合は年ごとに差が開いていっています。

弁護士さんからいただいた資料によると、平成28年の医療関係訴訟は、全国で「認容」46に対して「棄却」216という惨憺たる数字です。

 いまは医療裁判の冬の時代。

 

 しかし、今回のベンゾジアゼピン処方における裁判は、判決で「副作用の注意義務違反」を認めており、117万円あまりの支払いを命じていますので、「一部認容」ということになります。弁護士によると、これはかなり「稀」なケースで、判例としても意義あるものとのこと。

 それでも、原告としては「副作用の注意義務違反」だけではなく、ベンゾの処方そのものに対する点を争いたいとの思いが強く、控訴をしました。(被告病院も控訴しています)。

 当事者Tさんの闘いは7年前から始まりました。途中、くじけそうになることもあったと言います。しかし、

「これまでベンゾに被害に遭った方、ベンゾによって亡くなった方の魂が自分を後押ししている。やめるわけにはいかない。何があっても最後まで闘います」

 そんな力強い言葉に、私もぜひ、今後ともTさんを支援していこうと思いました。

 7月の「ベンゾジアゼピン注意喚起の日」に向けて、何かできないかと考えています。

 ご賛同をお願いします。

 

 今後はブログにて、Tさんの資料を少しずつ公開していく予定です。