ビバンセ((リスデキサンフェタミン)というADHD薬が日本でも発売されようとしていました。

 拙著『発達障害の薬物療法を考える』(彩流社 20177月出版)の中で、以下のように取り上げています。

「……現時点(2017年時点)ですでに3つの(ADHDの)新薬が治験段階に入っている。

 たとえば、アンフェタミンをベースとした薬は日本では今のところ承認されていないが、シオノギ製薬が小児ADHD向けにアンフェタミン系の薬(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)を「S-877489」という開発番号で研究を進め、現在治験はフェーズⅢまで進んでいる。フェーズⅢは、治験の最終段階のことで、200~3000人の患者を対象に、既存薬やプラセボと比較し、有効性と安全性が検証されれば厚生労働省へ承認申請を行うことになる。」

 

 その薬が「ビバンセ」という商品名(先発しているアメリカと同じ商品名)で最近承認間近となっていました。

12月3日に承認の可否が審議される予定でした。

しかし、延期になったようです。

医薬経済社(この会社は、パキシルのアクチベーションシンドロームを記事にして、それを契機にSSRIの風向きが変わりました。)のツイッターによると、以下の通りです。

 

国際医薬品情報 12月3日

医薬品第一部会。小児のADHD治療薬ビバンセ(リスデキサンフェタミン)については、承認の可否の議決は実施せず。有効成分が覚醒剤原料に指定されているため、厚労省は、特別な流通管理を敷く予定。部会に対して、流通管理策についてパブコメを実施した後、議決を求めたいと提案し、了解を得た。

 

 流通管理を敷く・・・つまりコンサータ(すでに流通しているADHD薬。メチルフェにデートで成分はリタリンと同じ)や、クロザピン(抗精神病薬、難治性統合失調症の治療薬をいわれている)のように、医師、患者、薬局をモニターするようなシステムを作るということでしょう。

 そして、最終的には承認されるものと思われます。

 ともかく、そのような管理システムを作らない限り、安易な流通は看過できないような薬であることを厚労省が認めたということです。そういう薬を小児に使うことの是非は置き去りにされたまま。ADHDはいわゆる「覚せい剤」(作用としては覚醒させる薬です)を飲んでまで、「普通」にしなければならない「障害」ということでしょうか。

 しかし、医師は「選択肢」が増えると、新薬の登場を歓迎しています。

 ちなみに、シオノギとこの薬を共同開発したシャイアー社(アイルランド)。現在日本の武田製薬が買収に乗り出しています。製薬会社は自身の不得意な分野をそれぞれカバーできる相手を探りつつ、さらに巨大化を目指さなければその巨体を維持することができないのが現状です。

そして、プロパーが医局に入り込んで、医師たちに資料を配り、「講義」する。そうした「経済活動」の裏で、どれほどの「人命」が軽んじられてきたことか……。