今日は知人から送っていただいた高知新聞の記事を紹介します。

 ベンゾに関してはご存知の方も多いと思いますが、別府宏圀氏(記事にもあるように現在の肩書は、健康と病の語りディペックス・ジャパン理事長)が書かれたものです。

 ベンゾでひどい目に遭われた方にはもう「常識」のようになっている内容ではありますが、こうしたことがきちんと活字として新聞に掲載されることはあまりありませんので、貴重な記事と思います。

 以下、引用します。

 

高知新聞 2021年11月26日

「病いの語り」に導かれ  患者が医療変えていく

 

 向精神薬への依存症

「チャールズ・メダワーは「ソーシャルオーディット」という英国の消費者団体で活躍した人で、ノーベル医学生理学賞を受賞したピーター・メダワーの息子である。彼は父親譲りの言語的才能を駆使して、30年以上前から薬害関連の優れた本を出している。

そのうちの1冊は、ベンゾジアゼピン系薬など向精神薬による依存症のリスクを指摘した本で、政府や製薬産業によるお金の力が依存症の発生とどのように関わっているかを見事に解き明かしている。

ベンゾジアゼピン系薬は、日本では精神科だけでなく内科、整形外科などでも気軽に処方され、使用量は先進国の中でもずば抜けて多い。

厚生労働省所管の医薬品医療機器総合機構がこの薬の依存性に注意するよう通知を出したのは比較的最近のことだ。対策としては2019年4月以降、長期処方に対し診療報酬を減らすという経済抑制策だけで、副作用で被害を受けた患者への救済策はほとんどない。

依存症がなぜ起こるのか。どんな症状を伴うのか。起こさないためにどんな注意が必要か。依存症になってしまった人にはどんな対応が必要か――。そうした点の説明を含め医師、薬剤師、被害者への具体的な指導、教育、支援はほとんどなされていないのが現状である。

この薬が不安を軽減するのは極めて短期間だけだ。長期使用には効果がないばかりか、逆に不安や抑うつ、感情鈍麻を生じ、認知機能や運動能力の低下をもたらす。高齢者への使用は特に気を付けなければならない。

さらに困るのは、急に薬をやめることによって起こる「逆説的興奮作用」である。不眠、いらだち、攻撃性、痛み、感覚過敏など、本来期待される効果とは正反対の状態を引き起こす。

そんな中で注目されているのが、向精神薬の副作用による被害者や家族らが連携して情報を交換し合う試みだ。コロナ禍のため、今はインターネットを介した語り合いを定期的に開いている。

この問題で困っている当事者、患者とその家族や仲間が同じフラットな目線、自分たちの言葉で語り合い、時にはこの問題に気付いている少数の医師、薬剤師、心理士なども加わる。患者だけでなく、医療や支援に関わる人々も多くのことを学び取ることができる。

これからの医療を変えていくのは政府や医療専門家、学識経験者ではなく、まさに患者や被害を受けた当事者たちなのだろう。」

(引用終わり)

 

 

ちなみに記事中にあるチャールズ・メダワーは別府さんの訳によって以下の本を出しています。