私が精神科病院での体験談を募集していると知り、以下の体験談を送ってくださった女性(仮にYさん)がいます。

最初は精神科への入院の話でしたが、その後の経過もかなりひどい話です。

「精神障害者」ということが、たとえ「元」であっても後々までこれほどマイナスに働くとは・・・。とくに医療関係者の偏見の強さには、驚きあきれ、腹が立ってきました。

 Yさんが送ってくれた順に、体験談を公開していきます(ので、時系列が前後している部分があります)。それにしても、Yさんが体験したことは、ある意味で、今の日本の精神医療の縮図でもあります。

 

精神病院への入院

私は、統合失調症と誤診されました。

向精神薬の服用により、どんどんおかしくなってしまい、入退院を繰り返すようになりました。隔離室、保護室、身体拘束も何度も経験しました。

入院すると、1番偉い人は医師、2番目は看護師……という感じで、力関係がはっきりしています。

 看護師が患者に対して、

 「おいクズ! 静かにしろ!!」

などと言って、患者を見下し、刑務所みたいな上下関係がありました。

患者が看護師に反抗すると、すぐに隔離され(閉鎖病棟の1部屋に鍵をかけて閉じ込められる)や保護室に入れられたり、目をつけられて嫌がらせをされたり……言葉の暴力などはもはや日常茶飯事でした。

反抗する患者を無理やり閉じ込め、薬漬けにして、動くことも話すこともできない状態にして、二度と患者が医師や看護師に反抗しようなんて気にならないように押さえつけるのです。

 精神科に入院したら、自分を殺して、看護師に嫌われないように、とにかくおとなしい良い子になることが退院への1番の近道となります。

 精神科の入院生活は非常にストレスがたまります。

 

精神病院の公衆電話

精神科に入院すると携帯電話は持ち込めないので、公衆電話で外の人と話すのですが、公衆電話のあるところには、人権委員会?(名前は忘れましたが)のような機関の紙が貼ってありました。(註・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 第 37 条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準 の中で、次のように規定されています。「都道府県精神保健福祉主管部局、地方法務局人権擁護主管部局等の電話番号を、見やすいところに掲げる等の措置を講ずるものとする」)。

その紙には、任意入院で退院を希望しても退院させてもらえなかったり、病院から不当な扱いを受けたりした場合には通報してもよいという説明文と機関の電話番号が書かれていました。

 私は、任意入院で退院を希望しましたが、退院をさせてもらえないのと、病院スタッフの質の悪さを通報しようと数回この機関に電話したことがあります。しかし、何故かこの機関には一度も繋がりませんでした。

そして、この機関に電話をすると、必ず看護師が公衆電話の所に来るのです。

 不信感を抱いた私は、他の人にも聞いてみましたが、皆、口を揃えて

「繋がったことがない」

と言いました。

ひょっとすると病院側がこの機関に電話が繋がらないようにしてあり、患者が電話をかけるとナースステーションでわかるようになっていたのかもしれないです。

 

入院で薬漬け

入院すると必ず薬漬けにされます。

特に保護室に入れられた時は、1日中眠くて起きれないほどの薬を飲まされたり、飲めないと点滴や注射で薬を入れられました。

 保護室に入らない普通の入院でも、外来の時より薬の量は増えるので、私は何度も真っ直ぐ歩けなくなり、回転性の目眩がして起き上がることもできなくなり、泡をふいて倒れ痙攣し、数日間意識不明となりました。

しかも、こういう状態になっても病院は家族に知らせていませんでした。

 私が3回目の痙攣を起こして親に電話で、「てんかんになったかも?」と話した時に、こんなことになっていたことを親は初めて知ったのです。

すぐに親が病院に来て、医師を問い詰めましたが、その時に医師は、

 「こうなるだろうとは思っていました……」と言ったそうです。

 親が怒り、医師に、

「とにかく薬を減らして下さい!」と言うと、医師が

「私の治療に不満があるなら、他の病院に変わって下さい!」と親に怒鳴ったんだそうです。

このことがあったので、私はすぐに他の病院に転院しました。

しかし、転院先の病院の医師や看護師も同じでした。

私は、精神科に入院する度に人間扱いをされないようなダメな人間になってしまったんだと自分に絶望しました。

そして、医師や看護師に、「あなたの病気は一生治らない。一生薬を飲み続けなければいけない」と言われて、もうどうやっても普通には戻れないんだと死を考え始めました。

 

精神科の患者であることへの偏見

辛かったのは精神科入院での酷い扱いだけではなく、精神科以外の病院での医師や看護師のひどい偏見・差別でした。そっちのほうが私をもっと辛い思いにさせたのです。

 普通の、世間の人の偏見の目は覚悟していました。でも、医学の勉強をした医師や看護師が、こんなにひどい偏見があるのか……本当に嫌になりました。

 精神科以外の医師には、はっきりと

「私は、あなたには関わりたくない」と言われました。また、看護師には嘘つき呼ばわりされました。

「気持ちの問題でしょ? もっと強くなりなさい、頑張りが足りない」などと言われたり、もっとひどい人になると、「あなたみたいな人と付き合う時間がもったいない、患者さんがたくさん来てて忙しいのわかるよね? もう来ないで下さい! 来ても診ませんから!!」と言われたりしました。

 人の命を助ける病院で嘘つき呼ばわりされたり、拒否されたりするようになってしまったこと、医師や看護師が、「あ~精神科....」と、あからさまに私とは関わりたくないという態度、そういう態度をとられるような人間になってしまったということが、私は一番ショックでした。

 

もちろん精神科の中ではひどい扱いをされました。でも私は精神科から一歩外に出れば、また普通の人のように扱われると思っていただけに、精神科以外の病院の医療スタッフや、在宅の訪問スタッフからの偏見によるひどい扱いの方が辛く、絶望的になりました。

世の中の一般人よりも知識があるはずの医療スタッフによる精神疾患の間違った知識や偏見による人権侵害とも言えるひどい不当な扱いを受けた時の方が、よっぽど辛いのです。