私事ですが、

母は現在、ショートステイにお世話になっています。月曜日から土曜日まで、家には2泊するだけです。

まだ始めて3週間しかたっていませんが、何とかやっているようです。

しかし、家にいるときも時たまあった事ですが、夜中に起きだし、いろいろ何かやろうとする……。夜中の時間帯であることを伝えて、寝床に入れても、10分もしないうちにむっくり起きだし、また同じことを繰り返す……これを施設でもやることがあるようです。さらに、他の入所者の方の部屋にまで入り込んでしまうとか。

 

じつは、医師からはベンゾ系の睡眠薬が出ています。私としては飲ませたくないですが、何とも落ち着かないとき、2度ほど家で飲ませたことがありました。飲めば眠って、翌日も持ち越して寝ていることが多くなります(それでも、世話をするほうはかなり楽になるのは事実です)。

で、施設から「他の入所者の方に迷惑がかかるし、眠らないのは体に悪いので、何か薬はありませんか」との問い合わせを受けたため、この薬を持参しました(最初の時点で、睡眠薬が出ていることは伝えてありませんでした。伝えれば、そのまま定時薬になってしまいますから)。

その日の夜はよく寝てくれたようです。

となると、さっそく施設に関わる看護師から、「この薬を毎晩飲ませてもいいか」との問い合わせがありました。

「いや、連用はしたくない。皆さんにご迷惑をおかけして申し訳ないですが、何とか様子をみてくれないでしょうか」と言いました。

その理由として、ベンゾ系の薬について説明したのです。

「これはベンゾジアゼピン系の睡眠薬で、依存とか、高齢者の場合、足のふらつきとか、リスクが大きいので、やはり連用は避けてほしい」と。

 ところがです。この看護師さん、「ベンゾジアゼピン」という言葉を知りませんでした。私が「ベンゾジアゼピン」というと、薬の裏面を見て「〇〇〇〇」と書いてありますと、商品名を言うのです。

 あらら。

 これでは依存もふらつきも、いくら言っても理解できないかもしれません。

 ただただ、飲んでおとなしくなる便利な薬、ならば毎日飲めば、同じようにおとなしくなるだろう。だから、飲ませないという選択肢はない……ということのようです。

 それでも、2日続けて飲ませるのはやめてほしいと伝えました。

 それは守ってくれたようですが、帰宅後見た記録では、飲まなかった日の夜は、再び施設内をうろついたり、外へ出る行為が見られたとかで、薬を飲ませたと書いてあります。

 つまり、1日おきに飲んだことになります。

 そして、土曜日、帰宅後、足がふらつき、畳の上で転びました。

 そこでその事実と、「1日置きに飲まされるのはちょっと……」と私の考えを施設のほうに伝えました。

 すると、今日、「たいへん申し訳なかった」と施設長から電話がありました。

 施設長はこの手の薬の怖さを少し知っているような感じでした。というのも、ご自身も薬を飲まれていて(尋ねたところ、デパスを1年ちょっと飲んでいるそうです)、少しずつ効き目が薄くなっているのを感じている、一度半分にしてみたが、まったく眠れなくて薬を戻したことがある等々、この手の薬でよく耳にする話をされました。

 なので、私が連用したくない、どうしても夜落ち着かないようなら、せめて3日か4日に1錠くらいで様子を見てほしいという希望はわりにすんなり理解していただけたと思います。

 

 精神薬は、一度飲んで、すごくいい効果があっても、それがずっと、同じように(いい具合に)効いてくれるものではありません。しかし、病院や施設となると、毎日飲ませます。

様子を見るということはあまりせず、もう定時薬として組み込まれてしまうのです。

とくに医療従事者の方は、一度の効果で「いい薬」と思い込む傾向が強いように思います。なので、「毎日飲んで、毎日いい感じになる」と信じている。

 しかし、そういう考えが、この手の薬の被害を生んでいると感じます。

 

 ベンゾに限らず、他の薬についても同様です。薬は常に同じ効果をもたらすものではありません。また、飲めば飲んだだけ効果が上がるというものでもありません。(とくに抗精神病薬では、そのように信じている医師がいます)。

 薬を飲んで寝かせているのなら、施設になど入れる必要はないはずです。少し欲張りの要求かもしれませんが、うろつく認知症患者をどう扱うのかがプロというものなのではないでしょうか。自傷他害もないわけですから。

 それと、精神薬についての医療関係者の知識の低さには、ちょっと驚かされました。よく理解もしていない薬を「おとなしくなるから」と服薬させようとするのは、ちょっと安易です。

 

 統合失調症と診断されている方の症状にも似ている認知症(そういえば、その昔統合失調症は早発性痴呆と言われていました)。

 統合失調症の治療も、症状を抑えるためだけに(治せません)抗精神病薬を使いますが、「様子を見る」などほとんどなく、症状が消えるまで薬は増え続けることが多いです。急性期の大量の薬をいつまでたっても定時薬として飲ませ続ける。

 向精神薬の被害の根本には、構造的にこれがあると思っています。

 ちょっと飲んで、ちょっといい感じになったから、それを延々と続ける。

 これは絶対に間違っています。