「けんぽれん」(健康保険組合連合会)がベンゾの処方を「3剤以上は減算」を提案しています

http://www.kenporen.com/include/outline/pdf/chosa29_01-2.pdf

http://www.kenporen.com/include/outline/pdf/chosa29_01-2gaiyo.pdf

 

「② 分析結果に基づく政策提言

  精神科継続外来支援・指導料、処方せん料、処方料および薬剤料に対して、1 回の 処方における抗不安薬および睡眠薬の種類数を制限すべきである。特に、「BZDs の抗不安薬と睡眠薬を合わせて 3 種類以上の投薬を行った場合」に対して、精神科 継続外来支援・指導料の算定を不可とし、処方せん料、処方料および薬剤料については減算することが考えられる。」

 

いまは睡眠薬2剤、抗不安薬2剤、それ以上は減算ということですが、つまりは、ベンゾ4剤まで減算なしということです。それを、今回のけんぽれんでは、先に行われたレセプト調査の結果を踏まえて「2剤にしてはどうか」ということです。

4剤から2剤に・・・?

ということは、そのうち、ベンゾ処方そのものが保険適応外になる日も近いということでしょうか? なんだか数合わせをしているだけのような提言のようにも感じられますが・・・。そもそもベンゾは種類数より、力価(の合計)の方に意味があるのではないでしょうか。

 

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ところで、このニュースをFacebookである精神科医が紹介したところ、別の精神科医が以下のようなコメントを入れました。

「うーん、(注・ベンゾ3剤規制がかかると)当院の即席約束セットが全て使えなくなる。秒殺3点盛りや、特盛り4点セットに、サイドメニューをポンポン追加していく薬物療法のテンポが崩れると、イラついて外来にならないです(*_*; )大な30坪の待合室がスシ積めになり、駐車場の空き待ちの車で、ちょっとした渋滞がおこってしまいます。。。」

 

 このコメントに対して激しい反論が2、3あり、すると、この医師、今度は以下のような「言い訳コメント」を入れました。

「自分の立場について明確に申します。安易な薬物療法に対しては慎重派であり、診断がしっかりとつき、服用するメリットが副作用のリスクを上回る場合にのみ処方しています。処方する際は、個別性を重視し、十分な話し合いながら、ほぼ毎回微調節を行っています。さらに、精神療法にも副作用や依存性があることに、治療者は自覚的であるべきだと考えます。一方、適切なタイミングで薬物療法や精神療法の介入を逃してしまうのは最も致命的であり、初診の受け入れを制限するべきではないと考えます。医療資源には限りがあり、自分の方針では、飲まず食わずで14時間以上診察を続けても、16080人の診療が限界です。一人の方に時間をかけすぎてしまうと、容易に診察の終了が深夜になり、他の患者さまや周囲の施設や薬局に多大な迷惑をかけてしまうので、その点を理解して頂くよう、日々頭を下げています。当院に約束処方などありません。しかし、電子カルテの導入の際、メンタルクリニック用の処方セットなるものを業者にすすめられて、非常に憤慨しました。そのような処方セットを使う医師は居ないと信じていますが。同様の理由で、単なる処方薬の数により、診療の質を図ろうとする提案には賛同しません。処方薬の数合わせの誤魔化し診療など容認できません。さらに、精神療法の時間縛りにも疑問を感じます。外来診療のみで完結する医療の初診において、30分以上かかっていては、治療として失敗であり、現実にそぐわない。従って、当院では精神科初診料を算定しない方針です。このまま、保険点数の誘導に従っていては、精神科の外来診療が、おかしな方向に向かう恐れがあります。「恐るべき近未来」を想像して、あり得なくもない仮想世界として最初の投稿をしましたが、公開の投稿である以上、最初に自分の意図を示すべきでした。一部の極端な表現が、皆さまの不安や不審を抱かせたことをお詫びします。」

 

 手のひらを返しつつも、弁明しているところが、何とも……です。

 しかし、本音はやはり最初のコメントのほうでしょう。もちろん、現在の精神科診療のシステムにも大いに問題はあり、現場の医師の苦労もあることは理解できます。しかし、最初のようなコメントを、文字として書くこと自体、患者をなめている証拠です。それはどのような言い訳も通用しないほどの、ひどい言葉です。

 

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ところで、去る111日、薬害オンブズパースン会議が厚生労働省において記者会見を行いました。

http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=943

その中で、「常用量依存」を添付文書ではっきりと警告すべき、また処方を4週間に限るべきと主張しています。

そして、この記者会見には、「世界ベンゾ注意喚起の日」を提唱したダグラス・ウエインさんも出席しました。

 そのダグラスさんですが、数週間後の12月に、母国ニュージーランドに帰国することになりました。18年間の日本滞在。その間、ベンゾ被害にあい、裁判に負け、東日本大震災にも遭遇。あまりいい思い出のない日本のようですが、それでも「楽しいこともあった。成功もあった」と私にメールをくださいました。

日本における彼のベンゾに関する功績は大きなものがあります。彼のホームページ

http://www.benzo-case-japan.com/   に救われた人もたくさんいます。

ダグラスさん、いろいろありがとうございました。またいつか会える日を待っています。