「長い長い精神科通いでした。通院しながら、常にどこかに精神科医療に疑問点はありましたが、最近になり  私の心の隅にあった疑問が、薬害や、精神科医療の本を読み、「やっぱりなー」と府に落ちた次第です」

 

 そんな書き出しでメールを送ってくれたのは、M子さん(56歳)です。5年ほど前にも私にメールを寄せてくれたそうですが、嫌がらせの被害から昔のメールアドレスを削除してしまったため、見つけることができませんでした。

 多くの服薬経験者がそうだと思いますが、M子さん自身、薬の副作用から読書ができず、思考も停止して、疑問を持ちながらも、精神医療(薬)についての情報を得ることができないまま、時間だけがたってしまったと言います。

 今日はそんなM子さんの体験談を紹介したいと思います。

 

そもそもは交通事故から

 M子さんが精神科と関わることになったきっかけは、交通事故でした。

今から29年前の1992年、M子さん27歳のときです。

重症でした。腰を骨折、さらに頚椎捻挫、全身打撲等で3ヶ月間の入院生活。

 当時M子さんはインテリアデザイナーとして働くキャリアウーマンでした。したがって、退院後は即仕事に復帰して、さらに、建築の専門学校でもう一度きっちり勉強したいと、学校にも通い始めたのです。体調は完全には戻っていなかったかもしれません。

私生活では、この頃M子さんは婚約をして、都内に引っ越しました。

今から思えば、かなりハードな生活です。

 その頃のことをM子さんはこう書いています。

「女性の30歳というのは、人生の転機の年齢でもあり、さまざまなプレッシャーも感じていました。結局、婚約も破棄としなってしまったのですが……。精神的に相当くたくたな状態だったと思います」

 そのため、M子さんは内科を受診しました。医師の見解は「引っ越しうつではないか」というもので、デパス(抗不安薬)とハルシオン(ベンゾ系睡眠薬)が処方されたそうです。長期に通院していませんが、薬は一応飲みました。

さらに、事故の後遺症なのか、首こりがひどく、そのため不眠となり、整形外科に行くと、またしてもハルシオンが出されました。

 

ハルシオン服用から自律神経失調症のような状態に

ハルシオンを飲み続けるうち、自律神経失調症のような症状(不眠、微熱やほてり、首こり、下痢、めまい、地震かと思うと自分だけ揺れているという感覚)が出て、整形外科では不定愁訴とのこと。一応レントゲンを撮りましたが、異常が見つからなかったため、医師曰く。「うつかもしれないから、精神科で診てもらってください」。

しかし、こういうケースでは、すでに飲んでいるハルシオンの常用量離脱の可能性が大きいです。医師は服薬中の薬の副作用を考慮に入れず、出ている症状のみで判断を下し、M子さんと同じような流れで精神科につながれる人は非常に多いと思います。

 

精神科受診

精神科を受診すると「自律神経失調症」との診断で、グランダキシン(ベンゾ系抗不安薬)が処方されました。しかし、症状はまったく改善せず、そうなると診断名が自律神経失調症から「うつ病」に変わりました。

薬は、抗うつ薬のアモキサン、ベンゾ系睡眠薬のユーロジン、ベンゾ系抗不安薬のソラナックス、そして、なぜか抗精神病薬のヒルナミンです。

 

「この他にもいろいろ出ていましたが、もう覚えていません。本当に多剤処方でした。ヒルナミンとか今思うと恐ろしいです。あと、そこのクリニックは全員処方されるのですが、謎の白い粉です。何の薬かはわかりませんが、目付きがトロンとする薬で口が乾きます。その薬を飲むと、足がむずむずして、ずーっと貧乏ゆすりをしていました」

 

 時期的にはうつ病キャンペーンのちょっと前ですが、その頃から精神医療は多剤処方だったわけです(今より多剤大量処方が当たり前の時代でした)。

そして、例のごとく、M子さんの症状はまったく改善せず、それどころか悪化の一途をたどりました。すると、診断名がうつ病から統合失調症になったのです。

 

自律神経失調症―→うつ病―→統合失調症

絵に描いたような精神医療の被害の構図です。

しかし、統合失調症と言われても、その時点でM子さんに、幻聴、幻覚、妄想などまったく出ていません。

診断がかわったきっかけは、そもそもが、処方の変化でした。

抗うつ薬を医師がなぜか抗精神病薬のリスパダールに変更したのです。すると副作用で足取りがあやしくなり、診察室に入ってくるそんなM子さんの姿を見た医師が、「足取りが変だから統合失調症」ということにされたというのです。

そして、「リスパダールは必ず飲むように。飲まないと、とんでもないことになる」と脅されました。

 M子さんは当時を振り返りこう言います。

「当時、私は患者の中で生意気な方だったと思うので、リスパダールで鎮静させられたような気がします」

 このクリニックは主治医の独裁的なクリニックでした。そのため、患者へのドクターハラスメントも相当なものでした。

例えば……、

リスパダールを服用すると短期間で20キロも太ったので、M子さんが「この薬は太る」と訴えたところ、薬のせいではなく太ったのは「中年太り」とされ、「リスパダールは副作用のない薬」と言われたそうです。

 さらに体が重いという副作用を訴えると、「こっちは、いろいろ悩んで考えてやっとあなたに効く薬を出したんだ。あなたの体がどうなろうと知ったことじゃない」とばっさり。

 また、薬の影響かM子さんは外出が怖くなり、受診もできなかったところ、「予約しておいて来ないなんて営業妨害だ!」と怒鳴られたと言います。

 予約をしても三時間待ちなので、「待ち時間が長くて身体が辛い」と言うと、「待つのも治療」。

 さらに「病気だから、恋愛は禁止」。

「薬を飲んでいると子供が産めなくなりませんか?」と尋ねると、

「あなたのような子供が産まれてくるから、産まない方がいい」

 薬の情報提供は一切なし。何を飲んでいるか知らせずに、ただただ「これさえ飲んでいればいい」という態度で、お薬手帳もなく院内処方。薬について尋ねると、とたんに不機嫌になる医師でした。

 処方はつねに一包化されているので、M子さんは錠剤に刻印されている数字、記号で薬名を調べていたと言います。

 さらにこの医師はこんなことも言いました。

「あたなと私とでは、人間としての格が違う」

常に威圧的で、従順でないと機嫌が悪くなる先生だったと言います。

〇〇区の××メンタルクリニックのSM医師。

さらにこんなこともありました。

当時M子さんと同時期に通院していた人たちのほとんどが統合失調症と診断されていたそうです。不安神経症で受診した人も、パニック障害で受診した人も、等しく「統合失調症」。

しばらくして、SM医師は、「統合失調症」の本を出したそうで、M子さんは「そういうことか」と納得したと言います。