「ラツーダ(ルラシドン)」という非定型抗精神病薬が、今年6月11日に、大日本住友製薬株式会社から発売されました。適応は、「統合失調症」および「双極性障害におけるうつ症状」です。
添付文書↓
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179061F1022_1_01/?view=frame&style=XML&lang=ja
ラツーダは、ドーパミンだけでなくセロトニンもブロックすることで、過剰なドーパミン遮断を和らげるSDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)に分類される抗精神病薬です。体重や代謝への影響などは、他の抗精神病薬に比べるとマイルドだそうです。
これは大日本住友製薬の創薬です。日本に先行して北米においてすでに発売されており、なんと北米だけで1900億円を売り上げているヒット商品です。これは大日本住友製薬の連結売上高の4割に及ぶとか。
薬価は以下の通りです。
20mg錠:178.7円
40mg錠:328.9円
60mg錠:469.9円
80mg錠:493.4円
参考までに。北米ではこの薬の特許に関して訴訟沙汰になり、それによって北米における特許は4年延びました(2023年まで)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/041100249/
このラツーダ、実は統合失調症より「双極性障害のうつ症状」への適応が注目されているようです。
日本うつ病学会は、2020年6月16日に「双極性障害のガイドライン」を改訂していますが、その中の第二章「抑うつエピソードの治療」として、ラツーダ(一般名ルラシドン)を取り上げているのです。
以下、ルラシドン(ラツーダ)に関する記述(11頁)
ネットワークメタ解析によると、双極Ⅰ型障害の抑うつエピソードに対するルラシドンの抗うつ効果はアリピプラゾールよりも大きく、オランザピン、クエチアピンと同等であった。一方、体重増加はオランザピンよりも少なく、眠気はクエチアピンよりも少なかった(Ostacher et al,2018)
オランザピンよりもルラシドン(ラツーダ)のほうが優秀である――絶賛です。
ラツーダが発売されたのが6月11日。日本うつ病学会が「双極性障害のガイドライン」の改訂を行ったのが6月16日。
たった5日後にガイドラインを改訂し、この商品をこのような形で取り上げているわけです。
日本うつ病学会は、製薬会社に非常に友好的な学会のようです。
利益相反を見ると、執筆者の一人、加藤忠史氏は、「ルラシドンの治験調整医師を務めたため、2020年の本ガイドライン改訂に際しては関与していない」とわざわざ但し書きがありますが、他の執筆者の利益相反を見てみるとかなり興味深いものがあります。
ちなみにこの「日本うつ病学会」が出しているうつ病看護ガイドライン。
ひょうごこころの医療センターの小田陽彦医師の情報によると、(以下引用します)
「同学会が出しているうつ病看護ガイドラインにおいては、本来うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害は5つの診断基準全てを満たさなくては診断されないところ、なぜか5つのうち3つだけ満たせばそれだけで診断して良いという記載になっており、患者数を本来あるべき数よりも増やす内容になっています。より多くの患者をうつ病と診断して救助したいという善意からだと信じたいですが、間接的に抗うつ薬の販売を増やすという意図があると推測されてもやむを得ないと思います。」
うつ病に関してはそもそも1999年から始まった「うつ病キャンペーン」からして、SSRIの販売促進の一環だった歴史もあり、製薬企業との関係が常に付きまとっています。
こんなダークなガイドラインに則って治療を受ける患者は、まさに餌食……といっては言いすぎでしょうか。